今回ご紹介するのは7月の年中行事「七夕の節句(7月7日)」です。一年に1回、織姫と彦星が会える七夕の夜、年中行事の中で、最もロマンチックなイベントです。今年の七夕は五色の短冊に願い事を書いて、楽しんでみてはいかがでしょうか。大人も子どもも楽しめる七夕の魅力をご紹介します。
節分や桃の節句、端午の節句など、毎年特定の日に繰り返し行われ、人々の生活との結び付きも強い日本の伝統文化「年中行事」として、毎月色々な意味の行事があることはご存じですか? 年中行事では、豊作を祈り、収穫を祝うだけでなく、厄を祓い、運を良くすることで、家族や自分が健康で幸せに過ごせるようにと願いを込めます。
「年中行事は毎月幸せになれる魔法」
七段飾りの雛人形や大きなこいのぼりを飾るのはステキですが、飾るのも片付けるのも大仕事。飾ることのハードルが高くなると、何もせず終わってしまうこともあるのではないでしょうか。ですが、玄関やテーブルの上、部屋の片隅にスペースをつくり、年中行事のちょっとした飾り付けをしてみると、平凡な毎日が驚くほどキラキラと輝き出します。これは実際に行動してみないと実感できないことですので、ぜひご自身が気になる行事・飾り付けから気軽に始めてみてください。
この記事では、「年中行事」の魅力をお伝えすると共に、簡単な飾り付けで日常に彩りと季節感を取り入れる、そんなご提案をしていきたいと思います。

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目次
はじめに 年中行事が持つ7つの力
- 笑顔が増える
- 感性が磨かれる
- センスが良くなる
- 行動力が高まる
- 自分のことが好きになる
- 感謝する心が芽生える
- 運が良くなる
織姫と彦星のロマンチックな七夕伝説
自分のために楽しむ七夕の飾り付け
七夕に飾りたいアイテム
- 桔梗
- 五色の短冊
- 五色の素麺
- 七夕がモチーフになった柄の手拭い
- 和菓子
笹飾りは華やかに飾って、星に願いを届けたい!
- 江戸の空にたなびく笹飾り
- 笹飾りは天の星になるべく近い場所に飾ろう
- 「網かざり」で幸せをすくい上げる
- 【番外編コラム】季節の手拭いを飾って、月替わりで年中行事を楽しむ
- 【番外編コラム】年中行事の飾り付けは「自己満足」が良い
まとめ
はじめに 年中行事が持つ7つの力
01笑顔が増える
年中行事は、思わず笑ってしまうような縁起担ぎの小ネタが満載。昔の人の知恵や遊び心に触れるたび、心がホッと温かくなります。
02感性が磨かれる
年中行事には季節感が色濃く反映されています。年中行事を知ることで日常生活の中で、空気の微妙な変化や、道に咲く花、農作物が育つ様子など、季節の移ろいに目が留まるようになります。そして、日常の小さな幸せにも気付けるようになります。
03センスが良くなる
年中行事の飾り付けをするようになり、それが楽しくなってくると、日常の中で、ふと次の飾り付けのヒントを求めるようになります。飾り付けを行うたびに、毎日が彩り豊かになり、どんどんセンスが磨かれていきます。
04行動力が高まる
年中行事を知ることで、見える物や行くお店が変わります。年中行事に関連したイベントや、今まで行ったことがなかったような場所にも「実際に行ってみたい!」「見てみたい!」と好奇心が湧き、行動力が高まるようになります。
05自分のことが好きになる
年中行事の飾り付けをしたり、行事に合わせて和菓子を選んだり、季節の移ろいを感じられる自分がステキだと思えるようになります。“自己満足”ですが、自分に満足できるのは幸せなことです。その幸せは周りの人にもお福分けされ、皆が幸せな気持ちになります。
06感謝する心が芽生える
生れた土地への感謝、家族やご先祖さまへの感謝、食べ物への感謝など、感謝する心が芽生えます。大昔から命を繫いできてくれたご先祖さまたちと、自分とのつながりが感じられ、自分はいかに恵まれているかに気付き、生きていることに感謝できるようになります。
07運が良くなる
年中行事を生活に取り入れると、毎月悪い気を祓い、運と幸せを呼び込むことにつながります。その結果、自分は守られていると感じるようになり、幸せな笑顔が増え、運も味方してくれるのです。
織姫と彦星のロマンチックな七夕伝説

