「ワインについて詳しくなりたい」と思っても、ワインの世界は複雑で難しそうというイメージがありませんか? そこで、ワインにまつわる様々なことをシニアソムリエが優しいアプローチでお教えします。読むだけでワインが美味しくなるようなコラムを、どうぞ召し上がれ。
開けたワインが美味しくなくなるのはなぜ?
外出自粛の続く中、皆さまもご自宅でワインを飲む機会が増えているのではないでしょうか。今回はワイン保存の2回目として、「飲み残したワインの保存方法」をテーマにお話したいと思います。
飲み残したワインを翌日以降に飲んでみたら美味しくなかったという経験は、ご自宅でワインを飲まれる方なら誰でもあるのではないでしょうか。なぜそんなことになってしまうのかというと、ワイン等の醸造酒は、ウィスキーや焼酎等の蒸留酒に比べて酸化に弱いお酒だからです。酸素に触れることでワインの酸化が進んでしまい、酸味が増して果実味等の味わいが抜けていってしまいます。それにより味わいのバランスが崩れ、美味しくなくなってしまうのです。そんなワインの酸化を抑えるためには、「空気(酸素)接触をさける保存」が必要になります。
そもそもワインは飲み残してはいけないのか?
それでは「ワインは飲み残さないのが一番」ということになるのかというと、実はそうでもありません。なぜなら、ワインは抜栓後に「良い意味での変化」のあるお酒だからです。もっと言ってしまうと、ワインは抜栓直後が一番美味しいわけではありません。以前のコラムでもお伝えした通り、空気接触によって簡単な酸化熟成のような効果が得られ、味わいに深みや厚みが増していきます。
極端な例ではありますが、自然派ワインと呼ばれるワインは抜栓直後に還元状態と呼ばれる酸素不足の状態になっており、一週間後にようやく本領を発揮することもあるぐらいです。
とはいえ、放置してしまってはせっかくの変化も楽しめずに終わってしまいます。
そこで、その変化を楽しむための効果的な保存方法をご紹介します。
自宅での効果的な保存方法
自宅にあるもので保存
1つは小瓶に移す方法です。小さな瓶に移すことで、瓶内の空気が少なくなり、空気接触を減らす効果があります。
もう1つは実にシンプルですが、抜いたコルクを刺し直し、上からラップをして輪ゴムで止めておく方法があります。瓶内に入ってしまった空気はどうにもなりませんが、新たな空気接触を極力減らすことができます。スクリューキャップの場合は、そのまま閉めておくだけでも十分密閉できるでしょう。
ワイン専用の保存アイテムを使う場合
白・赤ワイン用の保存アイテムとして代表的なものに、「バキュヴァン」等に代表される空気吸引タイプがあります。専用の栓とポンプで瓶内の空気を抜いて空気接触を防ぎます。このタイプは、栓が安価で半永久的に使える良さがありますが、開けるたびに再度吸引する手間がかかります。
もう1つ、最近注目を集めているのが脱酸素タイプのアイテムです。脱酸素効果のあるものを瓶内に入れることで酸素を吸着させ、ワインの酸化をストップします。このタイプには「アンチオックス」等の製品が当てはまります。このアンチオックスは高価ですが、栓をしておくだけで酸化を防いでくれるので気軽に使えます。ただ、5年程度で効果が弱くなると言われています。
スパークリングワインの保存
保存アイテムには、スパークリングワイン専用の保存器具もあります。種類としては、密閉して泡を逃がさないようにするタイプや、密閉した上で瓶内に空気を注入して空気圧を高めるタイプ等があります。後者のタイプは空気注入の手間はかかりますが、スパークリングワインの泡をより長持ちさせることができます。スパークリングワインは何と言っても泡が命です。これらのアイテムを使うことで、翌日以降もシュワシュワの飲み心地が得られます。
ワイン保存の最先端器具
技術は日々進歩しており、とうとうコルクを抜かずにワインを飲める器具が登場しました。「コラヴァン」という器具で、コルクの中心にニードルを刺し、そこからワインを抽出するというびっくりするような器具です。抽出したワインの瓶内には代わりに酸化を防ぐガスが注入され、ニードルを抜いた後は、コルク自体の伸縮性により元に戻るという仕組みです。1カ月以上ワインの状態が変わらないと言われており、高価なワインをグラスで提供したいという飲食店で使われ始めています。
飲み残したワインはすべて冷蔵庫に
最後に、飲み残したワインの保存場所についてお伝えします。結論から言いますと、飲み残したワインは白・赤・スパークリング問わず、すべて冷蔵庫で保存してください。なぜかと言いますと、酸化反応は温度が高いと進行しやすく、温度を下げることで酸化のスピードを抑えることができるからです。赤ワインは適温に戻す手間がかかってしまいますが、ワインを美味しく飲むために是非お試しください。
ここまで、ワインを美味しく飲むための色々な保存についてお話をしてきましたが、ワインが長持ちするかどうかは、そのワインのクラス(価格帯)も影響してきます。高額なワインだと前日に抜栓するなんて例もありますが、1,000円前後のお手頃なワインは早めに飲むのが良いと思います。2,000円以上のワインについては、あえて残して翌日以降の変化を楽しむのも面白いかもしれません。ワインの効果的な保存で、お家ワインの楽しみの幅を広げてみてください。
監修
牧野 重希(まきの しげき)
吉祥寺の老舗イタリアン、リストランテ イマイのシェフソムリエ。2007年、料理人を志しリストランテ イマイに入社。2010年よりセコンドシェフとして従事。料理を学ぶなかでワインの魅力に惹かれ、お客様へのより良いサービスとワインの提供を目指し、接客に転向。
2023年からWEBサイト「ちょっとまじめにソムリエ試験対策こーざ」の講師に着任。
RISTORANTE IMAI:http://www.ristoranteimai.com/
- ・2013年 ソムリエ取得
- ・2017年 ソムリエ・エクセレンス取得
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