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誰にも聞けなかったマナー講座 心が伝わる『5つの約束』

暮らし

「マナーを身につければ洗練されたステキな大人に見られる」というのは、多くの人が何となく思い描くマナーのイメージでしょう。でも、そもそもマナーとは、いったい何なのでしょうか? 雑誌・メディアなどで取り上げられる記事をみると、立ち居振る舞い、カタチや決まりごとのように感じられますが、「マナーにはもっと奥深い意味や、生き方につながるものがあるのです」とマナー美人塾塾長の井垣利英(いがきとしえ)先生は話されます。そこで今回、マナーの心や大事な考え方の基本となる「5つの約束」について教えていただきました。この5つの約束を日々意識することで、上品で洗練された大人として磨かれ、マナーが身についていくことでしょう。


約束1マナーはカタチではなく心が大切!

こんにちは。人材教育家でマナー美人塾塾長の井垣利英です。マナーはカタチを暗記するもの、堅苦しいと思っている人が多いのですが、そうではないことを、まずお伝えしたいと思います。マナーの基本は「相手への心遣い」「思いやり」です。

例えば、お辞儀の角度は45度などとされます。でも本当に申しわけない気持ちでいっぱいのときは、「申しわけありませんでした」と自然に深々と頭が下がるものです。このときに「今のお辞儀は45度で」などという考えが頭をよぎったりはしないと思います。

お礼を言うときも同じです。感謝の気持ちがあれば、心から嬉しさがあふれる笑顔になるし、「ありがとうございます」と深く頭が下がるはず。それを私は「思いの重さ」と言っています。思いを込めることで、思いは重さとなり、自然と行動に現れます。

マナーで大切なのは、まず相手や目の前の出来事に対して心を込めること。次にその思いを体や言葉で表現すること。その次の段階として、カタチを覚えます。まず言動に心を込めることに意識をして、カタチは後なのです。


約束2いつも感謝の気持ちを持っていること

思いやりと感謝の気持ちをカタチにして表現することがマナーの大切なところです。どんなときにも最初に感謝の気持ちを持つことが大切です。たとえばテーブルマナーであれば、自然の恵みに感謝し、食材を提供してくれた農家の人たちに感謝し、料理を作ってくれた人、テーブルまで運んでくれた人にも感謝の気持ちを持つのです。「いただきます」「ごちそうさま」「美味しかったです」はその気持ちの表現です。

人に何かをしてもらったときは「ありがとう」です。この「ありがとう」という言葉一つとっても、言えない人がいます。「心のなかでは思っているのですが」という話をよく聞きますが、「以心伝心(いしんでんしん)」(言わなくても気持ちが伝わるテレパシーのようなもの)というのはありません。言葉に出さないと、気持ちは相手に伝わりません。ですから、感謝の気持ちを持ったら、それを相手にその都度言いましょう。

例えばお礼状を出すのも大事なマナーですが、「字が下手なので、ペン習字を習ってから出します」という人がいます。でも感謝の気持ちがあるなら、字が下手でも、文章を書くのが苦手でも良いのです。「ありがとうございました」「ご飯、美味しかったです」というひと言でも良いので、ハガキに字を丁寧に書き、心を込めて言葉を記して、まずはポストに投函してみましょう。先に行動して、細かいマナーの知識はあとから補っていけば良いのです。

マナーは人の心と心をつなぐリボンのようなもの。心と心を結びつけるのがマナーです。ですから、マナーができるようになると、人間関係は確実に良くなります。ぜひ、たくさんのことに感謝をし、それを言葉にして、どんどん伝えていきましょう。


約束3どんなときも笑顔でいる

にこやかな笑顔で接してもらえると安心できるし、こちらもつられて自然と笑顔になります。笑顔は相手に対する思いやり。しかもそれだけではなく、笑顔には思いもよらないパワーが秘められています。
笑顔を心がけることによって、心の中からエネルギーが湧いてくるのです。ですから、悲しいことや、つらいことがあったときこそ、笑顔を心がけると良いのです。
ありったけの思いで浮かべる笑顔は、必ず人の心に届いて相手を明るい気持ちにさせるし、何よりも自分が元気になれます。笑顔は自分にも相手にもパワーをくれますから、どんなときも笑顔を絶やさないようにしたいものです。


