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読むだけで美味しくなるワインの話 (第31回身体に良いって本当? ソムリエがワインの効能をお伝えします!)

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脱アルコール時代、それでもワインをオススメしたい

最近は「今日は飲まない」「お酒は少し控えたい」という方が本当に増えてきたように感じます。私の現場でも、特に若い方々を中心にアルコールを飲まない方が増えています。実際にノンアル・低アルコール市場はこの数年でかなりの成長を遂げています。健康意識の高まりや、日々の生活リズムを大切にしたいという感覚が、今の時代にはとても自然になってきたのだと思います。そして身体の健康面だけで言えば、極論ではアルコールは毒という扱いなので、どんなお酒も「身体にとって良い」とは決して言えないのも事実です。それでも、ワインが大好きでこの仕事に従事するソムリエの一人として、今回は「ワインの効能」をテーマに、ワインの良さを語りたいと思います。

他のお酒が好きな人には怒られそうですが、ワインはただ酔うためのお酒としてではなく、食事との相性や文化的な側面も含めて、昔から特別な存在として見られてきた歴史があります。さらに、ワインはブドウをそのまま発酵させて造るお酒です。だからこそ、その果実が持つ効能もそのまま享受しやすいお酒といえます。もちろん、ワインは薬だとまで言うつもりはありませんが、今回は他のお酒にはないワインの効能について、最新情報も踏まえてお伝えしていきたいと思います。


健康においてワインが注目される理由、「抗酸化作用」

ワインが昔から「ほかのお酒とは少し違う」と言われてきた理由の一つが、抗酸化作用です。最近はよくこの「抗酸化作用」という言葉を耳にするようになりましたよね。簡単にいえば、体の中で増えすぎた活性酸素による酸化ストレスに対して、ブレーキをかける働きがあります。年齢を重ねると、私たちの体はどうしてもこうした酸化の影響を受けやすくなるので、食事由来の抗酸化成分は長く注目されてきました。ワインはその代表食品の一つです。

そして、その抗酸化作用をもたらしているのが、ブドウ由来のポリフェノールです。ワインには、アントシアニン、フラボノール、カテキン、フェノール酸、スチルベン類など、さまざまなフェノール化合物が含まれていて、これらが抗酸化作用をもたらすという研究がなされています。特に赤ワインは、果皮や種と一緒に発酵させるため、こうした成分が多く、最新の研究でも酸化ストレスを軽減する作用があると報告されています。
ブドウの果実に含まれる健康に良いとされる成分をアルコールと一緒に摂取できることが、ワインが健康に良いとされている理由なのです。


あまり知られていない白ワインの健康効果

日本にはワインブームと呼ばれる現象が何回かありましたが、その一つの大きな火付け役となったのが「赤ワインの健康効果」です。当時「フレンチ・パラドックス」と呼ばれ、動物性脂肪を多く取る食文化があるのに、フランスでは心臓病が比較的少ない理由の一つとして赤ワインが注目されました。その宣伝効果もあって、ワインと言えば赤ワインというぐらい赤ワインに注目が集まり、試飲会場では、今ではものによっては100万円を超える価格で取引される白ワインの王様「モンラッシェ」ですら見向きもされない時代があったそうです。残ったワインを楽しんでいたという先輩ソムリエに聞いた話ですが、うらやましい限りです。自分もそこに居たかった……。

すみません、話がそれました。
つまり、当時からだいぶたった今でさえ、白ワインに対して健康面では赤ワインに劣っている印象があるということです。そこで、実は白ワインにも健康に寄与する成分があることをここでお伝えしたいと思います。その成分がカリウムです。

カリウムは、白ワイン・赤ワインに共通に含まれる成分で、ポリフェノール類が少ない白ワインにも含有量が比較的多い成分です。他の醸造酒と比べても倍以上含まれており、筋肉や神経の働き、体液バランスの維持などに関わる大切なミネラルで、血圧のコントロールにも役立つとされています。カリウムは体内の余分なナトリウム(塩分)を排出する働きがあるので、塩分の多い食事が続きがちな現代の食卓では、少し意識しておきたい成分です。

そしてもう一つお伝えしたいのが、食材との食べ合わせによる効能です。皆さんも「白ワインと牡蠣」の組み合わせを聞いたことがあるのではないでしょうか。実はこの食べ合わせには、研究上も興味深い報告があります。その報告では、白ワインのアルコールだけではなく、酸度の高さや有機酸などの相乗作用によって、一部の細菌に対して抗菌的に働くとされています。最新の研究でも、白ワインには抗菌活性を含む多面的な作用があるとされています。昔ながらの文化が、知らずと理にかなっていたという例はあまたありますが、実は白ワインもその一つです。

実際に、牡蠣に付着した腸炎ビブリオを対象とした研究で、赤ワイン・白ワインのいずれも菌数を減らす方向に働き、特に牡蠣の身を使った条件では短時間で大きな減少が見られたと報告されています。つまり、結果として食中毒リスクの軽減に役立っていた可能性があるということです。ワイン好きの間で昔から「牡蠣には白ワイン」と言われてきた背景には、味だけではない、こうした興味深い研究もあるわけです。


赤ワイン注目の成分、レスベラトロール

ワインの健康面を語るとき、やはり主役になるのが赤ワインです。その理由はとてもわかりやすく、ポリフェノールが豊富だからです。赤ワインは果汁だけではなく、果皮や種などと一緒に発酵させるため、それらに多く含まれる成分がワインに移りやすく、白ワインに比べてフェノール化合物の量がおよそ6倍と言われています。抗酸化作用において赤ワインが注目されるのは、この違いのためです。

