桃の節句には、祝い寿司とはまぐりの潮汁
3月には、女の子の健やかな成長と幸福を願う桃の節句があります。旧暦の3月3日は桃の花が咲く季節。古来から桃には魔除けの力があるとされており、五節句の一つ、上巳(じょうし)の節句は、桃の節句と呼ばれるようになりました。ひな人形を飾る風習があるため、今では「ひな祭り」と呼ばれるほうが一般的です。ひな祭りを祝うための定番料理といえば、だしの利いた、はまぐりの潮汁。同じく定番メニューのちらし寿司とも相性がよく、女の子の幸せを願うごちそうとして、ひな祭りの食卓を華やかに彩ります。
縁起物の貝は丁寧な下処理でより美味しく
はまぐりの貝殻は良縁や夫婦和合の象徴
そもそも、なぜひな祭りにはまぐりの潮汁を食べるようになったのでしょうか。二枚貝のはまぐりは、対になった貝殻としかぴったり合いません。ほかの貝殻と合わせても、隙間ができてしまうのです。このことから、はまぐりは自分とぴったり合うただ一人の人と出会い、生涯を添い遂げるという、良縁や夫婦和合を意味する縁起物になったそう。
また、平安時代に貴族の間でははまぐりの貝殻を合わせる貝覆い(かいおおい)という遊びが行われていました。「源氏物語」などの絵を描き、対になる貝殻を探す貝合わせに進化したのは江戸時代のようです。はまぐりの潮汁で使った貝殻に絵を描いて、オリジナルの貝合わせを楽しむのもよいかもしれませんね。

はまぐりは砂抜きをしっかりと
はまぐりの潮汁を作るときは、食感をよくするために砂抜きをしっかりと行いましょう。市販のはまぐりは、ある程度砂抜きされていることが多いですが、念のため自宅でも行います。バットなどの平たい容器にはまぐりを並べ、海水くらいの濃度の塩水(600ccの水に対して塩大さじ1が目安)を注ぎ入れ、3時間ほど置いておきます。新聞紙などをかぶせて暗い場所に置いておくと、砂を吐き出しやすくなります。

砂抜きが終わったら、殻と殻をこすり合わせて洗い、表面の汚れを落としましょう。味を整えて器に盛り付けるときは、みつばを飾って彩りよくします。薄切りのうどを合わせると、より春らしく仕上がります。
ウキウキと心湧き立つ季節がやってきます。ひな祭りのお祝いはもちろん、日常の食卓でも、はまぐりの潮汁で春の訪れを感じてみてはいかがでしょうか。
監修

橋本 加名子さん料理研究家、栄養士、フードコーディネーター
海外留学、商社勤務時代からアジア料理や江戸懐石料理を学び、独立。料理教室「おいしいスプーン」主宰。『フライパンひとつで!失敗しない中華・アジア』(タツミムック)など著書多数。
取材・文/佐藤望美
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