「年金だけでは不安」「外出時や生活の負担を減らしたい」——そんなシニアの暮らしをサポートする助成金が、実は数多くあります。例えば、タクシー代や銭湯の入浴料、スマートフォンの購入費など。ファイナンシャルプランナーの舟本美子さんに、知っておきたい制度と活用するポイントを教えてもらいました。
新年度は助成金の“更新タイミング”。知らないと使いそびれることも
助成金は特別な人が使うものだと思われがちですが、実際には、日常生活に密着した様々な制度があります。ただし、これらの多くは案内が届くわけではなく、自分で調べて申請する“自己申請”が基本。そのため、制度の存在を知らないまま使いそびれてしまうケースも少なくありません。
また、意識したいのは新年度というタイミングです。多くの助成金は4月から翌年3月までの年度単位で運用されており、新年度が始まる時期に制度内容が更新され、予算もリセットされます。そのため、年度始めはそれまでになかった新たな制度を発見する絶好のチャンス。条件を満たしていれば、スムーズに利用できる可能性が高い時期です。気になっていた制度がある人はもちろん、「そもそも何があるのか知らない」という人も、これを機に一度チェックしてみましょう。
シニアにうれしい、暮らしに直結する助成金
シニア向け助成金の中でも特に活用しやすいのが、日常生活に直結する次の3つです。
タクシー利用料金助成金
自治体によっては年間数千円〜1万円以上のタクシー券が支給されることがあり、免許返納後の移動手段として重宝されています。また、タクシーに限らず、バスや鉄道の定期券・回数券の購入費を補助する制度もあり、生活スタイルに応じて選べるのも特徴です。主な対象者は満70歳以上や免許返納者が中心ですが、所得制限がある場合もあります。
- 調べ方:「〇〇市 高齢者 外出支援」「〇〇市 シルバータクシー」などで検索
- 申請先:市(区)役所の「高齢者福祉課」や「地域包括支援センター」
- 必要書類:本人確認書類(マイナンバーカードなど)、所得証明書(必要な場合)
例えば、福岡県福岡市では、「高齢者乗車券」というものがあります。
年間最大1万2,000円分の助成券で、バス・鉄道共通のICカードへのポイントチャージか、タクシー券、福祉乗車券など希望のものを1種類選ぶことができます。主な対象者は満70歳以上、介護保険料所得段階区分が1~7の人です。
公衆浴場の入浴助成
銭湯を無料、あるいは100円程度で利用できる回数券や助成証が交付される制度で、健康維持だけでなく、地域の人の交流の場としても活用されています。年間数十回分の入浴券が配布される自治体もあり、外に出るきっかけとしての役割も担っています。
- 調べ方:「〇〇市 敬老入浴」「〇〇市 銭湯 助成」などで検索
- 申請先:市(区)役所の「高齢福祉担当窓口」
- 必要書類:介護保険証、マイナ保険証、資格確認書、健康保険証(2026年7月31日まで)などの「年齢と住所」がわかるもの
例えば、東京都千代田区では、「敬老入浴券」というものがあります。区内の公衆浴場ならびに区が指定した区外公衆浴場を無料で利用できるチケットを年間最大44枚交付しており、満65歳以上で利用を希望する区民が対象です。
スマートフォン購入補助
デジタル格差の解消を目的に、端末代や契約費用の一部が補助され、最大で2〜3万円程度の支援が受けられる場合もあります。初めてスマートフォンを持つ人や講習会の受講が条件となるケースが多いため、家族と一緒に進めると安心です。
- 調べ方:「〇〇市 スマホ購入補助金」「〇〇市 デジタルデバイド対策」などで検索。スマートフォンの販売店でも詳しい話を聞くことができる
- 申請先:市(区)役所の「デジタル推進課」や「高齢者支援課」
- 必要書類:本人確認書類(マイナンバーカード、運転免許証など)、本人名義の通帳またはキャッシュカードなど。それ以外に、補助金交付申請書、スマートフォン購入確認書、契約書、領収書などの写しも必要になる。自治体ごとに確認が必要。
例えば、東京都では、購入費用の最大3万円を補助しており、2025年度より上限額が拡充され、全国トップクラスの手厚さになりました。申請条件や申請期間は、実施する市区町村ごとに異なりますが、主に満65歳以上のスマートフォン未所有者が対象となっています。
このほかにも、住宅の手すり設置の改修費を支援したり、補聴器の購入費助成、詐欺対策の電話機補助、エアコン設置費の支援、配食サービスや見守りサービスの補助など、暮らしを支える制度は幅広く用意されています。ご自身が住む地域の自治体にどんなものがあるか、ぜひ調べてみてください。
助成金を使うことが制度を動かすことにつながる
助成金を活用するうえでは、条件が設けられている場合があります。所得制限や世帯条件がそれに当たり、「年齢を満たしていれば誰でも利用できる」というわけではありません。事前に対象条件を確認することが重要です。
また、助成金は年度ごとの予算で運用されるため、申請期限にも注意が必要です。気になる制度があれば、できるだけ早めに確認しておくと安心です。
また、制度を見つけるためには探し方にもコツがあります。Webでの検索や自治体のホームページに加えて、町内会の回覧板や掲示物、市報などに目を通しておくと、思わぬ情報に出合えることがあります。さらに、地域の人との“横のつながり”も重要です。近所の人や知人から「こんな制度があるよ」と教えてもらうケースも少なくありません。
問い合わせ先としては、市(区)役所の高齢者福祉課や地域包括支援センターが基本になりますが、電話での確認が必要になることも多く、「少し面倒」と感じる人もいるかもしれません。しかし、その人の状況に合った制度を教えてもらうことにより、情報の精度は一気に上がるので、電話での問い合わせは助成金活用の第一歩といえます。
そしてもうひとつ大切なのが、「使うことに意味がある」という視点です。助成金は、単に個人の負担を軽くするためのものではなく、利用することで制度の必要性が可視化され、次年度以降の予算や仕組みの継続につながっていきます。つまり、使うことは「自分のため」であると同時に、「地域の制度を動かすこと」にもつながっているのです。遠慮せず、使える制度は積極的に活用していくことが、これからの暮らしを支える一歩になります。
教えてくれた人

舟本美子さんファイナンシャルプランナー
会計事務所に10年勤務した後、14年にわたり、保険代理店や外資系の保険会社で営業職として活躍。FP(ファイナンシャルプランナー)として独立後、顧客一人一人に合ったお金の使い方をアドバイスしながら、心豊かに暮らすための情報を発信。2級ファイナンシャル・プランニング技能士。
情報は2026年5月現在のものです。
取材・文/須川奈津江 写真提供/PIXTAほか
「暮らし」⼀覧へ戻るHOUSING NEWSハウズイングニュースとは
私たち日本ハウズイングと、 管理マンションにお住まいの皆さまをつなぐコミュニティマガジンです。
