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普段、居住者さまの目に触れる機会が少ない屋上ですが、外壁などと同じように、定期的にメンテナンスが必要なことをご存じですか? メンテナンスを怠ると、雨水が室内に浸入するだけでなく、建物の耐久性や寿命にも大きな影響が出てしまいます。屋上防水について、メンテナンス工事の内容や、工事を行うタイミングの見極め方を聞きました。
教えてくれた人
小平 義則日本ハウズイング株式会社
本社事業部 営繕管理グループ
シニアテクニカルプランナー
屋上の防水機能を維持して住空間と資産価値へのダメージを最小限に
マンションの屋上は、照りつける太陽の熱と紫外線を一日中浴びているため、年月の経過とともにひび割れなどが生じます。また、戸建ての住宅で使われるような傾斜のついた三角屋根に対し、マンションの屋上は雨水を貯め受けて集水する陸屋根という平らな造りとなっていることが多いため、水はけが悪く、湿気を帯びている時間が長い分、表面の防水層やコンクリートが傷みやすくなります。
そんな屋上をメンテナンスせずに放っておくと、防水機能が失われ、雨水が室内に浸入して家財の汚損・破損による損害が発生することも。程度によっては引っ越しを与儀なくされる可能性もあります。また、コンクリートはひび割れから水が浸入すると、内部の鉄筋が錆びて膨張し、コンクリートが押し出される「鉄筋爆裂」という現象が発生します。それにより、マンションの構造躯体が損傷して構造強度が低下し、耐震性の低下を招いたりすると建物の寿命が短くなってしまうことも考えられます。
一般的に外壁や塗装といった建物表面の仕上げ材や、給排水設備、電気設備などの建築設備は新しいものに交換することができると考えられますが、構造躯体は表面上の補修こそできても、構造躯体そのものを交換することは難しく、最悪の場合、建て替えを検討せざるを得ない状況になりかねません。そうならないためには、雨漏りなどの不具合が発生してから修繕するのではなく、適正な時期を見極め、「予防保全」を行うことが大切であり、「防水機能を維持して構造躯体を守ること」こそが、マンションの寿命を延ばすことにつながります。
QUESTION 01屋上の防水工事はどのくらいの頻度で行うべき?
推奨するタイミングは既存防水の種類や劣化状況、マンションの立地状況などによって異なりますが、通常は、10~20年に1回の頻度でメンテナンス(改修工事)が必要となります。実施するタイミングが遅いと、建物の性能が著しく低下し漏水事故などの発生リスクが高くなり、逆に早すぎた場合、最終的なライフサイクルコスト(建設から解体までにかかる維持修繕費用を含めた総額費用)が上がることになります。
日本ハウズイングでは、年に1回の頻度で共用部分等の外観点検を行い、屋上防水の劣化状況やそのほかの共用部分の目視点検を実施した結果を、点検報告書として作成し、分譲マンションの場合は管理組合様に提出しております。それをもとに、大規模修繕工事をはじめ外壁工事や設備工事等の実施タイミングとあわせて、防水工事の実施も長期修繕計画書に組み込んでご検討いただくことをおすすめしています。
QUESTION 02気象条件や立地条件によって、劣化のスピードは異なるの?
台風や豪雪・強い日差しなどの外的環境によって、屋上防水は少しずつ劣化していきます。一般的に、豪雪地帯や台風が多い地域などは、防水の劣化スピードが速い傾向にあり、さらに、直射日光の熱によってひび割れの原因となる膨張や収縮が繰り返し発生するため、周囲に日差しを遮る建物がなく、一日中屋上に日光が降り注ぐマンションも、防水層の劣化スピードが速くなる可能性があります。
QUESTION 03防水工事では、どんなことをするの?
雨漏りなどから建物を守るために、現在施工されている防水層をリニューアルする工事を行います。防水改修工法は大きく分けて「かぶせ工法」と「撤去工法」の2種類があります。
「かぶせ工法」は、既存の防水層のうち損傷が激しい部分や破損している部分を補修し、新しい防水層を上からかぶせる工法です。健全な既存の防水層を再利用しつつ新規防水層を重ねる二重形成となるため耐久性は高いですが、既存の防水層と新規の防水層に使う材料の相性を考慮する必要があります。
一方の「撤去工法」は、既存の防水層を全面的に撤去し、新たに断水層を形成する工法です。最近では「かぶせ工法」による工事が主流ですが、既存の防水層の劣化状況が著しく悪い場合や、既存・新規防水層の相性によって「かぶせ工法」が実施できない場合に「撤去工法」が採用されます。ただし、既存の防水層の撤去が必要なため、工期が長くなり、工事音や振動も発生します。また、工事費用も高額になるケースが多いので、既存防水層が著しく劣化してしまう前に、「かぶせ工法」で定期的にリニューアルすることをおすすめします。
QUESTION 04工法や使用材料を自分たちで選ぶことはできるの?
基本的には、既存防水の種類や劣化状況に応じて工事会社が工法を選定します。工事会社は、屋上防水については、工事後の「漏水の発生や防水層の剥がれ・著しい膨れ」などの不具合に対して10年間の工事保証をすることが多く、工事会社側としても適切な工法を選定・提案することが重要となります。工事会社が最新の状況でマンションの現地調査を行ったうえで工法の適否を確認し、それぞれの工法のメリット・デメリットを含め、分譲マンションの場合は管理組合様へご提案し、最終的にはマンションの総会の決議にて工事の実施について審議いただきます。
なお、工事の種類は主に3つあり、状況に合った工法と材料を選定することが大切です。
01アスファルト防水工法
<メリット>
- 古くから存在する工法で歴史が長く、信頼性が高い
- 熱に強く、耐久性が高い
- アスファルトの接着性が高く、水密性が高い
<デメリット>
- 施工者の技量が完成品質に影響を与えることがある
- 防水層の上に軽量コンクリートを打設する「押さえコンクリート仕様」の場合、改修工事時に押さえコンクリートの撤去が難しい
02ウレタン樹脂塗膜防水工法
<メリット>
- 継ぎ目なく仕上げることができる
- 複雑な形状や狭幅の場所にも施工ができる
- 部分的な補修に向いている
<デメリット>
- 施工者の技量が完成品質に影響を与えることがある
- 硬化するまでに乾燥期間が必要
- 広範囲の施工に不向き
03シート防水工法
<メリット>
- シート材は品質管理された工場製品のため、品質にバラつきが少なく高品質である
- 耐候性・耐水性・耐熱性等に優れ、露出でも優れた耐久性を発揮する
- シート材の敷設は1層のみなので、工程が少なく工期短縮が図れる
<デメリット>
- シート状の材料なので、一ヵ所でも切れ目などが入ると、施工箇所全体に雨水が浸入する恐れがある
- 複雑な形状の箇所への施工には不向き
- 他工法と比較すると新しい工法であり、工事費用が高額となる場合がある
屋上防水に限らず、マンションの資産価値を維持するためには、劣化の進行を抑える日頃のメンテナンスが重要となります。日本ハウズイングでは、日々の点検により早期に劣化の発生や設備機能の低下を発見し、事故を未然に防ぐ「修繕」と、性能・機能をさらに向上させる「改良」の両面から、積極的に改善のご提案を行っています。
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