整理収納アドバイザー水谷妙子さんが考える、「家族が笑顔になる暮らしの整え方」についてお届けしています。第10回目は水谷さん自身のファッションについて。「子育てが少しずつ落ち着き、おしゃれも楽しめるように。選ぶ服は、年齢と気分に合わせてアップデート」をテーマに、水谷さんの服の持ち方、選び方についてご紹介します。
目次
- ポイント① 毎日違う服を着るのが当たり前だった20代、子育てしやすい服ばかり着ていた30代
- ポイント② 40代の自分に似合う服を知るために、パーソナルスタイリングを活用
- ポイント③ 周囲からどう見られたいか、おしゃれをどう楽しみたいか。自分の思いも大事にしながら服を選ぶ
- ポイント④ 環境と気持ちの変化を受け入れて、新しい自分を楽しむ
- ポイント⑤ クローゼットは一目で見渡せるハンガー収納。管理できる範囲の数だけ持つ

ポイント①毎日違う服を着るのが当たり前だった20代、子育てしやすい服ばかり着ていた30代
水谷妙子さんは現在42歳。中学生になった娘さんと、小学生の息子さん2人を子育て中です。社会人として働き、母となる過程で、身にまとうファッションも大きく変化をしてきたといいます。
「20代の頃は、毎日違う服を着て通勤しなければならないと思い込んでいました。当然、服の数は増えるばかりで、クローゼットもいつもパンパン。それが当たり前の生活だったんです。」

ところが30代に入り、整理収納の考え方に出会ってから、クローゼットは一変しました。多くのアイテムを手放した結果、服の出し入れがしやすくなり、一目で全体を見渡しやすくなったのです。
服のテイストも変わっています。

「30代は子育てが最優先の毎日でした。乳幼児との暮らしに合った服が中心で、選ぶ基準は、“汚れてもいい”“公園で一緒に遊べる”“動きやすい”こと。自分をよく見せるというよりも、育児のための“ユニフォーム”のような役割を果たしていたと思います。」
ポイント②40代の自分に似合う服を知るために、パーソナルスタイリングを活用
30代半ばに整理収納アドバイザーの仕事を始めてからは、きちんとして見える服を着る機会が再び増えていきました。

「仕事の日は白いブラウス、と決めることで、迷わずコーディネートできるようになったのはよかった点。でも、プライベート服は別。子育てと仕事で忙しい毎日を過ごす中で、“今の自分にはどんな服が似合うのか”“どう選べばいいのか”を考える余裕はありませんでした。」
なんとなく自分に似合いそうな服、なんとなく好みの服を選ぶ日々が続いていたという水谷さん。そんな中、末っ子が小学生になり、お世話の手が少し離れたここ数年で「ファッションをもう少し積極的に楽しみたい」という思いが少しずつ強くなってきたといいます。
水谷さんがパーソナルスタイリングというサービスを知ったのは、ちょうど「ファッションを楽しみたい」という気持ちが芽生え始めたタイミングでした。パーソナルスタイリングとは、その人の骨格や顔立ち、肌の色、雰囲気などに合わせてスタイリストがコーディネートを提案してくれるサービスです。水谷さんは約1年前から利用し始めました。
具体的には、購入したいアイテムやその用途をスタイリストが事前にヒアリング。その後スタイリストが買い物に同行し、アイテム選びをサポート。具体的なコーディネート提案までしてくれるのだそうです。
「自分の顔立ちや雰囲気、体型などを総合的に見て、どんなタイプの服が似合うのかをファッションのプロであるスタイリストが客観的に判断してアドバイスしてくれます。」

水谷さんがこのサービスを利用するのは、「そろそろ秋物をそろえたい」「フォーマルにも使えるセットアップが必要」「アウターが欲しい」など、大きな買い物が控えているタイミング。利用頻度は特に決めておらず、不定期です。
「買い物時は、いくつものショップを回って試着を繰り返します。スタイリストが提案してくれる服の中には、それまで意識的に避けていたものや、そもそも視界にすら入っていなかったものも。アドバイスをもとに試着を重ねるうちに、自分に似合うシルエットやディテールがだんだん分かってくるようになりました。それまで縁がなかったブランドを知り、視野を広げるいい機会にもなっています。」
ポイント③周囲からどう見られたいか、おしゃれをどう楽しみたいか。自分の思いも大事にしながら服を選ぶ
近年は、オンライン骨格診断やパーソナルカラー診断が手軽にできるようになり、プロに頼らずとも自己分析できる時代になりました。それでも水谷さんがパーソナルスタイリングを依頼するのには、明確な理由があります。

「自分の雰囲気に何が似合うかということはもちろん大事。でもそれ以上に、“私自身は何が着たいのか”“おしゃれをどう楽しみたいか”という気持ちも大事にしたいんです。こうした気持ちの部分を尊重した上で、アドバイスしてもらえること。そこに、パーソナルスタイリングの価値があると感じています。」
例えば、あるトレンドのデザインが自分の雰囲気には合わないと分かっていても、実は少し挑戦してみたいという気持ちが湧くことがあります。そんなときでも、「こんな素材や色なら似合いますよ」というふうに、似合うこととトレンドのバランスを見ながら提案してくれるそうです。
この春は娘の卒業・入学式に着るためのセットアップを選ぶ際にサービスを利用。水谷さんの雰囲気にもシーンにも合う、ノーカラーのネイビーストライプジャケットと同素材のパンツを購入しました。

