オーガニックワインとは
最近よく見聞きする「オーガニックワイン」とはどんなワインかご存じでしょうか?「ビオワイン」や「自然派ワイン」といった名前でも、ワインショップの店頭やネット販売店などで見かけるようになった「オーガニックワイン」。国によって呼び名が異なるため、ヨーロッパでは主に「ビオワイン」と呼ばれています。
この「オーガニックワイン」は普通のワインと何が違うのか、何をもってオーガニックと言うのか。今回はこの「オーガニックワイン」に焦点をあてて、普通のワインとの違いや、なぜ「二日酔いしない」と言われているのか、味の違い等、その疑問を紐解いていきましょう。
日本では曖昧なビオワインの定義
実は、日本では「ビオワイン」「自然派ワイン」を名乗るために明確な取り決めはなく、そこに含まれるワインは様々です。簡単に言うと「ビオワイン」はブドウ栽培に有機栽培を取り入れているかどうか。「自然派ワイン」は、ワインの醸造工程において、より人間が介在しないワインというイメージでしょうか。
それに対してヨーロッパでは「ビオワイン」を名乗るためにはしっかりとした取り決めがあります。まず、ビオと呼ばれる栽培方法には、細かく分けると次の3つがあり、下にいくにつれ規制が厳しくなります。
- リュット・レゾネ:減農薬で栽培すること。
- ビオロジック:化学肥料や除草剤、農薬などが使用できない。
- ビオディナミ:ビオロジックに加え、天体の動きにあわせて栽培工程の日程を決める。
ヨーロッパにはいくつもの認証団体があり、これらの内容にしっかり則したワインを造っているかをチェックしているのです。
上記の栽培方法をにもあるように①のリュット・レゾネは完全な有機栽培ではありませんので、オーガニック(有機)とは言えないのですが、規制のない日本ではこれをビオワインと呼んでも特に問題はないとされています。
一口にビオワインと言っても様々なタイプが含まれているので、さらに理解が難しくなっているのです。
「オーガニック」には規則がある
日本では「ビオワイン」に明確な規定はなくても、「オーガニック」という言葉には規則があります。ワインに限らずオーガニック(有機)を名乗るためには「有機JAS認定」を受けなければいけません。酒類が認定されたのはごく最近のことで、2025年より認定を受けていないワインがオーガニックや有機を名乗ることができなくなります。
ヨーロッパの規格で言うところの②ビオロジックと③ビオディナミが同等の扱いですが、今のところは②ビオロジックが対象になるようです。日本での酒類への表記はまだまだこれからでしょうから、より厳密に有機栽培で造られたブドウを使ったワインを飲みたい場合は、単純に「ビオ」として紹介されているものの中から、「ビオロジック」や「ビオディナミ」の表記があるかどうかをチェックすると良いでしょう。
生産者の中には、認証制度を受けていなくても昔から有機栽培を行っているところもたくさんあります。認証にはコストもかかりますから、わざわざ名乗る必要もないと思っている生産者も一定数いるわけです。今の時代はネットを調べれば生産者の詳細な情報が手に入りますから、興味のある生産者についてはご自身で調べてみるのも良いと思います。ちなみに有名なところでは、世界で一番高価なワイン、ロマネ・コンティを造るDRC社はビオディナミの認証を取得しています。
ワインの醸造工程にも違いがある
ヨーロッパで言うビオロジックやビオディナミ、そしてオーガニックには醸造過程にも取り決めがあります。大きなポイントは、「添加物を極力加えず最小限にとどめる」ということです。
代表的な添加物がよく「二日酔いの原因になる」と言われている亜硫酸塩(二酸化硫黄)です。この亜硫酸塩は粉末や液体など様々な状態で使われるのですが、例えば収穫してすぐのブドウに振りまくことでブドウの酸化劣化を防いだり、醸造後のワインに入れることでワインを安定させたりといった効果があります。このように、亜硫酸を使った方がワインを造りやすいため、安価な量産ワインほど使われる傾向があります。醸造工程で繊細な管理がいらなくなる分コストが省けるからです。「安いワインは二日酔いしやすい」とよく言われているのはこうした理由からです。
ただし、この二日酔いの原因については、科学的な根拠が明確にあるわけではありません。体感としてそのように感じることが多いため広まっているのだと思います。体調や飲む量によってはオーガニックワインでも二日酔いする可能性はありますので、そこは覚えておいてくださいね。また、この亜硫酸塩は全く加えなくてもワインの中に少量存在しますので、毒のようなイメージではないことも付け加えておきたいと思います。
オーガニックワインと普通のワイン、どっちが美味しいの?
このように添加物を制限されるオーガニックワインは、通常のワインと異なる風味や味わいを持つことがあります。亜硫酸塩の使用を抑えることで、ワインが不安定な状態になるため、通常のワインでは繁殖しない菌などがワインに影響を与えるからです。
代表的なものに「馬小屋臭(ブレット)」があります。これは樽の隙間などに住み着いているブレタノマイセスと呼ばれる雑菌がワインに繁殖した時に出てくる香りです。もちろん飲んで害があるわけではなく、少量であればワインの複雑さや深みになることもあります。ただし、この香りが強く出ると飲みづらく感じる人も多いでしょう。他にも、ワインが不安定な分、香りにも酸化熟成のニュアンスが出やすい傾向があり、白ワインの色が褐色を帯びていることも多いです。その度合いは、生産者の方針によるところも大きいので、ご自身の好みにあった生産者を見つけるのも、オーガニックワイン選びの重要なポイントになると思います。そして前述のような香りがないオーガニックワインもちゃんと存在します。
ワインは嗜好品なので、どっちが美味しいかということについては、みなさんの好みによるところも大きいでしょう。あえて説明すると、オーガニックワインは普通のワインに比べて「緊張感がなく柔らかい味わい、親しみやすく飲み疲れしない」といった特徴があるように思います。私個人の話をすると、特に疲れている時にワインを開ける場合は「今日はオーガニックワインだなぁ」と思うことが多いです。肩肘張らずに飲める感覚です。ただ、前述したようなクセの強いワインもたくさんありますので、購入する時には自分の好みに合わないものには手を出さないように注意もしています。
まとめ
さて、ここまでオーガニックワインについてお話ししました。ヨーロッパでいうビオロジックやビオディナミに代表されるオーガニックワインは、ブドウ栽培からワインの醸造に至るまで、生産者にとってはとても大変な仕事となります。それだけにワインの状態は様々で、飲んでみなければわからないことも多いカテゴリーです。
シャンパーニュ地方のように、冷涼でブドウ栽培自体が厳しい産地はオーガニックが難しいということもあり、オーガニックだから良い・悪いと決めつけられることでもありません。日本でも法整備がすすみ、今後ヨーロッパでもオーガニックワインは増えていくと考えられます。私たち消費者がきちんとした目線で価値を評価していく必要がある分野かもしれません。
監修
牧野 重希(まきの しげき)
吉祥寺の老舗イタリアン、リストランテ イマイのシェフソムリエ。2007年、料理人を志しリストランテ イマイに入社。2010年よりセコンドシェフとして従事。料理を学ぶなかでワインの魅力に惹かれ、お客様へのより良いサービスとワインの提供を目指し、接客に転向。
2023年からWEBサイト「ちょっとまじめにソムリエ試験対策こーざ」の講師に着任。
RISTORANTE IMAI:http://www.ristoranteimai.com/
- ・2013年 ソムリエ取得
- ・2017年 ソムリエ・エクセレンス取得
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