別窓アイコン 矢印 矢印02

その言動、“カスハラ”かも!? 意見や不満を上手に伝える方法

暮らし

商品やサービスに納得できないことがあったとき、自分の意見を伝えることは、決して悪いことではありません。むしろ、正当な申し出や改善の声はサービスをより良くするきっかけにもなります。しかし、要求の内容や伝え方が行き過ぎると、相手を追い詰める“カスタマーハラスメント(以下、カスハラ)”になってしまうことがあります。サービスを利用する私たちは、どのようなことに気を付ければよいのでしょうか。苦情・クレーム対応アドバイザーの関根眞一さんに教えてもらいました。

カスハラ防止措置が義務化され、企業もカスハラ対策を強化

“カスハラ”とは、商品やサービスを利用する人の言動のうち、要求の内容や伝え方が行き過ぎて、対応する人に大きな負担をかけてしまうものを指します。近年、暴言や過度な要求、長時間の拘束などにより、現場で働く人が心身に負担を抱えたり、離職につながったりするケースが問題視されています。こうした状況を受けて法改正が行われ、2026年10月からは、企業等に対してカスハラ防止のための措置が義務付けられることになりました。そのため、今後、企業や店舗ではカスハラに対し、現場の担当者が“我慢して対応する”のではなく、組織として線引きを行い、従業員を守る体制づくりが求められるようになります。

利用者に対し、カスハラに該当する言動や対応方針を事前に示す動きも広がっています。店舗や施設にポスターを掲示する、Webサイトに方針を掲載する、電話の冒頭で「通話を録音しています」と案内する、といった取り組みもその一つです。コールセンターなどでよく聞く録音の案内は、もともとは応対品質の向上やトラブル防止を目的としたものですが、今後はカスハラ対策として、やりとりを記録する意味合いもより大きくなっていくでしょう。そのため、サービスを利用する側も、企業が働く人を守るために一定のルールを設けていると知っておくことが得策です。

怒りをぶつけるのではなく、解決したい内容や目的を伝えることが大切

「注文したものと違う」「説明された内容と違う」「対応に納得できない」。こうした苦情やクレームそのものは正当であっても、伝え方が不当だと、カスハラに該当する場合があります。不満が解消されないとき、「責任者を出してください」と言いたくなることもあるでしょう。状況によっては、上席者に確認してもらうことが必要な場合もあります。しかし、「責任者を出せ!」「上の者を出せ!」「納得するまで終わらせない!」といった言い方になると、相手を威圧することになりかねません。

大切なのは、怒りをぶつけることではなく、解決したい内容を伝えることです。例えば、「この件について判断できる方に確認していただけますか」「こちらの要望が可能かどうか、責任のある方に確認していただきたいです」というように、目的を明確にして伝えると、受け取られ方は大きく変わります。

また最近は、納得できない対応を受けたとき、SNSや口コミサイトに投稿する人も少なくありません。体験を共有すること自体が全て問題になるわけではありませんが、担当者の個人名や顔写真を出したり、相手に「評判を落としてやる」「SNSにさらすぞ」と告げたりする行為は、カスハラにとどまらず、名誉毀損や脅迫などの犯罪につながる可能性があります。SNSに投稿したい場合は、「SNSに投稿してもいいですか」と相手に確認したうえで、「困る」「やめてください」などと回答されたら、「では、この件について、正式な窓口に意見を伝えたいです」と、不満を伝える窓口を尋ねるといいでしょう。「投稿してもいいですよ」と回答されて不満を投稿する場合でも、個人が特定される情報は避け、事実と感情を分けて書くことが大切です。「ひどい対応だった」と断定する前に、「どのような状況で、何に困ったのか」「自分は何を求めていたのか」を整理してみましょう。

カスハラ対策は、より良いサービスを受けるため、利用者側にも必要な意識

相手に求めているのは謝罪なのか、説明なのか、もしくは返金や交換を求めているのか。そこが曖昧なまま話し始めると、相手の対応にも納得しにくくなり、やりとりが長引くことがあります。そして、怒っているときほど、つい強い言葉を使ってしまいがちです。しかし、次のような言い方は相手を威圧したり、過度な要求と受け取られたりする可能性があります。言い換えの例も併せて覚えておきましょう。

かつては、接客の場で「お客様は神様」という言葉が使われることもありました。しかし、サービスは提供する側だけでなく、受ける側との関係で成り立っています。働く人が疲弊し、離職してしまえば、結果として私たちが受けられるサービスの質や機会にも影響します。カスハラ対策は、従業員だけを守るものではなく、気持ち良くサービスを受け続けるために、利用者側にも必要な意識です。不満があるときこそ、強い言葉で押し切るのではなく、事実を整理し、要望を明確に伝える。また、家族など身近な人がカスハラに近い言動をしていたら、そっとたしなめてあげられるといいでしょう。その小さな心がけが、お互いを守るだけでなく、自分の声をきちんと届けることにもつながります。

教えてくれた人

関根眞一さん苦情・クレーム対応アドバイザー

1950年生まれ。1969年に株式会社西武百貨店へ入社し、34年間勤務。販売職を経て、お客様相談室長兼店舗教育部長として関西・関東の店舗で1,300件を超える困難な苦情対応に携わる。2005年にメデュケーション株式会社を設立し、企業・医療機関・学校・行政機関を対象に、苦情対応やカスタマーハラスメント対策の研修・講演を全国で実施。対応実績は1万件近くに及ぶ。『となりのクレーマー』(累計25万部超)をはじめ、その他著書多数。

取材・文/須川奈津江 写真提供/PIXTA

「暮らし」⼀覧へ戻る