2021年のボジョレ・ヌーヴォーは貴重。料理との相性は?
今年もボジョレ・ヌーヴォーの季節がやってまいりました。2021年の解禁日は11月18日の木曜日です。この「11月の第3木曜日」という不思議な決め方は、ワインの配送に配慮したものです。当初は15日でしたが、土日にあたってしまうと解禁日にワインが配送できなくなってしまうため、このような決め方になったようです。さて、せっかくなので本題の前に、今年のボジョレ・ヌーヴォーの作柄について少し触れてみたいと思います。
今年、ヨーロッパのワイン産業は異常気象により大きな被害を受けました。フランスの収穫量は過去半世紀で最低になったとも言われています。フランス東部のボジョレを含むブルゴーニュ地方はもっとも被害の大きかった地域のひとつで、ボジョレ・ヌーヴォーも3~5割程、生産量が減少すると予想されています。ただ、そのような中でたくましく育ったブドウの品質は非常に良く、フレッシュ&フルーティで果実味のしっかり感じられるボジョレ・ヌーヴォーになったと期待されています。生産量はだいぶ少なくなりましたが、品質はしっかり守られたようです。また、少なくなったとは言え、日本は毎年ボジョレ・ヌーヴォーの輸出が5割近くを占める第1位の輸出先です。今年も十分な輸入量があると思いますので、解禁を楽しみにされている方はご安心ください。
さて、そんなフレッシュ&フルーティで果実味のしっかりしたボジョレ・ヌーヴォーは、やや甘味のある日本の家庭料理がよく合うと思います。後述しますが、赤ワインですので醤油や味噌を使ったものも好相性です。同じ方向性で中華も良さそうです。作柄にもよりますが、ボジョレ・ヌーヴォーのような甘味があるワインでしたら、料理に多少甘味があっても合わせることができます。料理と合わせて困難に耐え抜いた今年の貴重なボジョレ・ヌーヴォーを味わってみてください。個人的には、より良い畑から作られている「ボジョレ・ヴィラージュ・ヌーヴォー」がおすすめです。真ん中に「ヴィラージュ」とついているものを探してみてください。
料理とワインの相性はアレンジ次第
前回のコラムでもお伝えしましたが、普段作っている料理に“ワインに合う一工夫”をするだけで、料理とワインの相性はとても良くなります。
前回お伝えしたポイントは、
- 料理とワインの色を合わせる
- 料理に酸味を取り入れる
- ワインに合う調味料を知る
- 甘味に気を付ける
といったお話をさせていただきました。
今回のコラムでは、前回お伝えしきれなかった「ワインに合う調味料を知る」というお話を、お伝えしていきたいと思います。
「調味料」とひとくくりにしてはいますが、ここで言う「調味料」はワインとの相性に変化を与える様々な食材のことが含まれます。是非ワインに合う料理のアレンジのコツを掴んでいただければと思います。
ワインとの相性バッチリのテッパン食材
みなさんも良く知る食材の中に、“一工夫”加えるだけでワインとの相性が良くなるテッパン食材があります。それは「ニンニクとチーズ」です。チーズ単体でワインと合わせようとすると意外と合わせ方が難しいのですが、料理に加える形で使うとワインと料理をぐっと近づけてくれます。癖のないパルミジャーノチーズ等は万能でオススメです。
一方で、「ニンニクとチーズ」がどちらも料理に合わない場合、その料理とワインは相性が良くないといえます。この法則は、ワインに合う料理を選ぶ時の基準としても使えるので覚えておいてください。醤油とニンニク、味噌とチーズの相性が良いように、ご家庭の料理には「ニンニクとチーズ」どちらかを加えるだけでワインと相性がよくなる料理がたくさんあると思いますので、是非試してみてください。

バターとオリーブオイル
ワインと合わせる料理を作るうえで非常に重要な役割をはたすのが油脂です。前回のコラムでもお伝えしましたが、キャビアとサワークリームを合わせると魚卵とワインの相性が良くなるように、油脂はワインと料理の橋渡しをしてくれることが多々あります。その中でも代表的なのが、「バターとオリーブオイル」です。実は、この「バターとオリーブオイル」のどちらかを使うと、料理とワインの相性が変わってくるのです。
