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お片づけのプロ水谷妙子さんの暮らしの整え方<家事シェア編>

暮らし

整理収納アドバイザー水谷妙子さんが考える、「家族が笑顔になる暮らしの整え方」についてお届けします。第1回のテーマは、<家事シェア>です。「家事分担がうまくいくコツは、話し合い。夫婦共通のゴールを決めることが大切」という水谷家の家事分担について教えてもらいました。

目次

  • ポイント① 水谷家は「夫6:妻4」で家事シェア。ひとりで決めない、抱え込まない
  • ポイント② 夫にイライラするのは、あなたの状況が伝わっていないのかも
  • ポイント③ その家事のゴールはどこ? 認識のズレをなくせば問題は解決する
  • ポイント④ 夫婦のコミュニケーションは、暮らしを構成する力を育んでくれる
  • ポイント⑤ 「ものを減らす」「家事を手放す」ことで、気持ちはグッと楽になる

ポイント①水谷家は「夫6:妻4」で家事シェア。ひとりで決めない、抱え込まない

水谷家は夫婦共働き。現在はご主人が6割、水谷さんが4割の家事を担っています。ご主人の主な役割は息子さんを朝保育園に連れて行くこと、洗濯、朝食作り、浴室掃除。水谷さんは保育園のお迎え、朝食以外の料理や掃除、整理収納を担当しています。

「夫のほうが役割が多いというのは一般的ではないのかもしれません。でも、新婚当初はほぼすべての家事を私が抱えていたんです。」

当時は会社勤めをしていた水谷さん。共働きとはいえお子さんを出産するまではなんとか仕事と家事をこなせていましたが、1回目の育児休暇中に大爆発してしまったそうです。

「初めての子育て。実家にも頼れず家事も育児もこなそうとして、産後うつのような状態になってしまいました。ママ友もいないし、外に出ることすらおっくうになり、精神的に追い詰められ、『もう無理!』となったとき初めて夫と家事について話し合ったんです。」

「家のことはいいから一緒に子育てを頑張ろうと夫が言ってくれて、そこから少しずつ夫も家事をするようになりました。時間をかけて少しずつ夫の役割を増やし、今ではその割合が逆転。夫はもともときちょうめんできれい好きだということもあり、私より丁寧に家事をしているように思います。」

つらかったのはひとりで抱え込んでいたことが原因。それをご主人に伝えることなく内にため込み、じわりじわりと不満やストレスが募っていったのだろうと水谷さんは振り返ります。



ポイント②夫にイライラするのは、あなたの状況が伝わっていないのかも

家事は、人が暮らしていく上で必要不可欠なこと。仕事に例えると、一つ一つが立派なプロジェクトです。

「多くの家庭で家事のプロジェクトリーダーを担っているのは妻だと思います。特に専業主婦の人は“自分がやらなくては”と思っているかもしれません。共働きの場合も同じ。仕事場では同僚や部下と業務分担してうまく進められるのに、家庭だとプロジェクトリーダー兼プレーヤーになってしまいがちです。」

リーダーはあくまでリーダー。一部を担うことはできても、すべての家事をひとりでこなすことはとても難しいもの。家事が終わらない、自分だけがクタクタになっていると感じる人は、リーダー兼プレーヤーになってしまっているのかもしれません。

「例えば、家にいてもゲームばかりして家事を手伝わない夫がいたとします。それにイライラするのなら、自分は何が不満なのかじっくり考えてみてください。ゲームという趣味を理解できないのか、自分はゲームをするような息抜きの時間がとれないのがつらいのか。本当は息抜きがしたいのに家事が手一杯でそんなゆとりがないのなら、それを夫に伝えたことはありますか? 夫はそんなあなたの状況に気づいていないのかもしれません。」



ポイント③その家事のゴールはどこ? 認識のズレをなくせば問題は解決する

たとえ小さな家事一つでも、夫婦でコミュニケーションをとる。これが、日々の暮らしで水谷さんが大切だと考えていることです。

「整理収納サービスのお客さまや講演の参加者の方からは、『夫が洗い物をしてくれるのはいいけれど、キッチンがきれいに片づかない』というような悩みをよく聞きます。その状況に不満があるのなら、洗い物という家事のゴール地点に夫婦の認識のズレがありそうです。この場合、夫は洗って水切りかごに入れれば完了、妻は拭いて食器棚にしまうことがゴールだと考えているのかも。お互いどう思っているかは、話し合ってみないとわかりません。」

お互いの家事のゴールをすり合わせることによって、妻は「きちんとやってもらえない」と思うことが減り、夫にとっては「やっているのに認めてもらえない」と思うことが減ります。もしゴールが合わない、こだわりがあって譲れない部分があるのなら、こだわりがあるほうがやる。相手に完璧を求めないことが大切だと水谷さんは言います。

