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読むだけで美味しくなるワインの話(第17回 おうちワインの楽しみ方 ~ワインを美味しくする温度編~)

食べる

ワインの味に影響を与えるものは?

ワインは味わいが変化するお酒です。様々な姿を見せてくれる楽しさがある反面、場合によっては本領を発揮できないまま飲み終わってしまうことも。

第15回でもご紹介しましたが「ワインの味わいに影響を与える要素」は次の5つです。

  • 温度(ワインの温度、室温など)
  • 一緒に食べる料理(飲むワインとの相性など)
  • タイミング(飲み頃、抜栓のタイミングなど)
  • グラス(厚みや形状)
  • シチュエーション(誰とどんなワインを飲んでいるか)

「ワインの味わいに影響を与える要素」のうち、読むだけで美味しくなるワインの話第15回第16回では「一緒に食べる料理(飲むワインとの相性など)」をテーマに、ワインを美味しくするコツについてお話しさせていただきました。
今回は「温度(ワインの温度、室温など)」がワインの味に与える影響についてお伝えします。

ソムリエ最大の仕事 ワインの温度について

ワインの温度管理は、ワイン提供におけるソムリエの最大の仕事といっても過言ではありません。それぐらいワインの味わいは温度によって変化するからです。ソムリエは提供時のワインの温度もさることながら、ボトルであれば提供中のグラスの中のワインの温度にまで注意を払いながらワインを提供しています。
では、温度によってワインの味わいはどう変わるのでしょうか。一般的には次のように言われています。

◎温度を下げた場合

  • フレッシュ感や、フルーティーな香りが際立つ
  • 酸味がよりシャープになり、味わいがドライな印象になる
  • 味わいのバランスがスマートになり、苦みや渋味は強く感じられる

◎温度を上げた場合

  • 香りが大きく広がるようになり、フレッシュ感よりも熟成感や複雑性のある香りが高まる
  • 酸味が柔らかくなり、甘味が強く感じられる一方で、繊細さはなくなる
  • ふくよかな味わいのバランスになり、苦みや渋味は快適に感じやすくなる

ワインは温度によってこれだけの変化があります。シンプルに言えば、「冷たくすればキリっとスッキリ」「温度が上がるとやわらかくてしっかり」といったところでしょうか。赤ワインは12~20℃、白ワインは6~14℃が適温と言われていますが、ワインによって違いがあるため、ソムリエはワインごとに細かく温度を判断しながら提供しています。

ご自宅でここまで細かいことを考えながらワインを飲むのは大変だと思いますので、“ここだけは押さえてもらいたい!”ポイントをピックアップしてご紹介します。


01自分の好みの味に合わせて温度を変える

例えば白ワインの場合、「味が甘すぎる」「キリっと感が足りない」などと感じたらさらに冷やす。「味わいが軽すぎる」「香りが弱い」と感じたら、少し温度を上げてみるといいでしょう。
ワインは楽しむものですから、最終的には自分が美味しいと思える温度にするのが一番です。


02それぞれのワインの適温を見つける

これは難しく感じられると思いますが、シンプルな考え方がありますので参考にしてください。まず赤ワインの場合は、「タンニン(渋味)」と「ワインの色」を参考に温度を決めてみてください。「色が明るくて、渋味があまり感じられないワイン」は12~16℃。「色が濃くて、渋味がしっかり感じられるワイン」は16~20℃です。これは単純に重たいワインは渋味が強く、その渋味が不快だと美味しく感じられないことが多いからです。渋味が強すぎてワインが飲みづらいと感じたら、そのワインの適温はもう少し高めのほうが飲みやすいかもしれません。ただし、温度の上げすぎには注意してください。

日本では、ヨーロッパの「赤ワインは室温で」という言葉がひとり歩きしてしまい、赤ワインを常温にしてしまうことが多いのですが、実はこの教えが伝わった頃のヨーロッパの室温は日本と比べてとても低かったのです。正確なことはわかりませんが、本当は16~18℃くらいのことを指していたのではと言われています。実際に温度の上がった赤ワインは、渋味こそ感じにくくなるものの、味わいがダレてベタつきを感じ、美味しくありません。日本の室温は20℃以上になっていることが多いので、実は赤ワインはある程度冷やしておく必要があるのです。

白ワインの場合は、「樽熟成をしているかどうか」で判断します。樽熟成をしていなければ6~10℃、していれば10~14℃です。この方法をお勧めするのは、樽熟成をすることで「ワインの酸の構成」が変化することが多いからです。樽熟成をしていないワインには「リンゴ酸という冷たいときに美味しい酸」が多く、樽熟成をしたワインには「高めの温度が美味しい乳酸」が多く含まれています。すべてに当てはまるわけではありませんが、このルールを参考にご自身の好みで調整してみてください。樽熟成をしているワインかどうかは、ショップの店員さんにたずねるか、少し難しいかもしれませんが、ネットでワイン名を検索することで確認できます。


03ワインを適温にしておく最適な方法を考えてみる

飲食店では様々な方法でワインの温度が管理できます。冷蔵庫や、温度帯の違うワインセラー、ワインクーラーもあります。その中でも、アイテムの少ないご家庭でできそうなのはまず冷蔵庫と冷凍庫です。冷蔵庫はしっかり冷やすのに時間はかかりますが、白ワインを適温に保っておくのに役立ちます。また、軽めの赤を冷蔵庫に入れておくのも良いです。
一時的に早く温度を下げたいときには冷凍庫も有効です。短時間でもしっかり冷やせます。ただし、出し忘れは要注意です。
また、深底の鍋をワインクーラー代わりにする方法もあります。近くに置いておけるので、何度も冷蔵庫にワインを冷やしに行かなくて良いですし、冷えるのも早いです。他にも、水を入れずに氷だけを軽く敷いてその上にワインを置く方法でも、赤も白も温度上昇を防ぐことができます。


ワインの温度を管理するというのは、手間がかかることではありますが、そのひと手間で味わいも変わってきますので、できることから試してみていただければと思います。

監修

牧野 重希(まきの しげき)

吉祥寺の老舗イタリアン、リストランテ イマイのシェフソムリエ。2007年、料理人を志しリストランテ イマイに入社。2010年よりセコンドシェフとして従事。料理を学ぶなかでワインの魅力に惹かれ、お客様へのより良いサービスとワインの提供を目指し、接客に転向。
2023年からWEBサイト「ちょっとまじめにソムリエ試験対策こーざ」の講師に着任。

  • ・2013年 ソムリエ取得
  • ・2017年 ソムリエ・エクセレンス取得
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