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親戚、仕事、ご近所付き合いにも! 年長者が知っておきたい、世代を超える会話術

暮らし

写真提供/PIXTA

しばらく会っていなかった親戚同士が集まったり、仕事で会食する機会が徐々に戻ってきたりと、久しぶりに世代を超えた交流が復活した今、「若い人と何を話せばいいのか分からない」と悩んでいる方も多いのではないでしょうか。そこで、『部下 後輩 年下との話し方』の著者である、作家で心理カウンセラーの五百田達成さんに、年代の垣根を越えて会話を楽しむ方法について教えてもらいました。

教えてくれた人

五百田 達成

作家・心理カウンセラー。東京大学教養学部卒業後、角川書店、博報堂、博報堂生活総合研究所を経て、五百田達成事務所を設立。「コミュニケーション心理」「社会変化と男女関係」「SNSと人づきあい」「ことばと伝え方」を専門分野とし、個人カウンセリング、セミナー、講演、執筆など幅広く活躍中。


会話における基本の心得3箇条

01世代間ギャップは強調せず、対等な関係で話す

上司・先輩・年上など、いわゆる“上の立場”というだけで、偉そうに振る舞ったり、先輩風を吹かせたりしたことはありませんか? 上司と部下、先輩と後輩、年上と年下というのは、社会や学校において「順番をつけておいたほうがスムーズに事が運ぶから」という理由で採用された「役割」に過ぎません。当然、年上のほうが偉いわけではないので、上下意識を持たず、フラットに接するのが基本です。

また、年下の人と接しているとき、自分の世代とのギャップに驚くあまり、「いまどきの若い人ってそうなんだ!」と世代でくくるのも避けましょう。それらは相手の個性や人格を認めないと言っているようなもので、余計な分断を生むだけ。相手を“世代”や“自分にとって理解不能な人”でひとくくりにせず、個人として向き合いましょう。

02年上こそ相手(年下)以上に気を配る

年下の人は年上の人に何かと気を遣うものですが、年長者はそこに甘んじるのではなく、相手と同じか、それ以上に気を遣うと関係が上手くいきます。特に、大変なことや面倒なことほど、自分がやるつもりで。「自分が若いときはもっと気を遣っていたのに!」などと怒らず、さりげなく周囲に気を配ることこそが「さすが」と一目置かれる秘訣なのです。

03会話選びは“自分より年上の人に話すか”を基準に選ぶ

「これを言ったらハラスメントになるかな?」と迷ったときは、それを自分より年上の人や取引先に話すかどうかを基準にすると良いでしょう。相手が年下であっても大事なビジネスパートナーなら言わないだろうな、と思うことは言うべきではありません。年下との会話選びは、自分より年上の人や取引先レベルの意識を働かせるくらいでちょうどいいのです。


年下の親戚との会話は、“実りがなく、ふんわり”くらいがちょうどいい

次に、親戚が集まる場での具体的な会話術についてご紹介します。 幼少期を知っているような相手だとつい、いつまでも子どものように思えて無遠慮なことを言ってしまいがちです。しかし、親戚関係における年下との接し方も、基本的には部下や後輩と同じです。会話選びとしては、踏み込みすぎない、ふんわりとした話題がおすすめ。良いことを言って相手に何かしら影響を与えたいなどと考えるのは無粋です。

例えば、食べ物の好き嫌い、旅行、健康、好きなものの話など、一見実りがないくらいに思える会話から入るのがいいでしょう。

年上「最近、旅先の呼子で食べたイカがおいしかったんだ」
年下「私、イカって苦手なんですよね」
年上「そうなんだ。でも、呼子のイカは普通のイカとは全然違うんだよ」
年下「へぇ~、どう違うんですか?」

と、会話は平和なまま続きます。

しかし、良いことや影響力を与えたいという気持ちで持ち出す話題はどうでしょうか。

年上「就職先は●●なんていいんじゃない?」
年下「●●はちょっと……」
年上「なんで!? 私の知り合いも勤めているし、絶対いい会社だから!」
年下「(うーん、そう言われてもなぁ)」

相手の考えを否定して自分の意見を押しつけるようでは、相手に嫌われたり、分断を生むことに。長い親戚付き合いにおいて、関係が悪くなるのは避けたいですよね。

また、小さい子どもとの会話では共通の話題で盛り上がることが難しいので、相手が好きなことや習い事など打ち込んでいることについての話を引き出します。この方法は、最近あまり話してくれなくなった中高生くらいのお子さんにも有効なので、ぜひ試してみてください。


マンションの居住者同士は「資産価値を守るメンバー」としてビジネスライクに

ご近所付き合いでの会話も同じで、相手に踏み込みすぎず、対等なスタンスで接したいものです。管理組合などで若い世代の家族と接する際、マンション管理に関心を持ってほしいあまり、必死になりすぎて逆に空回りしてしまった……といった経験をした方もいるかもしれません。マンションの居住者同士は「マンションをともに運営し、資産価値を守るメンバー」です。お願いしたいことがあるときは、最低限のマナーと気配りをしながらも、ビジネスライクに「ご協力お願いします」とはっきり伝えるのがいちばん。

一方で、年齢を重ねた男性の場合、怒っているわけでもないのに恐いと思われがちです。気を遣いすぎる必要はありませんが、相手の年代を問わず、普段から挨拶をしたり、「行ってらっしゃい」「おかえりなさい」といった声かけをすると、「フレンドリーな人なんだな」と思われ、「あの人がいる管理組合なら参加してみようかな」という気持ちになってもらえるかもしれません。

周囲の人と心地よい関係を築くためには、話し方がとても重要です。年代を問わず、誰とでも親しくなれる話し方、「上」や「下」など関係なく、対等で風通しの良い関係を築くために、ぜひ参考にしてみてください。

『部下 後輩 年下との話し方』
1,650円(税込)/ディスカヴァー・トゥエンティワン

取材・文/須川奈津江

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