最初に、昔から語り継がれてきた七夕伝説についてご紹介しましょう。この話はもともと中国から伝わったものです。
「昔むかし、天の川のそばに神さまが住んでいました。神さまには織姫という名前の娘がいました。機織が上手で、よく働きました。
神さまが娘に婿を迎えようと探したのが、働き者の牛飼い、彦星です。2人は出会うとすぐ恋をして結婚しました。
ところがあまりにお互いのことを好きになりすぎて、仕事はそっちのけで、2人で遊んでばかりいたのです。
それを見た神さまは怒ってしまい、2人を天の川を挟んだ両側に引き離してしまいました。ただあまりに織姫が泣くもので、年に一度、7月7日の夜にだけ会うことが許されました。
そして、その日はかささぎという鳥たちが飛んできて、翼を並べて橋となり、織姫はかささぎの橋をわたって彦星に会いに行くことができました。」
最後の「かささぎの橋」の部分は忘れられがちですが、鎌倉時代に編さんされた小倉百人一首にも、中納言家持のこんな歌があります。
かさゝぎの渡せるはしに置く霜の しろきをみれば夜ぞ深けにける
「かささぎが渡したという、織姫が渡った天の川の橋。そのようにも見立てられる宮中の階段に霜が降りて白く見える。夜が更けてしまったとしみじみ思う」というような意味です。
昔から、織姫と彦星の七夕の逢瀬に、人々は心惹かれていたのでしょう。そんなロマンチックな物語に思いをはせながら、飾り付けをし、夜空を見上げるのもステキです。
自分のために楽しむ七夕の飾り付け
年中行事の楽しさに触れる、ちょっとした飾り付けに挑戦してみましょう。七夕といえば笹飾りがまず思い浮かびますが、笹飾り以外にも七夕にちなんでシンプルに飾り付けを楽しむ方法はたくさんあります。
例えば、織姫は機織りが上手だったことから、七夕には、針と糸をお供えする習慣が昔からありました。裁縫、手芸の腕が上達するようにという願いを込めたものです。昔の女性にとって、針と糸は大切な仕事の道具。でも、今では仕事はさまざまな分野に拡がっています。ですから「自分の仕事のシンボルとなる道具」を飾ることをおすすめしています。
例えば、文章を書くことが仕事の人は針と糸の代わりにペンを飾るのも一案です。七夕と自分の仕事を結び付けて飾り付けをすることで、「道具を大切にする心」が芽生えます。また、仕事にちなんだものだけではなく、「筆文字がうまくなりたい」と願い事をするのであれば、筆と短冊を組み合わせて飾ってみるなど、願い事にまつわる飾り付けもおすすめです。

そのほかにも、年中行事にまつわる人形や置物、花や和菓子、食材、折り紙や手拭いなどを飾るのもおすすめです。部屋の一角にスペースを確保し、丁寧に掃除をして準備完了。自分のイメージした通りに、ワクワク楽しみながら気楽にやってみましょう。
七夕に飾りたいアイテム
桔梗

桔梗は昔の暦では、ちょうど七夕のころに咲く花。昔は桔梗の花をアサガオと言っており、アサガオは「牽牛花」とも呼ばれます。彦星は牛飼いであったことから、彦星の花とされ、七夕によく飾られます。織姫と彦星のロマンチックな再会を祝して、星の形をした桔梗を花瓶に挿して飾ってみましょう。一輪でも構いません。
五色の短冊

「笹の葉さらさら~」の歌い出し出も有名な童謡『たなばたさま』にも登場する「五色の短冊」。五色というのは、青・赤・黄・白・紫(黒)の五色で、中国の五行説にちなんだもの。人が守るべき5つの徳「仁・義・礼・智・信」を表しているといわれています。短冊は文房具店でも購入できますし、自分で作るなら、和紙で作るのもおすすめです。
また、五色がそろわなくても、数枚の短冊に願い事を書き入れて飾るだけで、七夕らしくて気分が盛り上がります。
五色の素麺

七夕には、五色の素麺を天の川や織姫の織機の織り糸に見立てて乾麺のまま飾ってみましょう。天の川や五色の短冊をイメージしながら、七夕気分を満喫できます。短冊や、桔梗の花をプラスして、自分なりに組み合わせて飾るのも楽しいものです。
七夕がモチーフになった柄の手拭い

七夕飾りや笹飾りなどが描かれた手拭いをお部屋に飾るのも粋で華やかです。
本物の笹竹に短冊を付けて飾るのももちろん良いのですが、場所もあまりとらず、気軽に飾れて、季節が変わったときには違う柄のものにサッと替えられる、そんな魅力が手拭いにはあります。
和菓子

多くの和菓子屋さんには、季節や年中行事を意識した生菓子があります。七夕であれば、天の川や星などをイメージしたようかんなどです。この季節ならではの可愛らしい和菓子を見つけたら、食べる前にお皿に乗せて飾ってみましょう。
笹飾りは華やかに飾って、星に願いを届けたい!