プラス思考でいきましょう

マナーの考え方とプラス思考は、いろいろと重なる部分があります。マナーでもプラス思考でも、笑顔は相手への思いやりであり、自分が元気でいるための基本です。
例え悪い状況でも、「なんとかなる」「私は大丈夫」と笑顔で思い込んで、良い方向に行くように意識をして努力をするのがプラス思考。精神的にはいつもポジティブで前向きです。
悲しいこと、つらいことなどマイナスな気持ちでいっぱいになりそうなときは、笑顔で「なんとかなる」「私は大丈夫」と自分に言い聞かせて、プラス思考で気持ちを切り替えて、いつも機嫌よく過ごすことが大事だと、私は思います。


印象アップの表情トレーニング

マスク生活が長引いたせいで、マスクで隠れていた顔の下の部分の表情筋が硬くなっている人が多いように感じます。笑顔になるためには、この表情筋をやわらかくすることが大事なポイントです。
「笑顔は顔立ちを超える」というのは私がいつも言っていること。チャーミングな笑顔の人は、無表情な美人よりずっと魅力的です。もちろん、これは男性も同じです。
基本的な表情トレーニングをご紹介しますから、毎日繰り返して、いつも笑顔でいられるように心がけましょう。やることは簡単。「い」と「う」の繰り返しです。

①口を思い切り横に広げて「い」と言いましょう。声に出しても、出さなくても、どちらでもいいです。
②このとき、頬を上げて、たこ焼きのようなカタチになるように、口角を上げます。親指と人差し指で丸を作って、ちゃんとたこ焼きになっているかを確認しましょう。
③今度は思い切り口をとがらせて「う」と言います。この「い」と「う」をゆっくり30回繰り返して1セットです。『継続は力なり』なので、毎日続けてみてくださいね。

約束4明るく清潔感のある身だしなみを

身だしなみを整えることもまた、人への心遣いです。身だしなみについては好印象になる3大ポイントがあります。それは「明るさ」「さわやかさ」「清潔感」です。マナーでは「人から見てどうか」ということが重要です。お洒落をするときには、この3つのポイントを押さえた身だしなみを心がけましょう。


明るい色の服を着る

例えば、黒い服が好きで、シックに着こなしている方も多いのですが、マナーの観点からすると、黒は見た人の気持ちが沈む色。見ている人の気持ちが明るくなる、お花色の服=パステルカラー、赤、白、黄色など、明るい色の服を着ることをおすすめします。
「お洒落は自分のためではなく、人のためにするもの」だと、いつも心に留めておきましょう。

アイロンがけ!

清潔感のある身だしなみは、さわやかな印象を与え、相手の気分を引き立てます。清潔感を演出するテクニックとしておすすめなのがアイロンがけです。
シャツやハンカチはもちろんのこと、Tシャツやセーターにも、まめにアイロンをかけましょう。きちんとしていて、さわやかな人だなというイメージを持ってもらうことができます。


先と先にツヤを出す

人に会ったときにまず目が行くのは先と先。つまり髪の毛、指先、靴の先です。
髪の毛がボサボサでは不潔でだらしないイメージになってしまいます。いつも早めに美容室に行って毛先を整え、トリートメント、ツヤ出しワックスなどでツヤを出しましょう。
指先も、水仕事のあとにはハンドクリームをこまめに塗ってケアしましょう。またネイルがよれていたり、ハゲていたりしないよう注意してください。とても目立ちます。
靴も磨いたり、小まめに修理へ出すなど、いつもピカピカの状態にしておきましょう。