「ネイビーはきちんとした場にふさわしい色なのですが、私の顔立ちだと、場合によっては少しクールに見えすぎてしまうことも。そんなときは、淡いカラーでメランジ生地(2色以上の糸を混ぜた霜降り調の生地)のジャケットを選ぶと、印象が和らぐと教えていただきました。そのアドバイスをもとに後日ひとりで買い物に出かけ、エクリュカラーのノーカラージャケット(写真下)も購入。買い物に同行して終わり、ではなくて、その後も自分で似合う服を選べるような具体的なアドバイスをもらえるところがとても気に入っています。」
ポイント④環境と気持ちの変化を受け入れて、新しい自分を楽しむ
一般的に、40代のおしゃれは「目立たず無難に」「体型を隠したい」などと守りに入りやすい時期。「シンプルが一番」「いつもと同じでいい」と思ってしまうと、おしゃれを積極的に楽しむことは難しくなってしまいます。
「昔は似合っていたテイストやブランドが、今の自分にもしっくり来るとは限りません。そもそも、好きと思っていたブランドが、自分の体型や雰囲気に本当に合っていたのかどうかも分かりません。だからこそ、変化する環境と気持ちを素直に受け入れることが大事だと思うようになりました。例えば、これまで着ていた服に“何か違うな”と違和感を感じたら、それは“新しい自分”を見つける第一歩を踏み出すサイン。じゃあ、今の自分はどんな服を着たいんだろう?と考えることが、自分らしいおしゃれを見つける第一歩になるはずです。」
ファッションの専門家ではない水谷さんだからこそ、パーソナルスタイリストの力を借りながら、一歩ずつ自分のスタイルを更新しているのです。
最近楽しむようになったアイテムのひとつが、デニムパンツ。
「自分には似合わない、とずっと思い込んでいたんです。でもパーソナルスタイリングで提案されて試着したら、とても素敵に見えて驚きました。以前はスポーツ観戦などの場面でもスラックスを履いていたのですが、少し堅苦しさを感じていたところでした。今ではジャケットにデニムパンツを合わせて、年齢に見合ったきれいめカジュアルを楽しんでいます。」

ポイント④クローゼットは一目で見渡せるハンガー収納。管理できる範囲の数だけ持つ
水谷さんの服が収納されていているのは、寝室にあるウォークインクローゼット。1シーズンの所持枚数は、トップス、ボトムスなど各アイテムごとに5〜10枚程度です。明確に数を決めているわけではなく、クローゼット全体を見渡せて、ラインナップを把握できることを重視しています。収納方法は基本的にはハンガー掛け。
「服をたたむ手間を省きたいんです。それが一番の理由。ニットや薄手のトップスなど、一般的にはたたんで引き出しにしまうようなアイテムも全てハンガーに掛けています。家事の時短が最優先です。」

服のずり落ちや型崩れの心配は、ハンガーを使い分けることで解決。
「塩化ビニル樹脂でコーティングされた、すべりにくい無印良品のハンガー(写真下)を使っています。型崩れの心配のない服には、同じく無印良品のアルミ洗濯用ハンガー(写真右)を使っています。」
また、ボトムスの収納には、タヤのボトムハンガー スマートクリップ仕様(写真左)を愛用。
「ずり落ちにくく、クリップ跡が残りにくい構造になっているところが気に入っています。」

効率や機能性という実用面だけでなく、「おしゃれを楽しむ」という視点を重視するようになった水谷さん。ファッションを通して新しい自分を見つけようとする前向きな姿勢は、ぜひ見習いたいものです。
教えてくれた人

水谷妙子さん
整理収納アドバイザー1級。夫と中学生、小学生の5人暮らし。無印良品で生活雑貨の商品企画・デザインを13年間務め、500点以上の商品に携わる。2018年独立。お片づけ講座開催、雑誌やWeb、テレビなどで活躍するほか、ホームページ「ものとかぞく」 やインスタグラム(@monotokazoku)にて片づけやものについての幅広い知識を紹介中。著書に『水谷妙子の片づく家 余計なことは何ひとつしていません。』(主婦と生活社)、『水谷妙子の取捨選択 できれば家事をしたくない私のモノ選び』(主婦の友社)がある。
撮影/木村和敬(blowup studio) 取材・文/佐藤望美 編集/藤島麻衣子(LINUS)

佐藤望美執筆者
ママファッション誌、ライフスタイルメディアを中心に執筆。得意分野は育児、トラベル、ライフスタイル、ファッション。インテリア、片づけ、ミニマリスト関連の書籍を数多く編集。トラベルエディターとして国内外の旅行取材も多く、子連れ旅情報をまとめたウェブサイト「FOOTABY!」を運営中。自身も小学生の子ども2人の子育てに奮闘中。
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