赤ワインのポリフェノールには、さまざまな成分がありますが、その中でも特に有名なのがレスベラトロールです。レスベラトロールはブドウが外的ストレスから自らを守るために作り出す成分とされています。赤ワインが持つポリフェノールの中でも、特にレスベラトロールが注目される理由は、その研究報告の多さにあります。最新の報告でも、レスベラトロールには抗酸化作用、抗炎症作用、代謝への影響、心血管系や神経系への保護的な可能性など、多くの働きが報告されています。赤ワインが長年「健康に良いお酒」と語られてきた背景には、このレスベラトロールのイメージも大きいのでしょう。単なるアルコールではなく、ブドウという植物の生命力まで一緒にいただいているような、そんなロマンを感じます。

ただ、実際のところは、赤ワインの抗酸化作用はレスベラトロールだけのものではなく、複数のポリフェノールによる総合力だといわれています。

ちなみに、ワインに含まれる総ポリフェノール量では、やはり色の濃くなるカベルネ・ソーヴィニヨンのような品種が多いのですが、前述のレスベラトロールは、ストレス耐性により生まれる成分なので、比較的ストレスを受けやすい品種であるピノ・ノワールのほうが多く含まれているそうです。濃いタイプ、淡いタイプ、どんなワインがお好みの方でも美味しく摂取できそうですね。


ワインは太るの? 気になるカロリーを比較してみました

「果実味」なんて表現があるように、ワインはブドウジュースを飲んでいるような感覚もあるためか、「健康によさそうだけれど、太りやすくないの?」という話をよく聞きます。健康を語るにおいては、これは特に気になるポイントです。

すべてのお酒にはカロリーがありますが、まずはどのお酒にどの程度カロリーがあるのか見ていきましょう。

白ワイン 75kcal
赤ワイン 68kcal
ビール 39kcal
日本酒 107kcal
焼酎 144kcal
ウイスキー 234kcal
梅酒 155kcal

100gあたりの摂取カロリー

さて、数字だけを見ると、ワインは中間くらいのカロリーのお酒に見えますが、さすがにビールやワインと同じような感覚で焼酎やウイスキーを飲みませんよね。そこで、なんとなく晩酌で飲みそうな缶ビール2本を目安に、同じぐらいのアルコール量を摂取した場合のカロリーを見てみたいと思います。

白ワイン 213kcal
赤ワイン 189kcal
ビール 273kcal
日本酒 225kcal
焼酎 182kcal
ウイスキー 181kcal
梅酒 394kcal

リアルな数字が見えてきましたね。そうです。実はワインはビールほど量を飲まなければ、思ったほど太りやすいお酒ではありません。
健康を意識する方の中で、「ビールよりハイボール」といった考えが普及したのも、この蒸留酒のアルコールあたりの摂取カロリーの低さがあると思われますが、ワインはそれに近いカロリーになっています。

ただ、お酒を飲むことで太ることの理由の一つに、一緒に食べる食事の影響も大きく語られています。どんなお酒を飲んでいても、おつまみをたくさん食べれば、その分太ってしまうのは当然とも言えます。ただ、ビールを何杯も飲んだり、甘いカクテルやジュース割りを飲むよりは、ワインはカロリーを抑えやすいお酒です。

また、実は摂取カロリーに関して言えば、冒頭でお伝えしたブドウジュースとワインはほぼ同程度のカロリーになります。ワインになる過程で糖分がアルコールに変わっているわけですが、結局アルコールとしてカロリーを摂取しているので大きく変わらないわけです。ただ、糖質として摂取しているわけでは無いので、ジュースのような血糖値上昇はありませんので、そこはご安心ください。


まとめ

さて、今回はワインの効能についてお話してみました。
念のためお伝えしておきたいのは、どんなにワインの健康効能が語られていても、アルコール自体が身体にとって有用だという話はどこにもないということです。これはワインに限った話ではありません。

そして何事もやりすぎは禁物で、たとえアルコールではなく健康的な成分であっても、過剰な取りすぎは結果として毒になることもあります。健康には何事もほどほどが一番というわけです。

健康に悪い影響のない量の目安としては、アルコール度数12%のワインを1杯約150mLとして、女性で1日1杯まで、男性で1日2杯までとされています。「結構飲めるんだ」と感じた方も、「少ない!」と思った方もおられるかもしれません(笑)。
人それぞれアルコール耐性も違いますから、皆さんがそれぞれに合った形で「自分のほどほど」を見つけて、お酒を楽しむのが一番だと思っています。でもその中で、ワインをという魅力あるお酒をパートナーに選んでいただければ、私も嬉しく思います。

ちなみにワイン業界ではしばしば、「ワイン好きには若く見える人が多い」という話が出ます。実際に私も仕事で様々な場所に赴いて、色々な方とワインをご一緒させていただく機会があるのですが、実年齢を聞いてびっくりすることがあります。ただ、これはここまでのお話と違ってなんのエビデンスもありませんので、ご参考までに……。

監修

牧野 重希(まきの しげき)

吉祥寺の老舗イタリアン、リストランテ イマイのシェフソムリエ。2007年、料理人を志しリストランテ イマイに入社。2010年よりセコンドシェフとして従事。料理を学ぶなかでワインの魅力に惹かれ、お客様へのより良いサービスとワインの提供を目指し、接客に転向。
2023年からWEBサイト「ちょっとまじめにソムリエ試験対策こーざ」の講師に着任。
RISTORANTE IMAI:http://www.ristoranteimai.com/

  • ・2013年 ソムリエ取得
  • ・2017年 ソムリエ・エクセレンス取得
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