TPOにあった服装を心がける

その場にふさわしい服装も、身だしなみでは大切なことです。たとえば「オシャレをして、ステキな雰囲気で食事をすることを楽しみに来られるお客さまが多い中、たまに破れたジーンズやリュックサックなどで来られる方がいる」と、ある高級レストランのシェフが嘆いていました。
ヴィンテージもので値の張るジーンズであっても、知らない人が見れば穴の開いたほころびたジーンズ。リュックサックも海外の高級ブランドのものだとしても、もともとは山登りのときに担いでいくもの。どちらの装いも、格式のあるお店には似合いませんし、ドレスアップしてきた他のお客さまに対しても、配慮が足りないと言えます。
逆にロックコンサートやキャンプなどにドレスアップしていくのは場違い。場の雰囲気を乱さないよう、TPO(時間、場所、目的)に合った服装を心がけるのは大切なマナーです。


約束5素直で、謙虚であること

何かを学ぶときには、素直で謙虚であることが大切です。素直でなければ人の教えが心に届きませんし、知識や情報も吸収できません。謙虚さがないと、自分が間違っていたとしても受け入れられず、間違いが修正されず、結局、自分が損をします。
特にマナーの場合、年を重ねれば自動的に身につくものではありません。意識してマナーの本を読んだり、マナー講座に参加するなどして初めて、日本で伝承されている美しい礼儀作法を知ることができるのです。また「知っている」と「できている」は違いますので、その知識を実行して初めて身につけることができます。


自己満足でいい

マナーというのは、人に評価や見返りを求めるものではありません。自分が相手に心遣いができたという、その事実だけで十分にステキなのです。
例えば知り合いに季節のお菓子を贈りたいからと、遠方の和菓子屋さんから、わざわざ美味しいお菓子を取り寄せたとします。知り合いに渡すと、「あら、ありがとう」とすげない返事。そこで「もっと喜んでくれてもいいのに」とか、「わたしの苦労は何だったの」とか、そういうことは思わない。大事なのは「相手のことを思い、美味しいお菓子を用意した自分って、ステキだな」と思えること。要は自己満足で良いのです。
「自己満足」は普段、あまりいい意味で使われませんが、私が思う「自己満足」とは、自分のなかで完結して、他人に押しつけない、謙虚な姿勢を指します。
自己満足をすると自然と笑顔になって、幸せな気分になれます。それが周りに伝わって、周りも幸せな気分になれるという好循環が生まれます。マナーは自己満足で、自分が楽しければそれでいいのです。

マナーとは生き方

以上が、私が提唱しているマナーの「5つの約束」です。マナーとはその人の生き方に深く根ざしたもの。「マナー=生き方」とも言えます。人のことを思いやり、人との良い関係のなかで幸せをみつけたいなら、マナーはその願いに応えてくれる幸せな生き方でもあるのです。ぜひ、この5つの約束を心に留めて、楽しく美しいマナー生活を始めていただけたら嬉しいです。

井垣先生がマナーについて書いた、たくさんの本たちです。書店や図書館でみかけたら、手に取ってのぞいてみてください。もっと深くて、楽しく美しいマナーの世界に出会えることでしょう。

Adviser

井垣 利英(いがきとしえ) (株)シェリロゼ代表取締役 、 人材教育家、 マナー美人塾塾長

名古屋生まれ、東京在住。中央大学法学部在学中からフリーアナウンサー としてテレビ出演。
2002年(株)シェリロゼを起業。20年間で2万人を指導。自社の【会話美人講座】【マナー美人塾】でマナー、プラス思考、話し方などを指導。また全国の企業で、社員研修や講演会を年間100本ほど行う。
やる気とマナーを上げる日本で唯一の専門家。
著書は『ふんわりと上昇気流に乗る生き方』(サンマーク出版)、13万部を突破した『しぐさのマナーとコツ』(学研)など19冊。

シェリロゼ
https://www.c-roses.co.jp/
YouTube
https://www.youtube.com/user/104toshia

 

編集協力/中西后沙遠(なかにしみさお) 撮影/森武志


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