(イラスト/山口絵美)
そろそろ確定申告シーズンです。2021年分の「医療費控除」を考えている方もいるでしょう。申告をスムーズに行うために押さえておくべきこととは? また、昨今のコロナ禍において、マスクや消毒液、PCR検査などの費用は医療費控除の対象になるのか? 今回は、それらのポイントについてお伝えします。
自分だけでなく生計が一緒の家族分もOK
1年間で医療費を多く支払った場合に、税金が安くなる“所得控除”の制度のひとつが「医療費控除」です。1月1日から12月31日までの1年間の医療費が10万円(または総所得金額の5%。どちらか少ない金額)を超えた場合に、確定申告をすることで超過分の金額に対して所得税が還付され、翌年の住民税が安くなる仕組みです。
この10万円は、生計を一緒にしている家族分を合算できます。夫婦や子どもだけでなく、同居する両親や単身赴任中の家族、下宿中の子どもの医療費も合わせられますので、該当する家族がいれば、確認しましょう。
対象となるものは「治療はOK、予防はNG」と覚えよう
気になるのは、どんな費用が「医療費控除」の対象になるか、ですよね。
ポイントは「治療はOK、予防はNG」です。
まず、「治療はOK」の一例です。病気やけがの診療費、治療費、薬代、通院のための交通費、ドラッグストアで購入した薬(かぜ薬など)があげられます。そのほか、レーシック手術代や治療のための歯列矯正、インプラントの費用も対象です。
あん摩マッサージ指圧師、鍼師、灸師、柔道整復師による施術代も対象ですが、単に疲れを癒したり体調を整えたりといった、治療目的でないものはNGです。
なお、交通費は電車やバスなど公共交通機関を使ったものが基本ですが、出産や骨折などで公共交通機関を利用できない場合のタクシー代も対象となります。
一方、「予防はNG」の一例は、予防接種や健康診断・人間ドックの費用が代表的です(異常が見つかって治療につながれば対象になります)。 また、自家用車のガソリン代や駐車場代、一般的な近視のための眼鏡やコンタクトレンズ代、美容のための歯列矯正の費用も対象外です。

では、コロナ禍において発生した医療関連費についてはどうでしょう。
コロナに感染した場合の治療費は、基本的には治療費・入院費ともに公費負担となり、自己負担はありません。一方で、自己判断を含め、PCR検査を受けた方は多いでしょう。その場合、陽性になり引き続き治療を行った場合は検査代も対象となりますが、陰性だった場合は対象になりません。これは、健康診断や人間ドックの考え方と似ていますね。また、マスク代や消毒液代も治療には該当しませんので、対象外です。
年間10万円かからなくても、「セルフメディケーション税制」が利用できるかも?
医療費控除の申告をしようとしても、「1年間分の医療費が10万円に届かない」というケースもあるでしょう。その場合、確認してほしいもう一つの方法があります。それは、「セルフメディケーション税制」という制度です。
これは、薬局やドラッグストアで販売されている対象医薬品(医師によって処方される医薬品から、ドラッグストア等で購入できる医薬品に転用されたもの)の購入額が、年間1万2000円を超えた場合に利用できる、「医療費控除」の一種です(超えた金額に対して所得控除になります。上限額は8万8000円)。先ほどご紹介した一般的な医療費控除と、このセルフメディケーション税制、どちらか一つだけ利用できます。
特にここ1、2年は、病院に行くことを控え、市販薬を使って自宅で様子を見たり、療養したりした方も少なくなかったのではないでしょうか。例年より、市販薬の購入費が上がっている可能性があるので、要チェックです。

ちなみに、対象医薬品を購入した際のレシートには、★印などがついていたり、一部の対象医薬品は、パッケージに「セルフメディケーション税控除対象」というマークがついています。具体的な対象医薬品は、厚生労働省のホームページに一覧がありますのでご確認ください。
また、こちらの制度で申告する場合は、健康診断やインフルエンザの予防接種記録など、「しっかり健康の維持増進を考え、病気の予防の取り組みをしていますよ」ということが分かる結果通知書や領収書も保管しておく必要があります。
いずれにしても、通常の「医療費控除」と「セルフメディケーション税制」、どちらを申請するかは年末まで分からないので、両方に該当する領収書やレシートを、すべて保管しておくことをおすすめします。
もし申告を忘れてしまっても、過去5年分はさかのぼれる
病気やケガ、多忙などを理由に、確定申告を逃してしまうこともあるでしょう。また、医療費の領収書が数年経って見つかった!ということもあるかもしれません。
所得税の還付を受けられるケースであれば、5年間さかのぼって確定申告ができます。とはいえ、先延ばしにしていると面倒に感じてしまいがちですので、できるだけ1年ごとに申告して、確実に進めていくのがよいでしょう。
国税庁のサイトに、タックスアンサー(よくある税の質問)のコーナーがありますので、分からないことがあれば検索してみましょう。それでも分からなければ、税理士さんや税務署などに確認してください。
タックスアンサー(よくある税の質問)|国税庁 (nta.go.jp)
まとめ
“医療費控除”のポイント
- 医療費は、生計を一緒にしている家族分を合算できる
- 医療費控除の対象費用は、「治療はOK、予防はNG」と覚えよう
- 所得税が戻るケースなら、確定申告は5年間さかのぼって申告できる
画像提供/PIXTA
プロフィール

西山 美紀ファイナンシャルプランナー・コラムニスト
単に貯蓄額を増やすのではなく、日々にうるおいをもたらせてくれるようなお金の使い方・貯め方について発信中。小田急電鉄主催のオンラインコミュニティ『ママカレ』西山美紀ゼミ「初心者でも安心! 幸せが増えるお金の貯め方・使い方・子育てTIPS」担当。著書に『お金が貯まる「体質」のつくり方』(すばる舎)のほか、『はじめての積立投資・つみたてNISA・iDeCoもよくわかる! お金の増やし方』(主婦の友社)が発売中。
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