人生の最期を迎えるその時のために、さまざまな準備をしておく“終活”。家族に伝えておきたいことがあっても、悲しい出来事を連想させるものだけあって、なかなか言い出せない人も多いのではないでしょうか。しかし、病気などでいざその時が近づいてくれば、体の自由はきかず、まして人生の終わり方を考えることなど難しくなるでしょう。家族もまた、心の準備ができておらず、最期の言葉を受け入れることは難しくなります。
では、元気で心身の自由がきく今のうちに、どのような準備をしておくのがよいのでしょう? “終活”を通して家族とコミュニケーションを取る方法や、エンディングノートの役割について、終活カウンセリングの第一人者・武藤頼胡さんに教えていただきました。
家族が集まるイベント時は終活の話題を出す好機
「急に終活のことを話したら、家族は驚いてしまうのでは?」と不安になる方も多いでしょう。確かに、初めて終活の話をすると、家族、特に子どもが「そんなこと言わないで」と拒否反応を示すのはよくあることです。しかし、人生の終わりは誰にでも訪れます。避けては通れない話なので、少しずつでもいいので話しておく必要があります。
とはいえ、離れて暮らす親子の場合は常日頃から話題に出すのは難しいですよね。そこでおすすめなのが、年末年始やお盆休み、孫のイベント事など、家族や親戚が集まる機会を利用することです。「おめでたい席や楽しい場で終活の話をしていいの?」と思われるかもしれませんが、お墓参りや年賀状のやりとりがあるお正月は、実は絶好の機会なのです。
例えば、お墓参りの場面で「おばあちゃんのお葬式はこうだったけど、私のときはこういうのがいいな」と、さりげなく伝えることもできるでしょう。また、年賀状は封書と違って誰が見てもいいものです。自分宛に来た年賀状を家族に見せながら「この方は習い事で最近できた友達なの」「いとこの○○ちゃんとは、もう何年もずっと年賀状のやりとりをしているんだよ」などと、自分の現在と過去の交友関係について伝えておくこともできます。
また、年末年始に家族が集まったときに、一年の区切りとして、家族それぞれが“自分のビッグニュースを発表する”という場を設けるのも一案です。そうすることで、自分の最近の様子を家族に伝えることができたり、ご自身にとっても、「去年はこうだったから、今年はこんなことがしたい」と、この先どんな生き方をするのか考える機会になり、その結果、「最期はこういう風に迎えたいから、そのために今はこんなことをやりたい」という直近の未来にやるべきことも見えてきます。
さらにいいのは、それを毎年の恒例行事にしてしまうこと。最初は家族も「自分の親の最期のことなんて考えたくない」と戸惑うかもしれませんが、毎年同じことを繰り返していると、自然と話題に出しやすくなっていきます。
終活は先の不安のことばかりを考えがちですが、今をよりよく生きる“生き支度”という意識で取り組んでみるといいでしょう。
エンディングノートで家族に愛情を伝える
それでも家族と終活の話がしにくい場合は、エンディングノートがおすすめです。今や終活の代名詞ともなったエンティングノートですが、これさえあれば、残された家族は故人の遺志を受け取れるからです。
形式はどんなものでも構いません。大学ノートに書いてもいいですし、最近は文具店や書店でも、さまざまな形式のエンディングノートが販売されています。エンディングノートとして販売されているものは、あらかじめ項目が設定されているので書き込むだけで手軽です。
エンディングノートに財産分与のことを書いても、法的な効力はないから……という方もいらっしゃいます。確かにエンディングノートに法的効力はありませんが、正式な遺言書を作るにしても、まずは自分の財産を知ったり、誰に何をどれくらい残したいのか、考えたりする過程が必要です。それに役立つのがエンディングノートなのです。エンディングノートを書いていくうちに自分の気持ちも決まっていきますし、文字にして可視化したからこそ、遺言書を書くことができるといえるでしょう。
また家族も、エンディングノートがあることで、終末期医療処置や葬儀の方法、遺品の処分など、労力がかかることを円滑に進めることができます。エンディングノートには、家族や友人、人生で出会った人たちに感謝を伝える項目があることも多いですが、そもそもエンディングノートを綴ることそのものが、自分が亡くなったとき、家族がその手続きを心残りなく終える手助けになるもの、つまり、残された家族に最後の愛情を伝える手段でもあるのです。
最後に
終活は60代以降の方が行うものというイメージがありますが、病気や災害はいつ起きるか分かりません。「思い立った時が終活の始め時」と意識して、老後を楽しんでいる世代はもちろん、現役世代の方もぜひ、元気なうちに終活をはじめてはいかがでしょうか。
教えてくれた人
武藤 頼胡(むとう よりこ)終活相談センター運営、霊園・葬儀事業構築コンサルティング、女性専用終活相談センター「ピオニー」運営
終活カウンセラーの生みの親。『終活』という考えを普及するべく、全国の公民館や包括センター(行政)でのセミナー講師を担い、一人一人に「終活」を伝えている。著書に『こじらせない死に支度』(主婦と生活社)などがあり、テレビ、新聞、雑誌などメディアへの掲載多数。
取材・文/須川奈津江 写真提供/pixtaほか
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