七夕といえば「笹飾り」。家族全員で短冊に願いを書いて、華やかに飾りつけをすれば、年中行事の気分は一気に高まります。ちなみに笹は昔から「悪い気を祓う」効果があるといわれています。
江戸の空にたなびく笹飾り
七夕は、桃の節句や端午の節句と同じように、徳川幕府が公式行事として定めた五節句のうちの一つで、「七夕の節句」といいます。
歌川広重という浮世絵師が描いた「名所江戸百景 市中繁栄七夕祭」という絵では、どの家でも七夕飾りを屋根よりもずっと高く掲げています。当時笹飾りに使った笹竹は、実際には8メートルほどもあったそうです。そんなにも高い笹竹を大江戸八百八町の家で飾ったら、とても美しく華やかな光景だったでしょう。
笹飾りは天の星になるべく近い場所に飾ろう
星に願いを届けるために、笹飾りは江戸の人たちと同じように、できれば屋外に飾りましょう。室内でも、2階建てなら2階に、マンションならベランダなど少しでも高いところに飾るのがおすすめです。
「網かざり」で幸せをすくい上げる
短冊と合わせてぜひ笹竹に飾りたいのが「網かざり」です。網かざりとは「すくい網」のこと。すくい網を使って小魚などをすくい上げる漁にちなんで、「収穫の恵みを自分にすくい寄せる」「幸せをすくい上げる」という縁起担ぎの意味が込められます。
網かざりは、折り紙や和紙などを切って自分で簡単に作れますので、ぜひ挑戦してみてください。


番外編コラム季節の手拭いを飾って、月替わりで年中行事を楽しむ
手拭いは、さまざまな絵柄やデザインのものが、時季ごとに販売されています。職人さんたちが腕を競う、日本らしいアートの世界です。
主に1,000円前後の価格で手に入るので、気軽に集められて、しかもかさばりません。手拭いを飾る専用のタペストリー棒は『手拭いタペストリー』と呼ばれて人気が高まっています。他にも木製の額縁を使えば、タテ・ヨコどちらの向きも自由に飾れます。
手拭いは、和雑貨店やお土産屋さんなどで買えます。手拭い専門のショップは伊勢神宮前のおかげ横丁や、浅草駅周辺をはじめ各地にありますので、ぜひ一度お店に立ち寄ってみてください。四季折々の目にも鮮やかな手拭いの中に、お気に入りの一枚がきっと見つかるはずです。下記の写真のように、毎月の年中行事に合わせて、ご自身のオリジナルの1年間を彩る手拭いを揃えてみてはいかがでしょうか。もし、近隣にお店がない場合はオンラインショップを利用することも可能です。


番外編コラム年中行事の飾り付けは「自己満足」が良い
「自己満足」という言葉を聞くと少しネガティブなイメージを持つ方も多いのではないでしょうか。ですが、「自己満足(自分自身が満足できる=満たされること)」が良いのです。この記事でお伝えしている年中行事の飾り付けは、誰かに見せて褒めてもらうための飾り付けではなく、飾る人自身や、一緒に飾った人が楽しいな、ステキだなと思える飾り付けをすることに意味があります。
もちろん、正しい飾り方は大切です。例えば桃の節句に出すお雛様にもきちんとした飾り方があります。しかし、ご自宅で誰かに見せるためではない飾り付けは、どんなものを選び、どのように飾るかは、それを毎日見るご自身が「ステキ」だと思えることが大切です。この「自己満足」が自身の心を穏やかに、そして豊かにしてくことにつながるのです。ぜひ、日本の伝統文化である年中行事の飾り付けを、ご自身やご夫婦、ご家族と楽しんでみてください。
まとめ
今回は7月7日の年中行事「七夕」の魅力やその飾り付けについてご紹介しました。
年中行事とは、日本の文化に根付き、脈々と受け継がれてきた行事です。その意味を知れば、自ずと四季を楽しむ心が育っていきます。
また年中行事は一人でも楽しめますし、家族との貴重な思い出を作れる機会でもあります。親子で一緒に飾りを作ったり、飾り付けをしたりした記憶は、きっと大人になったときの忘れられない思い出となることでしょう。ぜひ今年の七夕には、七夕ゆかりのものを飾って、願い事をしてみてはいかがでしょうか。
Adviser

井垣 利英(いがきとしえ) (株)シェリロゼ代表取締役 、 人材教育家、 マナー美人塾塾長
名古屋生まれ、東京在住。中央大学法学部在学中からフリーアナウンサー としてテレビ出演。
2002年(株)シェリロゼを起業。20年間で3万人以上を指導。自社の【会話美人講座】【マナー美人塾】でマナー、プラス思考、話し方などを指導。また全国の企業で、社員研修や講演会を年間100本ほど行う。
やる気とマナーを上げて、売上アップにつなげる日本で唯一の専門家。
著書は『ふんわりと上昇気流に乗る生き方』(サンマーク出版)、稲盛和夫氏推薦の『仕事の神様が”ひいき“したくなる人の法則』(致知出版社)など19冊。
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編集協力/中西后沙遠(なかにしみさお) 撮影/森武志
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