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認知症リスクは冷蔵庫を見ればわかる!? 中身を整理して予防につなげよう

暮らし

厚生労働省の調査によると、2012年に約462万人だった日本の認知症患者数は、2040年に約584万人に達するといわれ、これにより、将来的には高齢者の約2人に1人が認知機能に問題を抱える時代が到来すると考えられます。

認知症の約70%を占めるのが、アルツハイマー型の認知症。『OK食材、NG食材もズバリ! 認知症を防ぐ最高の食べ方』の著者で医学博士の山根一彦先生によると、アルツハイマーを予防するには、食事法を工夫したり、食材を保管する冷蔵庫の中身を見直したりすることが大切だといいます。日々の食事に深い関わりのある冷蔵庫の整理方法や、食材で認知症を予防する方法についてお話を伺いました。

01冷蔵庫は認知症の可能性を表すバロメーター

冷蔵庫の中は、買い物や料理といった日常生活に必要不可欠な作業の起点となるため、認知機能低下のサインが出やすい場所です。認知症の初期段階は、複雑な日常生活動作に支障が出ることから気づく場合があるのですが、この複雑な日常生活作業ができているかどうかは、冷蔵庫の中を見れば分かります。

具体的には、作りたい料理に必要な食材が分からなくなり、必要なものはないのに、不必要なものばかりが増えてしまう。何を買ったか、いつ買ったか、どこにしまったかが思い出せなくなってしまう。賞味(消費)期限など食材の管理ができなくなってしまう。こうしたことが原因で冷蔵庫の中が乱れると、そこには認知症の疑いが潜んでいる可能性があります。

実際、お子さんが久しぶりに実家に帰省して冷蔵庫の中を見ると、「昔は整理整頓されていたのにぐちゃぐちゃになっている」「なんだかにおいが気になる……」と感じる場合があり、こういった“冷蔵庫の乱れ”から、親御さんの認知機能の低下を疑うケースがあります。
まずは、下記のリストで認知症の疑いがないかチェックしてみましょう。

判定

チェックが4個以下

今は認知機能に大きな問題はなさそうです。「✓」の数をさらに減らそうとすることで、脳にいい刺激を与えてあげてください。

チェックが5〜7個

冷蔵庫を開けるたび、小さなストレスが少しずつたまり、じわじわと脳に悪影響を与えているかもしれません。「✓」が4個以下になるよう、冷蔵庫を整えてみてください。

チェックが8個以上

認知機能の低下が心配です。また、冷蔵庫の中に漂う「毒素」が脳に与えるダメージも心配です。まずは「✓」が7個以下になるのを目標に、冷蔵庫を整えてみてください。

02冷蔵庫の中身を目の前で捨てるのはNG! ポジティブな言い換えを

上記のチェックリストでチェックの数が5つ以上だった場合、まずは冷蔵庫の整理を始めましょう。毎日使う冷蔵庫の中をきれいに整理することは、認知症を予防する食材について学んだり、有効な食事法を実践する意欲にもつながったりします。

まずはじめにできることは、冷蔵庫の中身を増やしすぎないこと。見渡せる範囲で全体を把握できる量にすることが理想です。また、冷蔵庫を整えるには、自分でルールを作るのもおすすめです。例えば、冷蔵庫に常に入れておくもの(調味料、卵、納豆、ヨーグルト、野菜など)と、その日に使い切るもの(肉、魚など)に分けて、それぞれの置き場を決めます。いつ使うか分からない食材を適当な場所に入れると、冷蔵庫の中身が増える原因になります。中でも調味料は、割高にはなりますが、一定期間で使い切れるよう、小さいサイズのものを買うのがおすすめです。

さらに、1週間に1回などと決めて、冷蔵庫の中を整理する日を作るのもいいでしょう。賞味(消費)期限切れのものは廃棄し、奥にしまいこんでいるものはないかチェックして、期限が近いものは、いつ食べるのか、計画を立てます。