水谷家では、どんなにささいな家事でも気軽に話し合える関係を目指しているそうです。例えば、窓際のシェードをどこまで下げるか問題。

「夫が下げたシェードの位置が気に入らない場合、自分が下げたいラインまで黙って下げるのは簡単です。でもそれでは問題がずっと解決しません。もうちょっと下げて、と毎回伝えるのも少し面倒。もうちょっと、というのも人それぞれだし、そもそも何か理由があってこの位置にしたのかもしれません。」

「だから、直接話し合ってお互いが納得した位置にマスキングテープを貼ることにしました。こんなことは、話し合いというほどでもありません。家電を買い替える相談や子どもの教育方針などに比べると些細な問題です。でも、こんなふうになんでも普段から話し合える間柄になっておかないと、本当に大切な話なんてできないのでは? と私は思っています。」



ポイント④夫婦のコミュニケーションは、暮らしを構成する力を育んでくれる

相手に家事を任せたら、口出ししない。お互い自分のやり方で考えられる下地を残しておくのがよいというのが水谷さんの考えです。

「わが家の夕食作りは私が担当していますが、朝食は夫が作ります。だから朝食に使う果物、シリアルやパンなどは夫が自分で買い出しを担当します。任せることで責任が生まれるし、効率よくやれるよう工夫することもできていると思います。」

ただ、あまり家事をしない人の中には「やってほしいことを指示してくれたらやる」という受け身タイプの人もいるはず。指示をして家事をしてもらうことはできても、「やらされ仕事」では本人も楽しくないし、指示したことしかできず、臨機応変に家事をしてもらうことは難しいものです。

「これは仕事への向き合い方と同じなのではないでしょうか。子どもたちにもただの学力ではなく考える力が求められている今、家庭内でもコミュニケーションと自由な発想で家事をしていくことが大切なのかなと私は考えています。」



ポイント⑤「ものを減らす」「家事を手放す」ことで、気持ちはグッと楽になる

夫婦はもちろん、場合によっては子どもも巻き込んで家族みんなで家事をシェア。水谷さんの家事論は、暮らしはみんなで作っていくものという考えがベースになっています。

「夫婦2人暮らしのときに比べ、子どもが3人いる今のほうが家事の量は当然増えています。でも精神的にはずいぶんゆとりが出た気がしています。」

その理由のひとつは、余計なものを減らして管理やお手入れの手間をできる限り省いたから。自分以外の誰が見てもわかりやすい収納に整え、ものがあふれないようにスペースにゆとりを持たせたことで、家族がやる家事の負担も大幅減。水谷さん自身が家事を手放しやすくなったと言います。

また、自分たちでやらなくてもいいと判断した家事はアウトソーシング。手間のかかるエアコン掃除、浴室クリーニング、キッチン換気扇やシンク掃除は専門業者に依頼して半年に1回メンテナンスしています。スーパーに買い物に行くということにも負担を感じていた水谷さんは、食材宅配を利用することでその時間と手間をカット。抱え込まず、どんどん楽になれる方法を日々模索しています。

家族を巻き込み、コミュニケーションをとって助け合う。そして家事の手間自体も減らしていく。二段構えで日々の家事に向き合う水谷さんの考え方、ぜひ参考にしてみてください。



教えてくれた人

水谷妙子さん

整理収納アドバイザー1級。夫と11歳の娘、8歳、6歳の息子の5人暮らし。無印良品で生活雑貨の商品企画・デザインを13年間務め、500点以上の商品に携わる。2018年独立。お片づけ講座開催、雑誌やWeb、テレビなどで活躍するほか、ホームページ「ものとかぞく」インスタグラム(@monotokazoku)にて片づけやものについての幅広い知識を紹介中。著書に『水谷妙子の片づく家 余計なことは何ひとつしていません。』(主婦と生活社)、『水谷妙子の取捨選択 できれば家事をしたくない私のモノ選び』(主婦の友社)がある。

撮影/木村和敬(blowup studio)取材・文/佐藤望美 編集/藤島麻衣子(LINUS) 

佐藤望美執筆者

ママファッション誌、ライフスタイルメディアを中心に執筆。得意分野は育児、トラベル、ライフスタイル、ファッション。インテリア、片づけ、ミニマリスト関連の書籍を数多く編集。トラベルエディターとして国内外の旅行取材も多く、子連れ旅情報をまとめたウェブサイト「FOOTABY!」を運営中。自身も5歳の女児、小学3年生の男児の子育てに奮闘中。

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