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読むだけで美味しくなるワインの話 (第30回これだけ知れば十分! ワインラベルの見方)

食べる

ワイン売り場で何を選べばいいか困ってしまう方へ

今や、スーパーや酒屋さんはもちろんのこと、コンビニすらワインがズラッと並んでいる世の中になりました。ただ、そのワイン売り場の前に立った時に、こんな気持ちになったことがあるのではないでしょうか。

「どれも同じように見える」
「名前が読めない」
「失敗したら嫌だな……」

ワインはいまだ「知っている人の飲み物」というイメージが強く、そのラベルはワイン入門者にとって、決してやさしい内容ではないですよね。各販売店もそんな状況を理解しているので、なるべく消費者に寄り添ったポップを作りワインを紹介してくれています。それでも、「少しでもいいから自分でワインのラベルが読めたらいいな」と感じている方に、今回のコラムをお届けしたいと思います。

本来、ワインは日々の食事と一緒に楽しむ飲み物なので、難しい知識を知る必要はありません。それでも「分かると楽しい」、それがワインの長所でもあります。
今回のコラムでは、「ワインのラベルは、結局どこを見ればいいの?」という疑問に、できるだけやさしくお答えします。ワインを「選べるようになる第一歩」を、一緒に踏み出してみましょう。

実は表記にルールがあるワインラベル、ここだけ見よう

ワインのラベルというと、デザインや雰囲気ばかりが目に入りがちですが、実はとても真面目で実用的な情報が詰まっています。もちろん「ジャケ買い」なんて言葉があるように、そのときの気分で決めるのも楽しいのですが、今回はその実用的な情報を見ていきましょう。

まず、ヨーロッパのワインについてです。ヨーロッパのワインは、EUの法律に基づき、表示内容が厳しく定められています。国によって細かな違いはありますが、まずは代表的なものだけ取り上げてみます。その主な記載項目は以下のとおりです。

  1. 原産地
  2. 生産者、または瓶詰め業者
  3. カテゴリー(スパークリングワインなど)
  4. アルコール度数
  5. 内容量
  6. 日本への輸入者名

ラベルは架空のものです。

などです。

ちなみに、近年EUでは、栄養素表示やアレルゲン表示なんていうものまで新たに義務化されました。

さて、こうやって分類してみると、実は大事な項目は限られてきます。
「日本への輸入業者名」はインポーターシールという形で輸入されたワインに必ず貼ってあるので、見たことのある方も多いでしょう。ただ、「どこが輸入したのか?」という情報は、やや熟練者向けの情報です。同じように「誰が造ったのか?」という生産者名も幅広い知識を求められますので、最初は置いておきましょう。

初心者の方はまず、カテゴリー、原産地、アルコール度数に注目してください。
泡、白、赤といったカテゴリーは、そんなに悩まないかもしれませんが、「原産地」と「アルコール度数」はワインの中身を知るのにとても重要な情報です。「原産地」については少し奥が深いので、この後もう少しゆっくり解説します。ここではまず「アルコール度数」について少しお話しします。

アルコール度数の高さは、そのワインの原料になったブドウがどれだけ良く熟していたかという証になります。お酒全般に言えることですが、アルコールは糖分を分解することで造られますので、アルコール度数が高いということは、ワインの元になった果汁がとても甘かったことを意味しています。つまり、とても暖かい産地で造られたのかもしれませんし、ブドウが良く熟すような温かい年に造られた可能性もあります。

どちらにせよ、アルコール度数が高いということは、力強く厚みのあるワインである可能性が高く、逆にアルコール度数が低いワインは、軽快でスッキリした印象のワインだということです。このことを知っているだけでも、自分が買いたいワインに近づけるのではないでしょうか。

まず覚えたい、ヨーロッパと新世界の大きな違い

さて、ここから「原産地」についてお話します。ただ、「原産地」のお話に入る前に、まず知っておいて欲しいのが、旧世界と呼ばれるヨーロッパ諸国と新世界(それ以外の国)のラベルの違いです。 どんな違いがあるかを簡単にお伝えすると、ヨーロッパのワインは「土地」が主役、新世界のワインは「ブドウ品種」が主役ということです。 旧世界・新世界については、以前第4回第5回第6回で詳しくご紹介しているので参考にしてみてください。

フランス、イタリア、スペインなど、長い歴史を持つヨーロッパのワインは、どこで造られたかをとても大切にしています。そのため、「ワインの名前=産地の名前」になっていることが多くあります。皆さんも聞き覚えのあるフランスの「ボルドー」や「ブルゴーニュ」、「シャンパーニュ」も、イタリアの「キャンティ」や「バローロ」も全て産地の名前です。

これは、「土地の個性が、そのままワインの味になる」という考え方に基づいていて、逆に言えば、ブドウ品種が書いていなくても、「産地が分かれば味の方向性が想像できる」ということでもあります。ヨーロッパで「原産地」をラベルに書くことで、そのワインに使われるブドウ品種はもちろんのこと、どこで収穫され、どのような作り方をされたかまでを示す意味を持ち、これはワイン造りが明確に規制されているがゆえに、成り立っています。

一方で、ヨーロッパから主要なブドウ品種を持ち込んで栽培した歴史をもつ新世界ワインは、「ブドウ品種」が主役です。もちろん新世界でも「原産地」は大事にされているのですが、「ブドウ品種」がわかりやすく併記されているのが、ヨーロッパとは違う点です。ワイン売り場に行ったときに、ぜひラベルを見比べてみてください。チリ、オーストラリア、アメリカなどのワインは、ブドウ品種を前面に出すスタイルになっているはずです。

