“あかり”から“熱”の利用へ変遷したガスの用途
世界で初めてガスが登場したのは1792年(寛政4年)のこと。イギリスで石炭を蒸し焼きにした時にできるガスを利用してガス灯を作ったのが始まりといわれています。日本では、1872年(明治5年)に横浜の馬車道通りに街灯としてガス灯がともったのが始まりです。このようにガスは当初あかりとして利用されていました。しかし、明治半ばに電気灯が登場して以降は、ガスの熱を利用したガス七輪、ガスアイロン、ガスストーブ、ガスコンロなど、私たちの暮らしを支えるさまざまな器具に利用されるようになりました。
マンションでは、ガス給湯器やガスコンロがおなじみです。最近ではガスで電気とお湯を同時に作ることができる「エネファーム」というシステムが登場し、新築マンションでの導入が増えています。今回はガスの種類や設備について、お伝えしたいと思います。
Q1ガスにはどんな種類があるの?
大きく分けて「都市ガス」と「LPガス」の2種類があります。
家庭で使用されるガスは、大きく分けて「都市ガス」と「LPガス」の2種類があります。「都市ガス」は東京都や大阪府など都市部での普及率が高く、「LPガス」は地方で普及しています。
「都市ガス」は、製造所で作ったガスを専用の配管を通じて各家庭に供給するものです。1970年代までは石炭を原料にした「石炭ガス」が主流でした。しかし現在は、メタンを主成分にした「天然ガス」が主な原料になっています。燃焼する時に二酸化炭素の排出が少ないため、環境に配慮した地球に優しいエネルギーといえます。都市ガス事業者は全国に200以上ありますが、実はそれぞれの事業者ごとに使用しているガスは異なり、なかには同じ事業者でもエリアによりガスの種類が異なることもあります。例えば、東京ガスでは千葉県四街道市の一部のみ他のエリアとは種類の異なるガスが供給されています。
ガスの種類は原料や発熱量の違いから13種類あります。毎月の明細書(領収書)には「12A」や「13A」などと記載されています。これが各戸に供給されている都市ガスの種類を示しています。
一方「LPガス」は、プロパンなどを主成分にしたガスで、正確には液化石油ガスといいます。LPガスは空気より重く、万一漏れた場合は下の方に溜まります(都市ガスは空気より軽く、漏れた場合は天井の方に溜まります)。LPガスは、ガスを充填したボンベを各戸に設置して使用するもので、主に都市ガスの配管が整備されていない地域で使用されています。LPガス事業者は全国に2万社以上あります。料金は、都市ガスに比べると割高です。
Q2専有部分と共用部分はどこで分かれているの?
ガスメーターや枝管が境になります。
都市ガスを使用しているマンションでは、ガス事業者が敷設した配管から敷地内にガスを引き込んでいます。各住戸には配管を分岐させてガスを供給しています。
マンションの配管は、敷地外はガス事業者、敷地内はマンションの所有物になります。敷地内の配管は、ガスメーターまでが共用部分、ガスメーターから住戸内は専有部分になるのが一般的です(マンションの中にはガスメーター以降でもパイプシャフト内の配管は共用部分扱いとしている場合もあります)。
専有部分の配管の修理や交換の費用は、区分所有者が負担するのが一般的です。ガスメーターは通常10年ごと(一部は7年に一度)に取り替える必要がありますが、ガス事業者の所有物なので取り替え費用を請求されることはありません。


Q3ガス配管にはどんな材料が使われているの?
設置されている場所により異なります。
ガス配管は、土の中に埋設されている部分と埋設されていない部分があります。昭和50年代後半まではいずれにも鋼管の外面に亜鉛メッキを施した「亜鉛メッキ鋼管(白ガス管)」が使用されていました。しかし、土の中では亜鉛メッキが溶け出し、時間の経過とともに配管が腐食して穴があく危険があることが判明しました。平成6年に、埋設部分の亜鉛メッキ鋼管のガス漏れによる爆発・死傷事故が相次いだことを受け、平成8年から埋設部分への亜鉛メッキ鋼管の新規使用が禁止されました。
現在では、埋設部分のガス配管には鋼管の表面をポリエチレンで被覆した「ポリエチレン被覆鋼管」や「硬質塩化ビニル被覆鋼管」、「ポリエチレン管」など腐食に強い材料が使用されています。なお、昭和50年代までに建築されたマンションも、建築当初は埋設配管が亜鉛メッキ鋼管だった可能性がありますが、20年が取り換え目安なので、多くは新しい配管に交換されていると思われます。
ガス設備にまつわる常識・非常識
ガスメーターは、ガスの使用量を計る機能しかない

ガスメーター(マイコンメーター)は異常を検知するとガスを自動的に止める機能を備えています。ガスが止まるのは、大きな地震(震度5強相当以上)を感知した時です。シャワーの出しっぱなしやお風呂の沸かし過ぎなど、一定量のガスが所定の時間以上流れ続けた時や、ガス管破損やガス栓の誤解放で多量のガスが流れた時にも止まります。微量なガス漏れを検知するものもあります。 ガス漏れなどの問題がないことが確認できた後、ガスメーターを復旧させる際は、わざわざガス会社に連絡しなくても簡単な操作を行うことで、ガスを使えるようにすることができます。
豆知識ガスメーターの復帰方法
- すべてのガス機器を止めてください。(ガスの元栓もしっかり締めてください。)
- ガス臭くないか確認してください。
- メーターボックスの中にあるガスメーターの復帰ボタンをしっかり押してください。
表示ランプが点滅したら、手を離します。 - 約3分間待ちます。(ガスもれがないかチェックしています。)
- ランプの点滅が消えれば、ガスが使えます。
器具により操作方法が異なる場合があります。

- 正常に復帰しない場合は、ガス機器の消し忘れやガス栓の閉め忘れが考えられますので、もう一度よく確認ご確認ください。
- 正常に復帰しない場合は、ガス漏れが考えられますので、ガス事業者へご連絡ください。
ガス機器は、ガスの種類が違っても使用できる

ガスの種類に合ったガス機器を使わないと、ガスが正常に燃焼せず、一酸化炭素中毒などを引き起こし、大変危険です。譲り受けたガス機器を使う場合や引っ越す場合は要注意です。まず、供給されているガスの種類とガス機器が適合しているかを確認してください。ガス機器には「LPガス用」「12A用」「13A用」といったガスの種類が明記されています。新しく購入する時もよく確認しましょう。
ガス給湯器は定期的に交換する必要がある

ガス給湯器は設置状況や使用頻度などにより異なりますが、10年前後が交換の目安です。「給湯温度が一定しない」「お湯がぬるい・出ない」「給湯器から異音がする」などの症状が出た場合は要注意です。マンションでは、取り付けスペースや給湯能力の制限の他、色指定がある場合もありますので交換する際は事前に管理会社へ確認してください。


家庭用燃料電池コージェネレーションシステム(エネファーム)
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