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マンションの居住者にとって避けて通れないのが、「管理組合」や「理事会」での活動です。特に近年、理事会役員のなり手不足は深刻な問題となっています。どうしたら、役員の担い手を確保することができるのでしょうか。「理事会」の役割や役員の選出方法、なり手不足の解決策について聞きました。
教えてくれた人

瀬能 恭一日本ハウズイング株式会社
事業統轄本部 建物管理部
新規プロジェクトマネージャー
「管理組合」の運営に必要な業務を遂行する「理事会」
マンションには、建物の共有部分や敷地を維持・管理する「管理組合」があり、分譲マンションを購入して区分所有者になると管理組合に加入することが義務付けられます。「理事会」は、その管理組合の執行機関です。管理組合の最高意思決定機関となる総会で管理組合としての方針を提示したり、具体的な問題を解決していくことが主な役割となります。
理事会は総会で選任された理事が構成員となって運営しますが、その人数はマンションの規模や形態(実住型・複合型・リゾートマンション・投資型マンションなど)によって異なります。しかし、目安として、国土交通省が公表している「マンション標準管理規約コメント」(第35条関係)には、概ね10~15戸につき1名を選出することや、最低でも3名程度、最高20名程度、もしくは○~○名という枠で定めることもできる旨が記載されています。また、200戸を超えるような大規模マンションでは、理事会のみで実質的な検討を行うことが難しいため、理事会の中に部会(委員会)を設け、各部会に理事会の業務を分担する複層的な組織構成を行っている管理組合もあります。私たち管理会社もまた、理事会をサポートする役割を担い、理事会役員の方々と連携を図り、マンションの管理・運営が円滑に進むようお手伝いしています。
QUESTION 01理事会役員はどんなことをするの?
「管理組合」の代表者は理事長が務め、そのほかに、理事長を補佐して、理事長に何かあったときは代理として職務を遂行する副理事長、管理費等の収納・保管・運用・会計業務を行う会計担当理事、広報や総務、営繕などを担当する理事、管理組合の業務執行および財産状況を監査し、総会で報告する監事などがいます。
理事長に就任すると、区分所有法で定める管理者となり、区分所有法やマンションの管理規約、総会決議で定められた業務を理事会の決議を経て執行する役割を担います。

このほかにも、各種点検や工事の立ち会い、上下階の騒音や漏水時における現地の立ち会いなど様々な対応を行うことがあり、その業務は多岐にわたります。

QUESTION 02理事会役員の任期と選出方法は?
役員の任期は、一般的には1年が多いですが、2年の任期や、2年任期で半数改選を採用しているケースもあります。外部オーナーが多い投資型やリゾート型のマンションの場合は、何年も同じ方が理事長を務めているケースも見られます。
また、選出方法は輪番制(棟別・階段別等)を採用する組合が多く、これは、「管理の主体は管理組合」であるため、組合員全員が一度は役員を経験し、マンション全体で管理の意識を育成することが望ましいと考えられているためです。管理組合の運営に感心が高いマンションでは、公募制(立候補または推薦)を採用しているケースもあります。
QUESTION 03理事会役員のなり手がいない場合はどうしたらいいの?
ここ数年、区分所有者の高齢化や空き家が増えたことによって、役員を選出できない管理組合が増えつつあり、マンションが抱える大きな課題の一つとなっています。また、建物の高経年化も進み、大規模修繕工事等の建物の維持・修繕に係る業務が増え、理事会に求められる業務や役員の負担が増えていることも、役員を辞退される一因になっていると思います。

一方で、マンションの管理規約における役員の規定で、そもそもの選任数が必要以上に多かったり、区分所有者本人に限定されていたり、また、今現在マンションに居住している組合員に限定している場合など、役員になる資格が制限されているケースもあります。その場合には、選任数を削減したり、組合員の配偶者および一親等内の親族の中から選任できるようにしたり、さらに外部の組合員も役員に就任できるように諸規定の見直しをすることも、なり手不足の対策の一つになり得ると思います。
また、特段の理由もなく役員を辞退される方に対して、役員辞退金等を課す管理組合もありますが、「辞退金を支払えば役員にならなくていい」といった、本来の趣旨とは異なった考えが浸透してしまう懸念もあるため、辞退金の制度を採用する際には組合員への十分な説明が必要です。
QUESTION 04「理事会」の役割を外部に委託することはできないの?
できます。新たなマンション管理の在り方として、昨今、マンションの所有者ではない第三者に管理者を委ねる「外部管理者方式」が注目されています。日本ハウズイングのお客さまでも、弊社を管理者とする同方式への切り替え提案を希望される声が増えています。これに加え、多様化するニーズに対応するため、2023年4月より「外部管理者方式」のサービスの提供を開始しました。現在、7棟の弊社管理マンションで同方式を採用しています。
サービスの導入にあたっては、その仕組みと費用捻出に伴い管理費の負担が増えることなどを、組合員の皆さまにきちんと説明し、理解してもらうことが大切です。これを踏まえて、役員のなり手不足に課題を持つ管理組合の負担を減らす選択肢の一つとして「外部管理者方式」を検討してみるのもよいのではないでしょうか。

当社の「外部管理者方式」の詳細はこちらをご覧ください。
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