マンション管理会社とは? 管理組合との違いや委託方式を解説
マンションには、習慣や考え方の違うさまざまな人が住んでいます。すべての居住者が快適に暮らすには、共用部分の清掃や設備の点検・補修などの建物管理、管理規約にもとづく住まいのルール作りなど、ハード面・ソフト面の両面から管理することが欠かせません。
今回は、分譲マンションでのマンション管理について、管理組合と管理会社の違い、管理会社に委託できる業務内容などをご紹介します。
マンションの分類とマンション管理
マンションにはさまざまな種類があります。契約や所有方法、規模や用途によって分類方法もさまざまです。まずは、マンションの種類とその管理についてご説明しましょう。
マンションの分類
マンションは、規模では大規模マンションや小規模マンション、用途ではファミリー向けや単身者用、リゾート、マンスリーマンションなどに分類することができます。また、契約・所有方法では分譲マンション、賃貸マンションといった分類があり、マンションを管理する主体が異なります。
例えば、分譲マンションを管理するのは区分所有者全員で構成される管理組合です。一方で、賃貸マンションではマンションのオーナーが管理主体となります。
マンション管理とは
マンション管理とは具体的にどのようなことを行うのでしょうか。
マンション管理は、マンションの資産価値を保つため、またそこに住む人々が快適に暮らせる環境を保つために行うものです。例えば、建物の敷地やエレベーター、エントランスなど共用部分の清掃、管理規約にもとづいた住まいのルール作り、駐車場や防犯カメラなどの整備点検、建物の改修工事の実施などが挙げられます。
マンション管理を行うのは、分譲マンションでは管理組合です。賃貸マンションであれば、オーナーが管理を行います。
管理組合と管理会社の違い
分譲マンションにおいてその管理を行うのは、マンションの区分所有者全員で構成される管理組合です。国土交通省の「平成30年度マンション総合調査結果」によると、9割以上のマンションが管理事務の全部ないしは一部を、マンション管理を専門に行う管理会社に委託しています。
ここでは、管理組合と管理会社の役割について解説します。
マンションの区分所有者全員で構成される「管理組合」
マンションの管理組合とは、マンションの区分所有者全員で構成される団体です。管理組合は「建物の区分所有等に関する法律」(区分所有法)にもとづいて設けられるもので、マンションを購入して区分所有者になると同時に管理組合の組合員となり、マンションの管理に関わることになります。
しかし、マンション管理に関わるすべての業務を区分所有者全員で行うことは難しいため、管理組合では日常的な業務を行う理事会を数名の代表者で構成し、担うことがほとんどです。
マンションの維持・管理に必要な業務を行う「理事会」
マンションの規模にもよりますが、理事会には主に理事長、副理事長、会計担当理事など数名の理事で構成され、理事会とは別に監事が置かれています。理事および監事(役員)の選出方法はマンションによって異なり、自薦、他薦、輪番制、抽選などさまざまです。理事および監事(役員)は、年1回開催される管理組合の総会で選出され、理事の互選により役職が決まります。
理事は定期的に理事会を開催して、総会で決議された事項の執行や、課題などについて話し合い、マンションの維持・管理に必要な業務を行います。
管理組合から委託を受けてマンション管理を行う「管理会社」
マンションの維持・管理に必要な業務は、本来は管理組合が行うものです。しかし、管理組合を構成する区分所有者は、それぞれ仕事や家庭の事情もあり、マンションの管理ばかりに時間を割くことはできません。また、マンションの維持・管理には、専門的な知識が必要になることもあります。
そこで、多くの管理組合は自分たちで直接管理する代わりに、マンションの維持・管理を専門に行う管理会社に業務を委託しています。委託を受けた管理会社は、管理組合との契約にもとづいて、マンションの維持・管理業務を代行します。
管理会社の業務内容
管理会社に委託できるマンションの維持・管理業務は、「事務管理業務」「管理員業務」「清掃業務」「建物・設備管理業務」の4つに大きく分けられます。ただし、管理会社はすべてのマンションに対してこの業務を行うわけではありません。管理組合との委託契約に記載された業務のみを行います。
ここでは、管理会社が行う4つの管理業務についてご紹介します。
事務管理業務
事務管理業務とは、会計・出納業務や組合運営のサポート業務が中心となります。
例えば、管理費・修繕積立金の徴収、未納者に対する督促、各種経費の支払い、月次収支報告書の作成のほか、通帳や書類の保管などが挙げられます。また、管理組合の理事会や総会の実施サポートも事務管理業務のひとつです。
管理員業務
管理員業務とは、マンションの管理員として日常的に行う業務です。
その中でも業務内容はいくつかに分類することができます。例えば、来客対応や共用設備などの利用受付といった受付業務のほか、建物・設備の点検や無断駐車・駐輪などの巡回業務、ゴミ出しや業者作業対応といった立会業務などです。
また、それらの業務を行った後の報告や、事故・災害発生時の連絡・報告業務も含まれます。
清掃業務
マンションの清掃業務には、日常清掃と定期清掃などがあります。
日常清掃は日常的に行っている清掃のことで、エントランス・廊下といった共用部分の清掃や、ゴミ出し、ごみ集積所の整理・清掃などが中心です。定期清掃は、ポリッシャーや高圧洗浄機など特別な機材を使用しないとできない清掃作業で、主に共用廊下やエントランスタイルの洗浄などが挙げられます。ほかにも、特別清掃として高所の窓ガラス清掃等を実施している管理組合もあります。
