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読むだけで美味しくなるワインの話(第6回 旧世界と新世界? 産地の違いを楽しむ 〜オールドワールド編vol.2ヨーロッパ各国〜)

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「ワインについて詳しくなりたい」と思っても、ワインの世界は複雑で難しそうというイメージがありませんか? そこで、ワインにまつわる様々なことをシニアソムリエが優しいアプローチでお教えします。読むだけでワインが美味しくなるようなコラムを、どうぞ召し上がれ。

フランス以外の旧世界(オールドワールド)を辿る

ワインの世界における旧世界(オールドワールド)と新世界(ニューワールド)。これまでニューワールドとオールドワールドの筆頭でもあるフランスについてご紹介しました。今回は、オールドワールドのうちフランス以外の主要な国であるイタリア、ドイツ、スペインについて詳しく見ていきたいと思います。

イタリア人気質を感じさせる生産地と品質の豊かな関係

イタリアの特徴を端的に表すのなら、「生産者それぞれが自らの思うワイン作りを追求している」です。というのも、イタリアにもフランスでいうAOC(原産地統制呼称)(※第5回 旧世界と新世界? 産地の違いを楽しむ ~オールドワールド編 vol.1 フランス~ 参照)と同じく、DOCGという原産地統制呼称があるのですが、イタリアの場合、「DOCGがついているからこんなワインだ」と言い切れないことが多々あるからです。フランスは、この規格のおかげで産地ごとのワインの特徴が明確で、より上位クラスのワインには高値がつけられる、わかり易い構図でした。ところが、イタリアはそう簡単にいきません。イタリア人気質とも言えますが、「DOCGの規格に則ると、自分が思う美味しいワインが自由に作れない。ならDOCGでなくても良い」と考える生産者たちが少なからずいます。イタリアの場合は上からDOCG、DOC、IGTとクラスがありますが、IGTまであえてクラスを落として、自分にとって最高のワインを作ろうとするのです。自信があるので価格もDOCGのワインより高く設定します。場合によっては、値段がDOCGの何倍、何十倍もするIGTワインがあり、それらをスーパーIGTワインと呼んでいます。サッシカイア、オルネライア、ソライア等のスーパーIGTワインで1980年代に一世を風靡したのがトスカーナ州です。その伝統や格式にとらわれることなく、とことん美味しさを追求したトスカーナ州のスーパーIGTワインはスーパータスカンと呼ばれ、世界中で愛されています。

こんなお話をするとイタリアでは原産地統制呼称があまり意味の無いもののように聞こえてしまいそうですが、そんなことはありません。イタリアはもともと小さい国が一つに集まった国ですので、自らの生まれた土地をとても愛する気質があります。生産者たちはその土地の葡萄を愛し、そこに根付いた様々な地葡萄でワインを作っています。DOCGやDOCはそういったイタリアワインの歴史を守っているのです。つまりDOCGやDOCは歴史あるワインの印だという見方ができます。

ワインの王であり、王のワイン「バローロ」

イタリアの産地で押さえておきたいのが、前述のトスカーナ州(中部)とピエモンテ州(北部)です。ピエモンテは、フランスとの国境に位置する北の産地です。ピエモンテでは、「ワインの王であり、王のワイン」と呼ばれる赤ワインのバローロが代表的です。イタリアワインの中でも、DOCGのバローロは最も古い歴史を持っています。

バローロに使われるブドウは、ネッビオーロという黒ブドウで、ピノ・ノワールと源流が同じだと言われています。ピノ・ノワールのように芳醇でエレガントな香りが中心の印象ですが、最大の違いが渋みです。ピノ・ノワールは渋みがきめ細かく滑らかに流れていくのに対して、ネッビオーロは渋みが強く感じられ、味わいががっしりしています。そのため、バローロは3年以上の熟成義務があり、ある程度柔らかくしてからリリースされるようルールが定められています。

長い熟成期間を経るため、ドライフルーツを中心に、乾燥イチジクやドライレーズン、紅茶のニュアンスといった複雑な香りになるのがバローロの特徴です。

「キャンティクラシコ」を超える、「キャンティ」とは?

一方のトスカーナ州の中央部、フィレンツェとシエナの間に広がるキャンティ地区で作られるのがキャンティです。有名なワインですので聞いたことがある方も多いのではないでしょうか。キャンティはよく、田舎臭い土っぽいワインと言われますが、その土っぽさがワインの複雑さになり、フードフレンドリーなワインを生み出します。キャンティに使われる主なブドウはサンジョヴェーゼという品種で、キレイな酸味が特徴です。トスカーナ赤ワインの主要品種で、土地を代表する唯一無二の個性があり、軽めのワインから重たいワインまで様々なワインが作られるのも特徴です。

キャンティには、キャンティとキャンティクラシコの2つの地域があります。それはキャンティの人気が出たことで生産者が増え、外側に産地が広がってしまったためです。どんどん低下していくキャンティの品質を守るため、古くからキャンティを作ってきた地域をキャンティクラシコとしました。
さらに2014年、キャンティにはキャンティクラシコ・グランセレッツィオーネという新しいDOCGが生まれました。トスカーナにはもう一つ、ブルネッロ・ディ・モンタルチーノというサンジョヴェーゼで作る代表的なワインがありますが、ブルネッロは100年程度という歴史の短さにもかかわらず、いまやキャンティを上回るワインとして世界に認知されています。そんなブルネッロに対抗し、キャンティについてしまった安いワインのイメージを払拭し、最高のキャンティを世に送り出すために生まれた規格です。これからが楽しみなワインですね。

ドイツは甘口ワインだけではない?

