「壊れていないし、まだ使えるから……」「高額だったし、もったいない」——そんな理由で、つい長く使ってしまうのが家電です。とはいえ、長年使っていると突然壊れてしまうこともあり、いざ壊れてから慌てて買いに行くと、本当に欲しい家電が手に入らないことも。そこでおすすめしたいのが、季節の変わり目に行う“家電チェック”。春は、梅雨や夏に向けて除湿機や扇風機、エアコンなどの冷房系家電の準備をする時期、秋は暖房や加湿器などを準備するタイミングなので、修理や買い替えには最適な時期なのです。
夏や冬を迎えてから「冷えない!」「動かない!」と気付いても、修理や買い替えは混み合っていることが多く、すぐに対応できないこともあります。特にエアコンなど設置工事が必要な家電は搬入までに時間がかかることも。早めにチェックしておけば不調にも気付きやすく、買い替えの準備にも余裕を持てます。また、本格的に使う前に軽く動かすことで、お手入れが行き届いているかどうかや、交換パーツの寿命なども確認できます。
10年以上使用している家電は買い替えを視野に
家電の耐用年数は製品によって異なりますが、10年以上使っている場合は買い替えを検討してみましょう。内閣府の消費動向調査(令和7年3月分調査)によると、2人以上の世帯における平均使用年数は、エアコンが14.2年、冷蔵庫は13.5年、洗濯機が10.0年、掃除機は7.2年となっています。「使えるから大丈夫」と思っていても、内部のパーツが劣化していることもあります。さらに製造から10年以上経っていると、メーカーの部品保有期間が過ぎている場合も多く、修理代が割高になりがち。そのため、まずは使用期間が長い家電から買い替えを検討するとよいでしょう。
このほか、省エネ性能は年々進化しているため、古い家電をずっと使い続けているより、新しいものの方が電気代を抑えられることも。特に、家庭で使う家電の中でも電気使用量が多いエアコン、冷蔵庫、照明などは要チェック。環境省が手がける省エネ製品買換ナビゲーション「しんきゅうさん」などを使って、買い替えたときの電気代をシミュレーションしてみるのもおすすめです。
しんきゅうさん
https://ondankataisaku.env.go.jp/shinkyusan/
製品別・買い替えの目安になる不調のサイン
家電には、それぞれ特有の寿命や不調のサインがあります。ここでは、代表的な製品ごとにチェックポイントを紹介します。
エアコン

冷暖房が効きにくい場合、まずは機器本体をチェックしてみましょう。具体的には「室外機の周りに植木鉢などのものがないか」「室内機のフィルターにほこりがたまっていないか」「リモコンの電池は十分か。壊れていないか」「フィルターは正しくセットされているか」「霜取り運転中かどうか」などです。その後、各メーカーの取り扱い説明書に従い「試運転」を。「水漏れがする」「風が出てこない」「聞いたことがない音がする」「大きな音がする」といった場合は、故障の可能性があるので修理を検討してください。
扇風機

昔ながらの製品を愛用している人も多い扇風機。製品評価技術基盤機構(NITE)によると、「使用年数47年の扇風機を使ったことによる発火の事例」も。そのため、長年使っている扇風機は買い替えを考えてみましょう。また、扇風機の故障の前兆としては、「スイッチを入れても動かない」「ファンの回転が遅い・不安定」「モーター部分が熱い、焦げ臭い」「モーターなどから異音がする」「コードが破損または変形している」「スイッチを入れても動かないが、叩くと回る」といった状態が見られます。
冷蔵庫

冷蔵庫を長年使っていると、冷却機能そのものが低下したり、ドアのパッキンが劣化することで冷えが悪くなることがあります。また、冷蔵庫はコンプレッサーの動作音が聞こえるものですが、極端に大きい音や逆に極端に音が静かになった場合は要注意。今までとは異なる音がする時なども、故障の可能性があります。冷蔵庫を長持ちさせるには、冷蔵庫の温度変化を小さくさせることがポイント。ドアの開閉回数を少なくしたり、熱い物を冷ましてから冷蔵庫に入れるといったことが大切です。ドアのパッキン、裏側の吸気口のホコリも定期的に掃除しましょう。
掃除機

従来のコードが付いたキャニスター掃除機の他に、コードレス掃除機、ハンディ掃除機など、いろいろなものが登場している掃除機カテゴリー。他の家電と異なり、使う人が手に取って動かすため、衝撃を受けたり内部パーツが摩耗したりします。また、フィルターなどの目詰まりが故障の原因になるため、定期的なお手入れがかかせません。「電源が入らない」「異音がする」「ゴミの吸い込みが悪い」といった状態になると、買い替えのサインかもしれません。
ただし、ゴミの吸い込みが悪い場合、ヘッド部分やパイプ部分に髪の毛やペットの毛などが絡まっているだけ……ということも。まずはゴミの通り道の詰まりをチェックしてみましょう。この他、フィルター部分のお手入れをしたり、紙パックを純正のものにしたり新しいものにすると、改善することもあります。こうしたお手入れをしても吸い込みが悪い場合は、買い替えを要検討です。
電気代の増加も家電の性能が低下しているサイン
生活スタイルが大きく変わらないのに電気代が上がった場合、特に10年以上使っている場合は経年劣化により家電の性能が低下し、電気代が増加している可能性があります。お手入れや交換パーツを変えても電気代が変わらないようなら買い替えを検討しましょう。
また買い替えにあたっては、各自治体で省エネ家電への買い換えを後押しする補助金制度を展開しています。例えば 東京都では、「家庭のゼロエミッション行動推進事業」という、エアコン・冷蔵庫・給湯器・照明器具の買い替えに対する補助金制度があります。年度や時期によって変更があるため、お住まいの自治体の公式サイトで最新情報をチェックしてみましょう。
東京ゼロエミポイント事業
まとめ
家電は暮らしを支える大切なインフラです。自分の健康管理をするように、家電も「動作や機能に変化はないか」「冷やす、温める、回転などの基本性能は衰えていないか」「購入してから長い期間使い過ぎていないか」などをチェックしてみてください。安心・安全な毎日を送るために不可欠な家電を見直すことは、これからの暮らしを見直すきっかけにもなります。
教えてくれた人

伊森 ちづる(いもり ちづる)家電・家電量販店ライター
家電関係のコールセンター、調査会社での勤務後、家電流通専門誌の編集記者へ。家電量販店を中心に流通企業の本部、店舗、スタッフなどを幅広く取材。現在はフリーランスとして活動中。家電製品を実際に使うレビュー記事、開発者へのインタビューなども積極的に行う。
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