ここで、バターとオリーブオイル、それぞれの生産地をイメージしてみてください。バターは牛乳が原材料ですから、牛がたくさんいる涼しい高原のある山の風景が浮かびます。対してオリーブオイルの原材料であるオリーブの実がなるオリーブの木は地中海沿岸に多く、太陽の光がさんさんと降り注ぐ暖かい海沿いの風景が浮かんできます。
この風景をそのままワインの産地に当てはめてみることで、ワインとの相性を近づけることができるのです。代表的なワインの産地としてフランスを例に話をしますと、ブルゴーニュ地方やシャンパーニュ地方といった北に位置する山が近い場所にある産地のワインや北イタリアの南アルプスに近い地方のワインは、バターとの相性がとても良いです。一方、地中海沿いの南フランスにあるラングドック・ルーション地方のワインや代表的なオリーブの産地であるイタリアのワインは、オリーブオイルとの相性が良いです。
バターとオリーブオイルはどちらもワインとの相性が良い食材ですが、この法則を知っているだけで、1ランク上の合わせ方ができるようになります。これから飲むワインがどんな場所で作られているのか調べたり、想像したりする時間も一緒に楽しんでみてください。
この調味料は、赤と白どっちに合う?
ワインに合う調味料は他にもたくさんあります。ここでは、赤ワインと白ワインそれぞれにどんな調味料が好相性なのか見ていきましょう。この相性を押さえておくだけで、その日に飲むワインに合わせて味付けをアレンジしやすくなります。
◎赤ワインに合う調味料(例)
- バルサミコ酢
- 醤油
- 味噌
- わさび
- ポン酢
- 黒胡椒
- 唐辛子
◎白ワインに合う調味料(例)
- ホワイトバルサミコ酢
- レモン(柑橘系)
- クリームチーズ
- ショウガ
- 柚子胡椒
◎赤ワインと白ワイン、両方に合う調味料(例)
- マスタード
みなさんがご家庭でよく使われる調味料もたくさんあるのではないでしょうか。比べてみると、ここにも何となく色の違いがあることにお気づきになると思います。色の濃い物は赤、薄い物は白、といった具合です。ただ、ワインには軽めの赤だったり、重めの白だったり、と色々なタイプがありますので、とらわれすぎずに色々試してみてください。組み合わせ次第ではワインの色に関係なく相性が良くなることもあります。
先ほどご紹介した白ワインと相性の良いホワイトバルサミコ酢は、あまりご家庭で見かけない調味料だとは思いますが、他のお酢に比べて酸味がマイルドで使いやすく、原材料が白ブドウですから白ワインとの相性が抜群です。ご家庭に一本あると白ワインと好相性のサラダがすぐ作れますのでオススメです。
また、マスタードなどは赤・白どちらでも合う調味料で便利です。
「ワインに合う食材&調味料編」と題して、ワインに合う料理のアレンジのコツをお伝えしてきましたが、いかがでしたでしょうか。難しく考えずに、気軽に日々の食卓に活かしてみてください。例えば「肉じゃがにニンニクを入れて、お酒の代わりにワインを使い、最後にバターを合わせてみる」、「余った食材にチーズをのせてオーブンで焼いてみる」というのはいかがでしょうか。今回ご紹介した食材や調味料を、みなさんが好相性だと感じる範囲でどんどんお料理に取り入れてみてください。きっと自分だけのワインに合う食材&調味料が見つかるはずです。
監修

牧野 重希(まきの しげき)
吉祥寺の老舗イタリアン、リストランテ イマイのシェフソムリエ。2007年、料理人を志しリストランテ イマイに入社。2010年よりセコンドシェフとして従事。料理を学ぶなかでワインの魅力に惹かれ、お客様へのより良いサービスとワインの提供を目指し、接客に転向。
2023年からWEBサイト「ちょっとまじめにソムリエ試験対策こーざ」の講師に着任。
RISTORANTE IMAI:http://www.ristoranteimai.com/
- ・2013年 ソムリエ取得
- ・2017年 ソムリエ・エクセレンス取得
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