冬も終わりを迎え、厚手のコートやニットなど、出番が終わった冬物の衣類を片づける時季になりました。そんなときにふと、衣類のクリーニングはシーズン終わりに出すべきなのか、それとも翌シーズンの着る前に出すべきなのか、迷うことはありませんか? 「シーズン終わりに出すと、保管中にシワになりそう。でも、翌シーズンまで汚れたまま保管しておくのも…」――。
クリーニングに出すタイミングは、一体いつが正しいのでしょうか。衣類の保管やクリーニングについて詳しい、“洗濯ハカセ”こと神崎健輔さんに教えてもらいました。
シーズンが終わったらクリーニングへ。冬物は遅くとも梅雨入り前までに出す
クリーニングは、着る前ではなく、着終わったあとや、シーズンが終わって衣替えをする前に出すのが正解です。着用してから時間がたつと、衣類についた汚れが固まって落ちにくくなり、臭いの原因にもなります。そうなってからクリーニングに出すと、「この汚れはなかなか落ちない」と判断されて、追加料金がかかる場合や、落ちないシミとなり、除去できずに返却となることもあります。 厚手のコートやニットといった冬物は、遅くとも梅雨入り前までに出すのがおすすめです。なぜなら、梅雨の時季になると、湿気で汚れにカビが生えてしまうおそれがあるからです。また、湿度が高い空間に衣類を置いておくと、汚れが繊維の中に入り込んだり、シワがつきやすくなったりします。
基本的に、一度着た衣類には、目に見えない汚れがついています。そのため、着用した回数にかかわらず、必ずクリーニングや洗濯をしてからしまいましょう。梅雨以降、肌寒い日が心配という場合は、薄手のコートなど、羽織を1枚残しておくと、しまうつもりでクリーニングに出したばかりのアウターに再び袖を通す…という事態を防げます。
通常コースとプレミアムコースはどちらがいい?
クリーニング店に衣類を持っていくと、通常より高価なコースを勧められる場合があります。「プレミアムコース」や「デラックスコース」などと呼ばれることが多いようですが、通常のコースとの主な違いは以下の通りです(クリーニング店によって多少の違いがあります)。
- 通常のコースは、洗ったあと乾燥機を使って乾かすことがほとんどだが、プレミアムコースでは自然乾燥をさせる。
- 乾燥したあとに加工剤(生地にとってのトリートメントのようなもので、栄養を与えてくれる)を使用する。
- アイロンがけをしっかり行い、細かなところまで形を整える。
クリーニング店に衣類を持ち込んだ際、店員さんは衣類の素材やブランドなど限られた情報を読み取り、「プレミアムコースにしますか?」と尋ねてくることがほとんどです。もちろん、お勧めに従ってプレミアムコースを選ぶのも一案ですが、大切なのは、「自分がその衣類をどのように扱ってほしいか?」という点です。例えば、いくら貴重な素材や高級ブランドであっても、「もう何年も着ているし、そこまでこだわらない」ということであれば、通常のコースでかまいませんし、逆に安価なTシャツであっても、「とても気に入っていて可能な限り長く着続けたい」ということであれば、プレミアムコースを選択することも十分あり得ます。
自宅での保管は湿気を取り除くことが重要
次に、クリーニングから返ってきた衣類を自宅で保管する際のポイントについてです。 まず、クリーニング店でつけてくれたビニールの包装は外して保管するのが鉄則です。ビニールはあくまで一時的に汚れを防ぐためにかぶせているものなので、そのまま長期間保管すると、湿気がこもったり、空気に含まれるガスをビニールが滞留させることで変色するおそれも高まります。化繊だと顕著に現れやすいですが、どのような繊維でもガスによる変色リスクはあるため、注意しましょう。ホコリが気になる場合は、通気性の良い不織布タイプのカバーをかけましょう。すべての衣類にカバーをつけるのが難しければ、大きな風呂敷などで覆っておく方法でもかまいません。
シワを防ぐには、畳んだ状態よりもハンガーにかけて収納するのが理想ですが、衣類がぎっしり詰まったクローゼットに、ぎゅうぎゅうの状態でつり下げると、かえってシワになってしまうことがあるので注意が必要です。 また、クローゼットの中に湿気がこもっていると、乾燥した状態よりもシワがつきやすくなります。ポリマータイプの除湿剤を使ったり、1日30分ほどクローゼットを開けたままにし、空気を入れ替えたりするなどして、湿気をため込まないようにしましょう。ちなみに、ウォークインクローゼットで、1日に何回か人が出入りする場合は、自然と換気ができているので、あえて開けたままにしなくても大丈夫です。心配な場合は除湿乾燥機なども活用しましょう。
防虫剤は、できれば使った方が良いですが、いくつか気をつけたいポイントがあります。
- 防虫効果のあるガスは空気より重いため、防虫剤はなるべく高い位置に置き、上から下に効果が行き渡るようにする。クローゼットならハンガーパイプに、引き出しや衣装ケースなら畳んだ衣類の一番上に防虫剤を置くようにする。
- たんすや衣装ケースの中、元々しまってあった衣類に虫が入り込んでしまっている場合は、防虫剤を置いても防虫効果は薄い。あらかじめ、虫がいないかきちんと確認してから、衣類を重ねるようにする。
ちなみに、衣類を食べる虫の幼虫は米粒くらいの大きさで視認性があり、成虫になると羽虫に。幼虫は壁などを這って移動することもあるため、クローゼットの近くで目撃したら、衣類をチェックしたほうがよい。 - 防虫剤は虫の食欲を減退させる香りを出して殺虫するものなので、クローゼットを長時間開けたままにしていると、香りが流出して防虫効果が薄れてしまう場合がある。
せっかくクリーニングに出してきれいになった衣類も、自宅での保管方法によっては状態が悪くなってしまうこともあります。お気に入りの服は長く着られるように、さまざまな角度からケアを行いたいものです。
教えてくれたのは
神崎健輔さん有限会社白洋社 部長
株式会社クラスタス CTO
洗濯・シミ抜き職人。実家である老舗クリーニング店「白洋社」で部長を務めるほか、株式会社クラスタスでは宅配クリーニングサービス「Nexcy(ネクシー)」を開発し、全国から集配可能なクリーニング店の運営も行う。“洗濯ハカセ”としてテレビや雑誌など、多数のメディアに出演し、家庭でもできる洗濯・シミ抜き術を発信中。
取材・文/須川奈津江
写真提供/PIXTA
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