建物・設備管理業務
建物・設備管理業務とは、マンションの建物そのものや設備を安全に使用できる状態を維持するために行う業務です。
例えば、建物外観のチェックや、エレベーター、防災設備、電気設備、給排水設備などの点検が挙げられます。なお、点検には法定点検と任意点検の2種類があり、法律で定期的な点検と報告が義務づけられている設備の点検は法定点検に当たります。法定点検が義務付けられている設備は、安全な日常生活に欠かせないものが多く、資格を持った人でしか行えない点検業務もあります。
マンション管理の方式
マンションの管理方式は、「全部委託方式」「一部委託方式」「自主管理」の3つがあります。それぞれの方式について見てみましょう。
全部委託方式
全部委託方式とは、マンション管理業務の大部分を委託する方式です。
マンション管理業務の大部分を委託するため、管理組合の負担を少なくできることがメリットですが、区分所有者が本来持つ必要のある当事者意識が薄くなってしまう可能性もあるといえるでしょう。
全部委託方式といっても、管理組合の役割がなくなるわけではありません。委託した管理会社とのやりとりや管理組合の運営のほか、大規模改修工事の時期や内容の検討など、マンション管理に関わる意思決定は、管理組合が行います。
一部委託方式
一部委託方式とは、マンション管理業務の一部を管理会社に委託する方式です。
一部委託方式で委託する業務としては、日常的な掃除や定期点検などが挙げられます。全部委託方式に比べて管理会社へ支払う費用を抑えられるのがメリットですが、管理組合が行う管理業務が増えるため、負担が大きくなることがデメリットです。
自主管理
自主管理とは、管理会社への業務委託を行わず、管理組合だけですべての管理業務を行う方式です。
3つの委託方式の中では費用を最も安く抑えられますが、管理組合の負担は最も大きくなります。また、大規模マンションの場合は、管理する範囲が広くなるため、管理業務のノウハウがなければ管理が行き届かないことがあるかもしれません。特に自主管理の場合は、区分所有者の高齢化による役員のなり手不足も、大きな課題となることに注意が必要です。
マンション管理の方式と業務内容の例
全部委託方式 | 一部委託方式 | 自主管理 | |
---|---|---|---|
管理組合が行う業務 | マンション管理に関わる意思決定
|
||
事務管理業務 管理員業務 など |
事務管理業務 管理員業務 清掃業務 建物・設備管理業務 など |
||
管理会社が行う業務 | 事務管理業務 管理員業務 清掃業務 建物・設備管理業務 |
清掃業務 建物・設備管理業務 |
- |
一部委託方式の場合、どの業務を管理会社に委託するかはマンションによって異なります。
あくまでもマンション管理の主体は管理組合です。
管理会社の種類
マンション管理業務を委託できるマンション管理業者は、全国で2,000社以上あり、それらは大きく「ディベロッパー系」と「ビルメンテナンス系」、「独立系」という3つの種類に分けられます。それぞれの特徴について見ていきましょう。
ディベロッパー系管理会社
ディベロッパー系の管理会社とは、マンションを建築・販売しているディベロッパーの子会社である管理会社です。
ディベロッパー系の管理会社は、親会社であるディベロッパーが施工・販売したマンションの管理を行っていることが一般的です。マンションの設計・建設に関する情報をディベロッパーと共有できているため、迅速な対応や適切な管理を行えることが特徴といえるでしょう。ただし、ディベロッパー系管理会社への委託費は、高めになる傾向があります。
ビルメンテナンス系管理会社
ビルメンテナンス系の管理会社とは、マンションよりもオフィスビルや商業施設などを多く管理している管理会社です。そのため、設備の保守に関わる部分に強みがありますが、マンション管理の実績が少なく、管理組合へのサポートなどの対応が弱いという点がデメリットです。
独立系管理会社
独立系の管理会社とは、ディベロッパーやゼネコンなどの親会社を持たない、マンションの管理のみを専門に行っている管理会社です。ディベロッパー系の管理会社よりも委託費が安い傾向があるのはメリットですが、建物に関する情報が不足してしまう場合もあり、管理のクオリティは管理会社によっても異なります。
日本ハウズイング株式会社は、独立系最大手の管理会社です。国内でのマンション総合管理受託戸数でトップクラスの実績を誇っています。
1年間の新規受託戸数のうち80%以上が管理会社の見直し(リプレイス)によって受託したものであり、実績が高く評価されています。
管理会社をうまく使って管理組合の負担軽減を
マンションを管理する主体は、あくまでも区分所有者全員で構成される管理組合です。しかし、すべての管理業務を管理組合で行うのは大変なものです。マンション管理業務の中には、事務管理や清掃、点検、建物・設備の管理など、管理会社に委託可能な業務もあるため、必要に応じて管理会社に管理業務を委託することで、管理組合の負担を少なくすることができます。
どの程度の管理業務を管理会社に委託するかは、マンションの状況や管理組合の考え方によって異なります。マンションの資産価値を保ち、快適に暮らすために、委託する管理会社や委託方式を検討してみてはいかがでしょうか。
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