イラスト/山口絵美
退職金や保険の満期金、相続などで百万単位、千万単位のお金を手にすることがあります。大きな金額だけに「何に使おう」「もっと増やしたい」と気持ちが大きくなることもあるでしょう。しかし、大きなお金だからこそ、焦って失敗しては大変です。これからの人生を見据えて上手に守りながら、使い方についても考えておきたいところです。今回は、そのヒントをお伝えします。
「金利の高さ」だけで飛びつかず、預け先を選ぶ前に金利の差を計算
まとまったお金を手にした際に、まず考えたいのが「どこに置いておくか」です。置き場所として銀行が選択肢に上がると思いますが、その際にも注意点があります。銀行では、まとまったお金を預ける人向けに、通常より高い金利を設定した定期預金が用意されていることがあります。「金利が高いならお得」と思ってしまいそうですが、注意したいのが、その金利が適用される“期間”です。3カ月など短期間のケースも多く、その期間だけは金利が高くても、その後は普通預金になるものもあります。高い金利だけに注目せず、金利がいつまで適用されるのか、事前に確認しましょう。
とはいえ、まとまったお金の場合、金利の違いは決して小さくありません。例えば3,000万円を1年間、金利1%で預けた場合、単純計算で利息は30万円になりますが、金利0.3%なら9万円で、その差は21万円です(いずれも税引前)。もちろん、金利だけを見て預け先を決める必要はありません。ただ、預ける金額が大きくなるほど、わずかな金利の差でも受け取る利息に大きな違いが出るため、1年間や3年間などで受け取れる利息の差を計算してみましょう。退職金などを受け取る予定がある人は、受け取ってから慌てて決めるのではなく、事前に複数の金融機関の金利や条件を調べておくと安心です。
ただし、預金先を選ぶ際には注意しておきたいことがあります。それは、一つの金融機関に預ける金額です。万が一銀行が破綻した場合、預金保険制度によって保証されるのは、原則として一つの金融機関につき、一人あたり元本1,000万円とその利息までだからです。1,000万円を超える預金を予定している場合は、必要に応じて複数の金融機関に分けて預けることも検討しましょう。
「ひとまず置いておく」ことも選択肢に
大きなお金を受け取ると、「せっかくだからもっと増やしたい」「投資にチャレンジしたほうがいいかな」という気持ちが出てくるかもしれません。しかし、投資初心者の方が焦って投資を始めると、失敗してしまうことがあります。まずは、いくつかに分けて1年ものの定期預金などに預けておき、時間をかけて考える方法があります。すべてを一度に動かさず、何にいくら使うのか、いつ必要になるのかを整理していくのです。人生90~100歳くらいまでと想定して、それまでの年数を考えたうえで、「老後の生活費」「住宅の修繕」「旅行」「子どもや孫への援助」など、これからの人生で使う予定を考えておけば、投資にまわせる金額も見えてきます。大切なのは、まとまったお金を受け取った際に、「すぐに何かを買おう」「すぐに投資しよう」と考えないことです。一度安全な場所に置き、考える時間を作ることも、お金を守るための大切な選択です。
投資をするなら分散して少しずつ
物価高が続く昨今、リスクはありますが投資も少しずつ考えたい時代です。「投資は怖い」「残りの人生、安全に、堅実にいきたい」と考えて全額を預貯金しておきたい人もいるでしょう。ただ、例えば60歳でお金を受け取ったとしても、90歳まで生きる場合は30年という長い時間があります。リスクを考えると受け取ったお金すべてを投資にまわすことは避けたほうが賢明ですが、その長い時間を味方につけて、一部の資金で投資をすることは選択肢として有効です。今後、仮に2%ずつ物価が上がっていくとすると、全額の1%ほどを定期預金に預けた場合に、持っている資産の実質的な価値が目減りしてしまうからです。一方で、高齢になってから投資を始めた場合、大きな損失を抱えると現役時代のように収入やボーナスで補うことが難しくなります。投資する場合も、最初から大きな金額を投入せず、少額でじっくり始めるなど、無理のない方法を考えたいところです。
また、何か一つの銘柄に集中投資をするのではなく、幅広く分散投資できるインデックス型の投資信託を選んで積み立て投資をするなど、投資先や時期を分散することも大切です。投資信託を購入する際には、生活費や近い将来に使う予定のお金まで投資にまわさないようにしましょう。「このお金が一時的に減っても生活には困らない」と思える範囲にとどめることが賢明です。
まとめ
まとまったお金を手にしたときは、金利の差や高金利の適用期間を確認したうえで預け先を決め、投資も視野に入れたうえで使い方を考えましょう。そして、大きなお金を手にしたことを周囲に話しすぎないことも大切です。お金を持っていることを知られてしまうと、詐欺などの犯罪に巻き込まれる可能性もあります。大きなお金を手にしたときこそ、慎重に。そのうえで、「どう増やそう?」と焦るのではなく、まずは「このお金を今後の人生でどう生かしていこう?」と考えてみましょう。早々に使い切ってしまうことのないように、計画的に使いたいところです。
「増やす」「守る」「使う」「残す」、この4つをバランスよく考えながら、これからの人生に必要なお金の置き場所や使い方を選び、自分や家族にとってより豊かな人生につなげていきたいですね。
プロフィール

西山 美紀ファイナンシャルプランナー・コラムニスト
単に貯蓄額を増やすのではなく、日々にうるおいをもたらせてくれるようなお金の使い方・貯め方・増やし方について発信中。取材・コラム執筆・記事監修・講演等を行う。お金や心、幸せなどの研究をするため、現在早稲田大学人間科学部健康福祉科学科(eスクール)で学んでいる。
著書に『お金が貯まる「体質」のつくり方』(すばる舎)のほか、『お金の増やし方』(主婦の友社)等。
画像提供/PIXTA
「暮らし」⼀覧へ戻るHOUSING NEWSハウズイングニュースとは
私たち日本ハウズイングと、 管理マンションにお住まいの皆さまをつなぐコミュニティマガジンです。
