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マンション管理ゼミナール『エレベーター』の基礎知識

マンション生活

理解を深めてエレベーターを安全・快適に利用しよう

エレベーターは、マンション生活に欠かすことのできない共用設備のひとつです。普段何気なく利用しているエレベーターですが、どのような構造になっているかご存じですか? 本来は危険な“乗り物”であるエレベーター。しかし、私たちが日々安心して利用できるのは、何重もの安全対策が施された構造、そして定期的かつ適切なメンテナンスのおかげです。これからも安全かつ快適にエレベーターを利用していくために、エレベーターの基本的な構造や、いざというときに知っておきたい対処法などを一緒に確認していきましょう。

Q1エレベーターはどのくらいの頻度でメンテナンスが必要?

年1回の法定定期検査と1~3ヵ月ごとの保守点検が必要です。
エレベーターは、建築基準法で年1回の定期検査が義務付けられています。ロープの摩耗チェック、さびや異音の有無、各種機器・装置の作動状況などの確認を行います。これに加え、1~3ヵ月に1回程度、保守点検を行うのが一般的です。(近年では定期検査以外の保守点検は遠隔リモートによる点検が主流です。)

メンテナンス契約には、フルメンテナンス契約とパーツ・オイル・グリス契約(POG契約)があります。フルメンテナンス契約は、月々の点検保守料は割高ですが、ほとんどの部品交換や修理費用が含まれます。一方POG契約は、月々の点検保守料は割安ですが、一部の消耗品やオイル等は含まれるものの、契約外の部品交換や修理はその都度別途に費用を負担しなければなりません。

Q2エレベーターにはどんな種類があるの?

主に「ロープ式」と「油圧式」の2種類があります。
エレベーターを構造別に分類すると、大きく「ロープ式」と「油圧式」の2つに分けられます。

ロープ式

「ロープ式」とは、“井戸のつるべ”のような構造になっています。長いロープの一方の端には人が乗るかごが、もう一方にはおもりが付いています。最上部の滑車(巻上機)をロープが通ることで、かごが上下します。

ロープ式はさらに、機械室の有無により2タイプに分けられます(図1、2)。「機械室ありタイプ」は最も基本的なタイプで、低層から超高層のマンションまで幅広く採用されています。一方、「機械室なしタイプ」は1998年に登場した比較的新しいものです。機械室が不要なため建設設計の自由度が向上するという利点があり、2000年以降はエレベーターの主流となっています。

油圧式

「油圧式」は油圧ジャッキで下から押し上げてかごを動かす方式です(図3)。構造上、低層の建物で採用されているケースがほとんどです。ロープ式よりスピードが遅く、消費電力が多い傾向にあります。油圧式は、現在ほとんどのメーカーが製造を中止しています。

Q3エレベーターの寿命はどのくらいなの?

20~25年程度は使用可能です。
エレベーターの税法上の法定償却耐用年数は17年ですが、定期的な点検と修繕を実施すれば20~25年程度は使用することができます。なお、2009年9月に安全対策の強化を図るため法令が改正され、エレベーターへの戸開走行保護装置(ブレーキの二重化)や地震時等管理運転装置の設置が義務付けられました。法令改正前から設置されているエレベーターについては、これらの装置が設けられていなくても引き続き使用できますが、年1回の法定定期検査では「既存不適格」と判定されます。安全向上のためには早期対応が理想的です。

豆知識

2005年7月23日の千葉県北西部地震で発生したエレベーターの閉じ込め事故や2006年6月3日に東京・港区で発生した共同住宅におけるエレベーター事故等を契機に、2009年9月の建築基準法施行規則及び建築基準法施行令の一部改正が行われました。

改正の主な内容
  1. 戸開走行保護装置の設置義務付け
    エレベーターの駆動装置や制御器に故障が生じ、エレベーターの扉が開いたままかごが動き出してしまった時に、自動的にかごを制止するシステムを設置することが義務付けられました。
  2. 地震時管制運転装置の設置義務付け
    地震等が発生した際に、揺れを検知して自動的にかごを最寄階に停止させることができる安全装置の設置が義務付けられました。

また、東日本大震災においてエレベーターの釣合おもりが落下する事案が複数確認されたことから、平成25年7月「建築基準法施行令を改正する政令」が公布され、エレベーターおよびエスカレーターなどの脱落防止措置に関する建築基準法施行令、告示が制定および改定されました(平成26年4月施行)。

改正の主な内容

釣合おもりを用いるエレベーターにあっては、地震その他の震動によって釣合おもりが脱落するおそれがないものとして国土交通大臣が定めた構造を用いるものであることと規定されました。

エレベーターリニューアルについて

エレベーターのリニューアルについては、既存不適格や部品供給停止などにより実施されています。 リニューアルの方法については、以下の手法が主流です。

全撤去リニューアル
籠、機器類、乗り場枠などの建築付帯物もすべて更新します。工事期間は25日から40日程度
準撤去リニューアル
機器類は全て交換しますが、乗り場枠、籠本体は既設再使用します。工事期間は20日から30日程度
制御リニューアル
制御機器のみ更新します。工事期間は7日から10日程度

工事期間中はエレベーターの使用ができなくなります。(原則)リニューアル工事の実施時期や、工事期間の周知などお住まいの皆様への配慮が必要となります。

エレベーターにまつわる常識・非常識

ロープが切れて落下することがある。

エレベーターのロープは、非常に強度のある鋼を何本もより合わせてできています。このロープを3~8本使ってエレベーターのかごを支えているので、ロープが切れることはまれです。万一ロープが切れた場合でも、「非常止め装置」が働いてかごを非常停止させる機能が備わっています。

地震が発生したらエレベーター内にとどまる。

地震が発生し一定の揺れを検知すると、自動的に最寄り階に停止する「地震時管制運転装置」が設置されているエレベーターもありますが、強い揺れを感じたら、まずすべての行き先階ボタンを押してください。エレベーターが停止したら速やかに降り、落ち着いて避難しましょう。万一閉じ込められてしまった時は、操作盤に付いている非常ボタンを押して外部に通報し、助けを待ちましょう。

 非常ボタンを押すとメンテナンス会社につながる。

非常ボタンを押すと、メンテナンス会社につながり通話ができるエレベーターもありますが、中には建物内の管理室やエレベーター外部のインターホンにつながるものもあります。お住まいのマンションがどのようになっているのか、事前に確認しておきましょう。地震などの際はつながりにくいことも多いので、応答するまで試みてください。エレベーター内に緊急連絡先の掲示があれば連絡をしましょう。

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