ただし、自分の家ではなく、高齢の親や、介護している家族の冷蔵庫を整理する場合は、ご本人のプライドを守りながら、食の安全性を守るようにしましょう。目の前で冷蔵庫の中身を捨てられると、自分を否定された気分になることも。もう食べられないものなのに、「まだ食べられるから捨てないで」と言われたら、「新しいものに交換しよう」と物々交換するような提案をしたり、「新しいほうが美味しいよ」などポジティブな理由を伝えると良いでしょう。「これ、うちで使うからもらってもいい?」「◯◯さんにお裾分けするね」と言いながら、見えないところで処分するのも一案です。

また、食べられる期日を大きく書いたメモを、食材に貼っておく方法も有効です。あらかじめ、期限が過ぎたら処分する、というルールを共有しておけば、すんなり処分できる場合もあります。その際、期限の近いものは冷蔵庫の手前に入れておいて、使いやすいようにしておきましょう。

03認知症の予防には“水”も効果的

冷蔵庫を整理する習慣ができたら、食事法も工夫してみましょう。簡単に摂れて、認知症予防になる食材をご紹介します。

納豆

納豆に含まれるレシチンは、認知機能の改善と深く関わる成分です。また、ナットウキナーゼは血栓を溶かしやすくする成分で、脳血管性認知症の予防につながります。1日1パックを目安に、食べるときは右に100回、左に100回、回数を数えながら混ぜるのがおすすめ。手をすばやく動かしながら、同時に数を数える動作を行うと、脳の刺激になるからです。

キノコ類

研究によると、キノコを1週間に300g以上食べると、認知症の前段階である軽度認知障害のリスクが50%低下する可能性があると報告されています。これは、キノコに含まれるエルゴチオネインというアミノ酸の成分が関係しているからだと推察されます。週に2回以上、1週間で300g以上、いろいろな種類を食べるのがおすすめです。

ブロッコリー

ブロッコリーをはじめとするアブラナ科の野菜は、ファイトケミカルが豊富。中でも、イソチオシアネートは抗炎症力、解毒力、抗酸化力といった認知症予防に働きかける栄養素です。イソチオシアネートを十分に摂るには、細かく刻み、15分ほど置いてから加熱しましょう。加熱するときは高温で炒めることは避け、低温で蒸したり、軽くゆでる程度に。

ほかにも、認知症予防におすすめの食材は色々ありますが、実は水もその一つ。水分の体内での役割のひとつに、「栄養分や老廃物を血液中に溶かして運ぶこと」があります。つまり、脳内に蓄積して認知症を引き起こす老廃物を洗い流してくれる役割があるのです。加えて、体内の水分が1〜2%減ると認知機能の低下につながることも分かっています。そのため、体には十分な水分が必要で、湯呑みまたは小さめのコップ2杯分の水を2時間おきに、1日8回程度の頻度で飲むのが理想です。

人生100年時代を思うと、認知症に負けてはいられません。まずは冷蔵庫の中身に着目して、効果的な食材を上手く取り入れながら、認知症予防を心がけましょう。

教えてくれた人

山根 一彦(やまね かずひこ)医学博士、一般社団法人認知症協会代表理事

神経変性疾患・生体防御・感染症代謝を専門とし、第一三共ヘルスケア株式会社、SBIアラプロモ株式会社など、複数の大手製薬企業で商品開発・改良に参加。知財として価値の高い複数の特許を取得。行政に依頼されての認知症予防出張講演や介護施設の食事指導、認知症専門人材の育成、教材開発、認知症関連書籍の監修・執筆活動を行う。著書・監修に『マンガでわかる 医学博士がすすめる認知症にならない最高の習慣』(新潮社)『OK食材、NG食材もズバリ! 認知症を防ぐ最高の食べ方』(KADOKAWA)などがある。LINEやYouTubeを活用し、一般に向けて認知症予防や改善に役立つ知恵を広く発信している。

取材・文/須川奈津江 写真提供/PIXTAほか

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