「ワインについて詳しくなりたい」と思っても、ワインの世界は複雑で難しそうというイメージがありませんか? そこで、ワインにまつわる様々なことをシニアソムリエが優しいアプローチでお教えします。読むだけでワインが美味しくなるようなコラムを、どうぞ召し上がれ。
失敗しないワイン選びのために
赤ワイン編でも一部ご紹介しましたが、ブドウ品種は数多くあります。名前と特徴を覚えようとすると、難しいものです。こちらでは前回は赤、今回は白とそれぞれの代表的な品種をご紹介しているので、まずはそれぞれの特徴を読み、その中から「これは自分の好みに近そう」と思う品種のワインを飲んでみてください。「好き」から始めた方が、美味しく楽しく知識も吸収されますよ。そこからさらに、もっとこんな後味がいいななど細かな好みが出てきたら、お店でソムリエに相談してみると良いでしょう。ご自分の好みの品種をぜひ見つけてください!
すっきりだけじゃない、白ブドウの世界
前回のコラムでは、赤ワインの原料となる黒ブドウについてご紹介しました。今回は、白ワインの原料となる白ブドウの中からシャルドネ、ソーヴィニヨン・ブラン、リースリング、甲州、ゲヴェルツトラミネールの5種類をご紹介します。
産地によって個性を変える懐の深さシャルドネ
シャルドネは他の品種に比べて強く栽培しやすい品種であるため、世界のあらゆる場所で栽培されています。良い意味で個性を主張しないブドウ品種であるため、ブドウの特徴よりも産地の特徴がよくワインに表れます。産地の特徴というと、例えばフランスのシャブリのような冷涼な土地ではドライで落ち着きがあり、キリッとした酸味が感じられるテイストになります。反対にアメリカ・カリフォルニアのように暖かな土地では、とてもふくよかで豊かな果実味を感じるワインになります。
また、樽で熟成することが多いのもシャルドネの特徴です。白ワインは、樽の香りが加わるとブドウの個性を損なうことがあるため、ステンレスタンクで醸造することが多いのですが、シャルドネは樽熟成により複雑さを増すことから、醸造段階でも手の入れ甲斐があるブドウといえるのです。是非色々な産地のシャルドネを飲み比べてみてはいかがでしょうか。
ハーブの爽やかさと豊かな香りが特徴ソーヴィニヨン・ブラン
ニュージーランドは、生産するブドウの7割近くがソーヴィニヨン・ブランというほどの名産地です。このブドウは“アロマティック”なブドウ品種ともいわれ、白ブドウの中でも香りがとても豊かで爽快です。まず感じられるのが、爽やかなハーブの香り、それからフルーツの香りが強いのも特徴的です。
ハーブの香りをより具体的に表現すると、草っぽいや下草の香りと言うとわかりやすいのではないでしょうか。
フルーツの香りは、産地の気候に比例して変わります。フランス・ロワール地方のような冷涼な土地では、レモンやライム、グレープフルーツのような酸味のある柑橘の香りが中心です。反対にニュージーランドのような日照豊かな暖かい産地ではトロピカルフルーツの香りが中心で、特にニュージーランドのワインはパッションフルーツのような香りがしっかりと感じられます。 夏にぴったりのフルーティーかつ清涼感のあるブドウ品種です。
お花の香りと黄色い果実の柔らかさリースリング
リースリングは、ドイツ原産の白ワイン用ブドウ品種です。お花の香りがしっかりと感じられるワインで、辛口のすっきりしているタイプでも、黄桃やアプリコットのような黄色い果実の風味があり、柔らかく滑らかな口当たりです。感じられる花の香りは産地によって違い、白いアカシアのような香りや、金木犀のような熟した香りなどさまざまです。その他、リースリングで特徴的なのは、若干感じられるオイルのような香りです。ペトロール香などともいいますが、醸造の過程でほんのり石油のような香りが現れ、良い生産者はこの香りを奥深さに変えて良いワインを造ります。
味わいとしては、甘みのあるものから甘みを抑えたものまで幅広く造られていますが、全体的に柔らかい印象で、華やかな香りのあるすっきりとした白ワインとなります。
世界が認めた、日本固有のブドウ品種甲州
2010年に国産のブドウ品種で初めてOIV(国際ブドウ・ワイン機構)に登録された甲州。1000年以上の歴史を持つとされる甲州は、落ち着きのある、和を感じさせるワインです。基本的にはすっきりと軽やかで、和食との相性も抜群。香りには少し日本酒の吟醸香のようなフルーティーさがあります。
日本で一番日照時間が長く、雨が少ないといわれる山梨県北杜市にある明野の三澤ワイナリーで造られた「キュヴェ三澤 明野甲州」というワインは、世界最大級のワインコンクールで、日本初の金賞を受賞しました。
いまや世界でもその名が知られるようになった甲州ワインは幅広く造られており、樽熟成のものや、オレンジワインに近いような果皮の色合いを抽出したものと色々なラインナップがあります。世界にも認められた日本固有のブドウ品種は、これからもっと面白くなりそうです。
ライチの香りが印象的な、世界で造られるブドウ品種ゲヴェルツトラミネール
ゲヴェルツトラミネールの「ゲヴェルツ」とは「スパイス」という意味を持ち、その分かり易い香りが特徴です。とても豊かでフルーティーなまさにライチの香りがするため、ライチの香りを感じたら、ほぼこの品種といえるくらいです。味としては果実味からくるしっかりとした甘さがあり、香り通りの豊かなフルーツの風味、そしてコクをともなう若干の苦みを持つ品種です。また、果皮が肉厚で灰色を帯びたピンク色をしているため、通常の白ワインよりもやや色が濃く黄金色をしています。
一般的にはあまり知られていない品種ではありますが、フランスを中心に世界各地で造られています。スーパーのワインコーナーでチリワインの中に、ゲヴェルツトラミネールで造ったワインを見かけることもあります。
好みに合うとはまってしまう個性の強い品種です。
白ワインにも、奥深いブドウの世界があるのです。その日のお料理や好みに合わせて、自分に合いそうなワインを選んでみてはいかがですか?
監修
牧野 重希(まきの しげき)
吉祥寺の老舗イタリアン、リストランテ イマイのシェフソムリエ。2007年、料理人を志しリストランテ イマイに入社。2010年よりセコンドシェフとして従事。料理を学ぶなかでワインの魅力に惹かれ、お客様へのより良いサービスとワインの提供を目指し、接客に転向。
2023年からWEBサイト「ちょっとまじめにソムリエ試験対策こーざ」の講師に着任。
RISTORANTE IMAI:http://www.ristoranteimai.com/
- ・2013年 ソムリエ取得
- ・2017年 ソムリエ・エクセレンス取得
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