ドイツは緯度が高く、気候が寒冷です。ブドウ栽培可能な北限に位置し、ワイン作りには苦労が絶えない地域でした。こうした寒冷地では、温暖地に比べて酸が強く、糖度が低いブドウしか作ることができません。ブドウの熟度が足りず、糖度がそのままアルコール分に変わると、糖度が残らない酸っぱいワインになってしまう厳しい土地でした。

それでは美味しいワインとは言えないので、糖を残してワインを作りました。こうして出来たのが、いわゆるドイツの甘口ワインなのです。なぜ甘口になるかというと、アルコールの発酵を途中で止めて、糖を残す、残糖することで甘みを残します。アルコールの発酵を途中で止めるわけですから、低アルコールのワインとなります。通常、ワインのアルコール度数は11〜15%が一般的ですが、甘口ワインでは6〜9%と低めの度数なのです。その他にも、貴腐菌をつけたり、ブドウが凍るまで収穫を待ったりと、様々な方法でブドウの糖度を上げ、より良いワインを作ろうとした歴史から、ドイツには甘口ワインの規格ができていきました。

ところが、近年は温暖化の影響でブドウ生産の北限もさらに北へと上がってきています。そのためドイツも、以前に比べブドウの栽培がしやすくなってきました。これまでの厳しい気候に諦めていた生産者達が、自分たちにもフランスに負けない辛口ワインが作れると奮起し、ワイン作りに取り組んでいます。
たとえば、フランスとの国境を流れるライン川を挟んでフランスのアルザスの対岸に、ドイツのバーデンという地方があります。ここで作られるピノ・ノワールは、目隠しをしたブラインドテイスティングにおいて、ブルゴーニュのピノ・ノワールよりも美味しかったという話を聞いたのは一度や二度ではありません。

現在、辛口ワインの比率が7割近くまでに多くなったドイツですが、白ブドウの品種であるリースリングを使った伝統的な素晴らしい甘口ワインも引き続き生産されています。 伝統的な甘口ワインと革新的な辛口ワイン、ドイツは伝統と革新が混在した面白い産地と言うことができます。

高コストパフォーマンスなスペインのスパークリングワイン「カヴァ」

スペインのスパークリングワインといえば、カタルーニャで作られるカヴァでしょう。カヴァは、瓶内二次発酵させたワインの中では、おそらく世界で一番コストパフォーマンスの良いワインと言えます。瓶内二次発酵は、とても手間のかかる製法で、シャンパン(シャンパーニュ)と同じ製法です。
具体的な作り方としては、まず作ったワインを瓶詰めし、そこにショ糖と酵母を加え瓶の栓をします。そうすることで、瓶の中でもう1回発酵が始まり、酵母が糖を食べ、アルコールと二酸化炭素に分解します。そうして溜まった二酸化炭素がスパークリングの泡になるわけです。つまり、瓶詰めする段階ではまだ発泡はしていません。

瓶内二次発酵のプロセスは、熟成期間も長くなり、手間がかかるためコストも上がります。そのため、シャンパンを始め瓶内二次発酵のワインは比較的値段が高くなりますが、カヴァはたくさん作られていることもあり、値段がリーズナブルなのも魅力です。

瓶内二次発酵の特徴は、2回発酵させることで複雑な印象になります。酵母からくる、イーストやトーストのような香りや、熟成期間を少し長くすることで起きるメイラード反応によりキャラメルのような蜜っぽい印象の香りが入ってくることもあり、複雑さが生まれます。カヴァは、瓶内二次発酵の代表的なワインとして、高品質で低価格なスパークリングワインだということです。

テンプラニーリョが根付くスペインの土地

スペインではカヴァの他に、リオハが有名です。黒ブドウ品種のテンプラニーリョを使った赤ワインで、ボリューム感があり、長い熟成期間を取ることで熟成のニュアンスが感じられます。スペインでは、テンプラニーリョを使ったワイン産地がとても多くあります。ブドウが伝播するなかで、その土地土地で呼び名も変わり、5種類以上他の呼び方があります。ブドウ品種が地域によって呼び名が変わることをシノニムと言いますが、スペインのテンプラニーリョはシノニムが多い品種のひとつと言えます。それほど、土地に根付いた品種ということです。
スペインでは、他にシェリーという酒精強化ワインが有名ですが、それはまた次の機会にしたいと思います。


監修

牧野 重希(まきの しげき)

吉祥寺の老舗イタリアン、リストランテ イマイのシェフソムリエ。2007年、料理人を志しリストランテ イマイに入社。2010年よりセコンドシェフとして従事。料理を学ぶなかでワインの魅力に惹かれ、お客様へのより良いサービスとワインの提供を目指し、接客に転向。
2023年からWEBサイト「ちょっとまじめにソムリエ試験対策こーざ」の講師に着任。
RISTORANTE IMAI:http://www.ristoranteimai.com/

  • ・2013年 ソムリエ取得
  • ・2017年 ソムリエ・エクセレンス取得
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