機械式駐車場の仕組みを理解して安全に利用しよう
機械を使って車を幾段かに重ねて駐車する「機械式駐車場」は、限られた敷地面積でも駐車台数を多く確保できる便利な設備です。日本で初めて本格的な機械式駐車場が登場したのは東京オリンピックの2年前の昭和37年。東京・日本橋の高島屋に設置されたタワーパーキングが始まりといわれています。
マンションでは昭和50年代から機械式駐車場が利用され始め、現在では大都市圏を中心に増えています。機械式駐車場の種類やその仕組みはどのようになっているのでしょうか。より安全に利用していくために、基本的事項から確認していきましょう。
Q1機械式駐車装置にはどんな種類があるの?
二段方式・多段方式、垂直循環方式などがあります。
公益社団法人立体駐車場工業会の分類によれば、機械式駐車場の駐車装置には8種類の方式があります。
この中で、最も多いのは「二段方式・多段方式」で、設置台数全体の6割以上を占めています。続いて多いのが、「垂直循環方式」と「エレベーター方式」です。
機械式駐車装置の種類
- 垂直循環方式
- 多層循環方式
- 水平循環方式
- エレベーター方式
- エレベータースライド方式
- 平面往復方式
- 二段方式・多段方式
- 自動車用エレベーター
「二段方式」は、駐車している車の“上”または“下”にもう一台の車を駐車させる方式です。一方、三段以上あるものは「多段方式」と呼ばれています。
この「二段方式・多段方式」は「昇降式」と「昇降横行式」の二つのタイプに分かれます。「昇降式」は、車を乗せるパレット部分を上下に移動して入出庫するものです。一方「昇降横行式」は、上下に加えて左右にもパレットを移動させて入出庫するもので、パズル式と呼ばれることもあります。最近では前後に2台駐車できる縦列式も登場しています。
昇降式 | 昇降横行式 |
---|---|
地下部分に収納するタイプはピット式と呼ばれる。ピット内に車を収納すると平置き駐車場のように見える。地下にある車を出す際は、パレットを上昇させる。 | 地下1段、地上2段の昇降横行式の場合、1台分のスペースが空いており、地下または2階にある車を出す際は、パレットを左右・上下に動かして車が1階部分にくるようにする。 |
「垂直循環方式」は、駐車場が高層になっていて、車を駐車させる多数の搬器をメリーゴーラウンドのようにぐるぐると移動させて入出庫するものです。テナントビルや商業施設に併設の駐車場などで多く採用されています。
「エレベーター方式」は、駐車室と昇降装置、搬送装置を組み合わせて立体的に駐車する方式です。
Q2機械式駐車場の寿命はどのくらいなの?
形式や使用状況、設置環境等により大きく異なります。
機械式駐車場はさまざまな形式がありますし、使用状況や設置場所の環境、メンテナンスの状態により寿命は大きく変わるため、一概には言えません。一つの目安として、国土交通省の「改修によるマンションの再生手法に関するマニュアル」によれば、駐車装置は20~25年程度で取替え、昇降装置は10年程度、安全装置は5年程度で修繕・取替え、排水ポンプは10年程度で取替えとなっています。この他に、パレットや支柱等の鉄部塗装も必要です。
Q3どんな事故が起きているの?
無人確認不足の事故が多く発生しています。
機械式駐車場における死亡・重傷事故は、2007年8月から2014年2月までに少なくとも26件(うち死亡10件)が発生しており、その約半数はマンションの駐車場での事故です。装置内に人がいる状態で機械が作動したケースが特に多く、「子供が駐車装置内に残っているのに気付かず機械に挟まれた」「利用者が鍵を挿した状態で車を入庫後、助手席で荷物を取り出していたところ、次の利用者が操作を行ったため装置が動き始め、開口部から転落した」といった事故が起こっています。その他には、乗り降りや歩行時の転倒・落下、車輛の入出庫時の衝突も少なくありません。
機械式駐車場にまつわる常識・非常識
荷物の積み下ろしは駐車場の外で行う
パレット上で荷物の積み下ろしをしようとすると、隙間に物を落としやすく大変危険ですし、万一荷物が取り残されれば、装置が誤作動する原因にもなります。荷物の積み下ろしは駐車場外の広い場所で行いましょう。また、自動車を入出庫する際は、運転者以外は駐車場の外で乗り降りしてください。駐車装置を操作する際は、駐車場の中に人がいないかどうか、よく確認しましょう。
前面のチェーンは掛けなくてもよい
機械式駐車場の前面(乗り込み面)にあるチェーンは、人の侵入を防止するためのものです。車を出し入れした後は、必ずチェーンを掛けてください。なお、平成24年8月23日に公益社団法人立体駐車場工業会から機械式駐車場の安全対策が公表され、昇降・ピット式の機械式駐車場は乗り込み面に前面ゲートを設けるように技術基準が改訂され、チェーンは廃止されました。既存の駐車場についても前面ゲートを設置するか、侵入検知センサーを設置することが要請されています。
機械式駐車場には法律で定期点検が義務付けられている
エレベーターは建築基準法により定期検査が義務付けられていますが、機械式駐車装置には法的な点検義務がありません。しかし、危険性を伴う機械装置なので、利用者の安全を守るためには定期的な保守点検が不可欠です。機械式駐車場にはさまざまな部品が使用されており、適切に交換しないと故障の原因になります。適時適切にメンテナンスを行うことで、より長く快適に使用できます。
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