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暮らしを楽しむ にほんの食ごよみ(第8回「重陽の節句」)

食べる

菊を愛でながら長寿を願う

9月9日は重陽の節句。菊の花を鑑賞したり、菊酒を飲んだりして無病息災や不老長寿を願う行事です。実は日本の五節句のひとつなのですが、知名度があまり高くないのは改暦で日程と菊の開花時期がずれてしまったせいだともいわれています。

重陽の節句は、もともと中国から日本に伝来した行事。中国の陰陽思想において数字は偶数が陰、奇数が陽とされ、9は陽数です。それが重なっている9月9日は縁起がよいということで、年中行事として行われるようになりました。また、菊は優れた薬効を持つと重宝されてきた植物。長寿を願う節句にふさわしく、栄養面でも優れています。食用菊はスーパーマーケットでも手軽に買えるので、食卓にぜひ取り入れてみてください。


さっと火を通して彩りと香りを楽しむ

酢水につけると、より色鮮やかに

食用菊をいただくなら、彩りを生かした小鉢はいかがでしょうか。だし、しょうゆ、みりん、塩をひと煮立ちさせた合わせ地と和えたり、酢の物にするのがおすすめです。香りを損なわないためにも、菊はさっと火を通す程度に(熱湯に入れたらすぐ取り上げるくらい)。水気を切って酢水につけておくと、鮮やかさがより際立ちます。

青菜を加えるなら、春菊を。同じキク科のため相性がよく、菊の鮮やかな黄色をさらに引き立ててくれます。菊、春菊ともに抗酸化作用があり、ビタミン群も豊富です。9月は暦のうえでは秋ですが、気温も高く、夏からの暑さで体に疲れがたまっている時期。知らず知らずのうちに負担がかかっている体は、こうした薬効食材でいたわってあげたいですね。

料理にさっと散らすだけで食卓が華やぐ

シャキッとした歯ざわりと発色の良さが魅力の食用菊。小鉢だけでなく、他の料理にも積極的に取り入れたいものです。最も手軽で簡単なのは、サラダに散らすこと。他にも焼き魚につける大根おろしに添えたり、ちらし寿司の仕上げに使ってみたりと、使い道はさまざま。食べすぎなければ生のままでも問題なく、仕上げ段階で加えるほうが色彩を保ちやすくなります。

菊の薬効で体をいたわりつつ、季節の味を味わいたいものですね。

監修

橋本 加名子さん料理研究家、栄養士、フードコーディネーター

海外留学、商社勤務時代からアジア料理や江戸懐石料理を学び、独立。料理教室「おいしいスプーン」主宰。『フライパンひとつで!失敗しない中華・アジア』(タツミムック)など著書多数。

一部写真提供/PIXTA
取材・文/佐藤望美

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