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暮らしを楽しむ にほんの食ごよみ(第7回「氷の節句」)

食べる

氷を口にして元気に夏を越す

旧暦では、6月1日に「氷の節句」という行事が行われていたことをご存じですか? 冷凍庫がなかった時代、冬にできた天然の氷を夏まで保管していた「氷室(ひむろ)」という貯蔵庫を開く日。それが氷の節句でした。室町時代には、宮中や幕府で氷室から運ばれた氷を口にして暑気払いをしていたといわれています。平安時代の文献にも、氷を神様へ奉献する様子などが記録されているようです。しかし当時、氷は大変貴重なもので、庶民が簡単に口にできるものではありませんでした。そこで、氷を模したお菓子として作られるようになったのが水無月です。また6月30日には、上半期の穢れを落とす神事「夏越の祓(なごしのはらえ)」が各地の神社で行われていますが、これに合わせて、京都を中心に6月30日に水無月を食べる風習もあります。


暑い夏を乗り切る吉祥菓

「暑気」と「邪気」を払う

ご存じの通り、「水無月」とは和風月名で6月のことを指します。1日に氷の節句が行われることから、お菓子にも同じ名がついたのでしょう。この時期になると和菓子店に水無月が並び、初夏の訪れを感じさせてくれます。水無月が三角形なのは、氷片を表しているから。また、小豆の赤は古くから魔除けの色とされてきました。つまり、氷を模したういろうで暑気を払い、上部に散らした甘納豆で邪気を払うというわけです。

材料はシンプルで自宅でも作れる

和菓子は店で買うもので、作るのは難しい……と思っている方もいるかもしれませんが、実は意外と簡単。葛粉、白玉粉、小麦粉、砂糖を混ぜ合わせ、流し缶に入れて蒸すだけです。流し缶や蒸し器がなければ、バットと深めのフライパンで代用できます。

美しく仕上げるコツは、材料を一度にすべて流し入れないこと。先に3/4の量を流し入れ、固まってから甘納豆を散らします。最後に、残しておいた分を流し入れて固めれば完成。こうすることで、ういろう部分と甘納豆がのっている部分がきれいな2層になります。甘納豆の量はお好みで構いませんが、散らす程度で表面に白さを残すと、見た目が涼しげな印象になります。

6月はちょうど1年の折り返し地点。水無月をいただくことで半年分の邪気を払い、これから訪れる本格的な暑さに負けないよう祈りを込めてみてはいかがでしょう。

監修

橋本 加名子さん料理研究家、栄養士、フードコーディネーター

海外留学、商社勤務時代からアジア料理や江戸懐石料理を学び、独立。料理教室「おいしいスプーン」主宰。『フライパンひとつで!失敗しない中華・アジア』(タツミムック)など著書多数。

取材・文/佐藤望美

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