写真提供/PIXTA
2024年7月に、一万円札、五千円札、千円札の3種が新しい紙幣になりました。当初の予想より、一般に流通する時期が早くなった印象もあるので、すでに手元にあったり、使ったりした方も多いでしょう。そこで今回は、知られざる「新紙幣」の豆知識をお届けします。
紙幣の「顔」はどのように決まるの?
新紙幣の発行が決まった際、メディアを中心に大きな話題になるのが、お札の顔となる“肖像”です。今回は一万円札に渋沢栄一、五千円札に津田梅子、千円札に北里柴三郎の肖像が採用されています。この方たちは、一体どのように選ばれるのでしょう?
おおよその選定理由は、「なるべく精緻な写真を入手できること(偽造防止の観点より)」「品格のある紙幣にふさわしい肖像であること」「国民各層に広く知られており、その業績が広く認められていること」です。
日本のお札に初めて肖像が登場したのは、明治14年発行の「改造紙幣」です。以降、今回発行された新紙幣を含めて、これまでに合計20人の肖像が採用されています。ちなみに、紙幣に描かれた肖像としての印象が強い聖徳太子は、百円札や五千円札、一万円札など、これまでに7回も紙幣に描かれ、最多記録だそうです。
どんな工夫がされている?
万が一、紙幣を簡単にコピーできてしまうようなことがあれば、その信頼性は損なわれてしまいます。そこで、紙幣には最新技術を活かした様々な工夫がされていて、なかには今回の新紙幣で初めて搭載された偽造防止技術もあります。
すでに新紙幣を手にした人ならお気付きかと思いますが、今回の紙幣は、傾けると左下に描かれた肖像画が回転して見えます。これは、ストライプ型のホログラムを入れ、肖像を3Dで表現する最新技術。この技術を紙幣に取り入れたのは世界初だそうで、もちろん日本でも初搭載です。また、裏面の数字の下に「NIPPON」の文字が浮かび上がる「潜像模様」や、カラーコピー機などで複写できないよう20色以上を使った複雑な色合いは、これまでの紙幣から継続して採用されている偽造防止技術です。
一方、目が不自由な方が指で触って紙幣を識別できるような工夫もされていて、一万円札は表面左右両端の中央に、五千円札は表面の上下、千円札には表面の右上と左下に11本の斜線が入っています。縦の長さはいずれも76㎜と同じですが、線と線の間は数ミリずつ異なります。ぜひ、ザラザラとした感触を確かめてみてください。
さらに、新紙幣になりずいぶんと大きくなった額面の数字ですが、これは年齢や国籍を問わず、金額を識別しやすくするためだそう。以前の紙幣で「千円」と書かれていた箇所が「1000」と表記されるなど、アラビア数字が目立つように工夫されています。
古いお札は、今後も使える?
新紙幣が発行されると気になるのが「古いお札は、今後も使えるの?」という点。筆者の手元にも、以前に母からもらった「百円札」があるのですが、今でもしっかり使えます(自動販売機などは除く)。日本の紙幣は、無制限の強制通用力が法律で定められており、特別なことがない限り、この先もずっと使えます。
また、扱っているうちに不可抗力で破れたり、汚してしまったりすることもあるでしょう。そんなときは、破損している面積などの条件を満たせば、日本銀行の本支店のほか、街中の一部の金融機関で新しいお札に交換してもらうことができます。
- お札全体の「3分の2以上」残っている場合 → 全額交換
- お札全体の「5分の2以上、3分の2未満」残っている場合 → 半額を交換
- お札全体の「5分の2未満」が残っている状態 → 交換できない
皆さんのなかには、タンス預金をしている方もいるかもしれませんが、新紙幣の発行を機に新しいお札に変えて使ってみようと思う方もいるでしょう。それによって消費が進んだり、また、販売側の措置として新紙幣対応の機器が売買されたり、なかには新紙幣への対応を避けてキャッシュレス化を進める店舗も出てくるかもしれません。それら様々な変化が、うまくいけば、良い経済効果につながる可能性もあります。
ただ、災害の多い日本では、災害によって急にキャッシュレスが使えなくなるケースも考えられ、そんなときは紙幣の出番がやってくるでしょう。そんな緊急事態も頭の片隅に入れながら、紙幣と硬貨とキャッシュレス、それぞれの良いところを活かして上手に使っていきたいですね。
プロフィール
西山 美紀ファイナンシャルプランナー・コラムニスト
単に貯蓄額を増やすのではなく、日々にうるおいをもたらせてくれるようなお金の使い方・貯め方について発信中。小田急電鉄主催のオンラインコミュニティ『ママカレ』西山美紀ゼミ「初心者でも安心! 幸せが増えるお金の貯め方・使い方・子育てTIPS」担当。著書に『お金が貯まる「体質」のつくり方』(すばる舎)のほか、『はじめての積立投資・つみたてNISA・iDeCoもよくわかる! お金の増やし方』(主婦の友社)が発売中。
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