「シャルドネ」「ピノ・ノワール」「カベルネ・ソーヴィニヨン」など、聞いたことのある名前が分かりやすく記載されている新世界のワインは、味のイメージがしやすく、初心者向きとも言えます。迷ったら、まず新世界のワインで「品種の違い」を楽しむという選び方も、とてもおすすめです。

ある程度品種の違いを知った後で、
例えば

(産地)シャブリ → (品種)シャルドネ
(産地)ボルドー → (品種)カベルネ・ソーヴィニヨン中心のブレンド
(産地)ブルゴーニュ → (品種)ピノ・ノワール

といった具合に、ヨーロッパの産地名と品種とのつながりを知っていくと、益々ワインが楽しくなるでしょう。
また、品種までしっかり知ろうとしなくても、自分が好きな「原産地」はどこかを感じることも、とても良いワインとの接し方だと思います。
前述の通り、ヨーロッパにおいて「原産地」は、そのワインの全体像に大きな影響を与えていますので、この産地のワインが好きだなぁと思ったら、あなたの好みに合っているのかもしれません。

皆さんがそれぞれに、自分の好きな「原産地」や「ブドウ品種」をラベルから探し出し、「好みのワインを探す楽しみ」を感じてみてください。

ブルゴーニュのラベルが読めるとワイン通?

世界のワインラヴァ―の心をつかんで離さない産地「ブルゴーニュ」。このブルゴーニュのラベルが読めるようになると、ワイン通の仲間入りをしたと言ってもいいかもしれません。せっかくなのでこの機会に、そのブルゴーニュのラベルの読み方を、ちょっとだけ勉強してみましょう。

さて、初心者にとって、ブルゴーニュのラベルは難しく感じることが多いのですが、それには理由があります。
まず、ブルゴーニュと同じくらい有名なボルドーは「シャトー(生産者)」を軸にワインのラベルが表記されています。よく目にする「シャトー・○○」というやつです。ワインの中身もシャトー(生産者)による特徴が反映される部分が大きいので、「誰が造ったワインなのか?」を知るだけで、ある程度ワインを理解できるので、頭に入ってきやすいという特徴があります。

それに対してブルゴーニュのワインが決定的に違う所は、色々な生産者が、同じ名前のワインを数多く造っているという部分です。そこがブルゴーニュの理解を難しくしている理由なのです。

まず知っておきたいのは、例えばGevrey-Chambertin(ジュヴレ・シャンベルタン)のようなブルゴーニュの代表的なワインの名前は、「産地の村の名前」を表しているということです。そして、その村には多くの生産者がいるため、同じ村名のワインが複数存在することになります。これは「新潟県産コシヒカリを、さまざまな農家が作っている」というイメージです。
さらにブルゴーニュでは、その「村名」の下に「畑名」が書かれていることが多く、畑名付きのワインは、より限定された優れた区画のブドウから造られています。これは「魚沼産コシヒカリ」に近いイメージです。
重要なのは、先ほどの村名の話と同じで、一つの畑を複数の生産者が分け合って所有しているケースが多いことです。だから、同じ村、同じ畑ででも生産者の違う沢山のラベルが存在することになります。

さらに、特に優れた畑はGrand Cru(特級畑)として格付けされ、畑名だけでワイン名が成立します。日本では実際にそんなことは無いのですが、魚沼産コシヒカリの中でも特に評価の高い南魚沼・塩沢地区のコシヒカリの商品ラベルに、新潟産や魚沼産といった記述をしなくても、「塩沢」と書くだけで商品名が成立してしまうイメージです。
この場合も、同じ畑を複数の生産者が所有していれば、その数だけワインが存在します。
つまりブルゴーニュでは、

  • 村名のワインがある
  • 畑名付きのワインがある
  • 特級畑は畑名そのものがワイン名になる
  • 同じ名前でも生産者が違えば味も価格も異なる

という構造になっています。

ちょっと難しかったでしょうか。
最初は有名な村名を覚えるところから始め、次に特級畑へ興味を広げるのがおすすめです。ただし、最終的にブルゴーニュのワインにおいてとても大切なのは、「どこで造られたか」以上に「誰が造ったか」です。
ブルゴーニュのワインは、人(生産者)によって味が大きく変わるワインであるため、これが先ほど、「生産者」の情報は熟練者向けといった理由でもあります。

まとめ

難しい話もしてしまいましたが、ワインのラベルのお話はいかがでしたでしょうか。少しでも皆さんのワイン選びのヒントなれば幸いです。
最初から、全てを覚える必要はありません。今日は産地を見てみる。次は品種を見てみる。アルコール度数で選んでみる。そんな感じで、ご自身のペースに合わせてゆっくり進めてみてください。
ラベルが少し読めるようになると、ワイン選びは「不安」から「楽しみ」に変わっていきます。ラベルを通してあなたとワインの距離がぐっと縮まり、より豊かなワインライフが送れるようになることを願っています。

監修

牧野 重希(まきの しげき)

吉祥寺の老舗イタリアン、リストランテ イマイのシェフソムリエ。2007年、料理人を志しリストランテ イマイに入社。2010年よりセコンドシェフとして従事。料理を学ぶなかでワインの魅力に惹かれ、お客様へのより良いサービスとワインの提供を目指し、接客に転向。
2023年からWEBサイト「ちょっとまじめにソムリエ試験対策こーざ」の講師に着任。
RISTORANTE IMAI:http://www.ristoranteimai.com/

  • ・2013年 ソムリエ取得
  • ・2017年 ソムリエ・エクセレンス取得
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