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暮らしを楽しむ にほんの食ごよみ(第4回「土用の丑の日」)

食べる

本当は季節ごとにある土用の丑

土用の丑の日の「土用」とは、二十四節気の立夏、立秋、立冬、立春までの約18日間を指す言葉です。「丑の日」とは昔の暦の数え方で、日にち(12日周期)を十二支で数えたときの丑にあたる日。つまり、土用の期間中の丑の日が「土用の丑の日」なのです。

春夏秋冬それぞれに土用の丑の日がありますが、代表的なのは夏。さらに、土用の丑といえば鰻です。由来には諸説ありますが、江戸時代、冬が旬の鰻が夏に売れず鰻屋が困っていたところ、平賀源内が店先に「本日土用丑の日」と看板を出して繁盛させたという説が知られています。

また、暑い時季を乗り切るために栄養価の高い鰻を食べるという習慣は、『万葉集』にも詠まれているため古来よりあったといわれています。実際、鰻は疲労回復・食欲増進に効果があるとされるビタミンA、B群が豊富です。


鰻について

関東は蒸し焼き、関西は直火焼き

鰻の食べ方としてまず思いつくのは、鰻重やひつまぶし。鰻を蒲焼きにしてご飯の上にのせますが、関東と関西では調理法が異なります。

関東は背開きの蒸し焼き。まず蒸して柔らかくしてからタレをつけて焼きます。せっかちな江戸っ子らしく、頭は先に落とすことが多いようです。蒸した鰻はふっくら柔らか。背開きなのは、武家文化の江戸で、腹開きは切腹を連想させたからだそう。

一方の関西では、腹開きの直火焼き。蒸さずに焼いて、皮をパリッとさせます。頭を落とすのは焼いた後。腹を割って話すから腹開きを好んでいたといわれるのは、商人文化の関西ならではです。

市販の蒲焼きは「水洗い」「酒塗り」でおいしく

スーパーなどで市販されている鰻の蒲焼きは、少しの工夫でおいしくなるのをご存じですか? まずは、鰻にかかっているタレを水でさっと洗い流します。次に、ハケを使って表面に料理酒を。こうすることで、鰻の身がふっくら柔らかくなります。あとは、付属のタレを塗りながら魚焼きグリルで焼くだけ。途中でタレを重ね塗りすると、さらに味が染み込んで、お店で味わうような蒲焼きを家で楽しむことができます。

薬味は、青ネギの小口切りやおろしたての生わさびがおすすめです。実山椒の塩漬けがあればなおよし。最後、だし茶漬けにしていただくときに風味が増します。

夏の暑さに負けたくないこの時季、食べ物で英気を養う“食養生”をぜひ取り入れてみてください。

監修

橋本 加名子さん料理研究家、栄養士、フードコーディネーター

海外留学、商社勤務時代からアジア料理や江戸懐石料理を学び、独立。料理教室「おいしいスプーン」主宰。『フライパンひとつで!失敗しない中華・アジア』(タツミムック)など著書多数。

取材・文/佐藤望美

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